「高卒で採用した社員が1〜2年で辞めてしまう」——高卒採用に取り組む企業で、こうした課題が挙がることがあります。結論を先に言うと、公表されている「早期離職の理由」の多くは高卒者に限定した統計ではなく、対象範囲を確認せずに使うと実態とずれるおそれがあります。この記事の数値は令和4年3月卒業者・満15〜34歳の若年労働者など、調査ごとに対象年度・対象範囲が異なるため、まず前提を整理したうえで見ていきます。

結論:高卒の早期離職は「理由」と「どの条件で起きているか」を分けて見ると打ち手が絞れる

高卒の離職理由として紹介されることがある「労働時間・休日」「人間関係」「賃金」という統計(後述)は、満15〜34歳の若年労働者全体を対象にした調査によるものであり、高卒者に限定した集計ではありません。一方、高卒の3年以内離職率そのものは37.9%という全国平均が公表されており、事業所規模や産業によって数値に大きな差があります。この記事では両者を区別したうえで、企業が採用前・入社後に見直せる打ち手を整理します。

高卒の3年以内離職率は37.9%|最新の公表値と大卒との差

結論として、高卒の3年以内離職率は37.9%、大卒は33.8%で、差はおよそ4ポイントです。この差だけで「高卒は離職率が突出して高い」と結論づけるのは早計です。

厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」(令和7年10月24日公表)によると、就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が37.9%(前年度より0.5ポイント低下)、新規大卒就職者が33.8%(前年度より1.1ポイント低下)でした。参考として、中学卒は54.1%、短大等卒は44.5%です(出典:厚生労働省)。両者とも前年度より離職率は低下していますが、この全国平均だけを社内で共有すると「高卒は離職率が高い」という印象が先行しがちです。次に見る事業所規模別・産業別の内訳を確認すると、規模や産業による差のほうが大きいことが分かります。

離職率は事業所規模で大きく異なる|5人未満63.2%と1,000人以上26.3%

結論として、高卒の3年以内離職率は事業所規模によって37ポイント近い差があり、全国平均37.9%という一つの数字だけで自社の状況を判断すると、実態とずれた評価になりやすくなります。

同じ厚生労働省の調査(令和4年3月卒業者、令和7年10月24日公表)では、事業所規模別の3年以内離職率が次のように示されています。

事業所規模 高校卒 大学卒
5人未満 63.2% 57.5%
5〜29人 54.6% 52.0%
30〜99人 45.2% 41.9%
100〜499人 36.7% 33.9%
500〜999人 29.9% 31.5%
1,000人以上 26.3% 27.0%

(出典:厚生労働省)

規模が小さいほど離職率が高いという傾向は高卒・大卒に共通していますが、この差はあくまで集計上の差であり、事業所規模そのものが離職の原因であることを示すデータではありません。教育担当者の配置状況や初期研修の有無など、規模と相関して起こりやすい要素に分解して考えるほうが、自社の打ち手を検討するうえでは参考になります。

産業別にも差がある|高卒の離職率が高い上位5産業

結論として、離職率が高い産業の顔ぶれは高卒・大卒でほぼ共通しており、産業固有の労働条件・就業形態が影響している可能性を示唆します(断定はできません)。

同調査で、3年以内離職率が高い上位5産業(高校卒)は次のとおりです。

産業 高校卒 大学卒
宿泊業・飲食サービス業 64.7% 55.4%
生活関連サービス業・娯楽業 61.5% 54.7%
教育・学習支援業 53.6% 44.2%
医療・福祉 49.2% 40.8%
小売業 48.3% 40.4%

(出典:厚生労働省)

自社が該当する産業の水準を確認しないまま全国平均37.9%とだけ比較すると、実態と異なる印象を持ちやすくなります。まずは自社の産業区分に対応する数値と照らし合わせることをおすすめします。

「やめた理由」として公表されているのは何か|データの粒度を確認する

結論として、「労働時間・休日」「人間関係」「賃金」という離職理由の統計は、高卒者限定ではなく満15〜34歳の若年労働者全体を対象にしたものです。この数字が「高卒の離職理由」として紹介されている場合は、対象範囲を確認してから社内資料に転記することをおすすめします。

厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」(調査対象:満15〜34歳の若年労働者、令和5年10月1日現在)では、「初めて勤務した会社をやめた主な理由」(3つまでの複数回答)として、次の割合が示されています。

  • 労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった:28.5%
  • 人間関係がよくなかった:26.4%
  • 賃金の条件がよくなかった:21.8%

(出典:厚生労働省)

また勤続期間別に見ると、勤続1年未満では「人間関係がよくなかった」の割合が最も高く、勤続1年〜10年未満では「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が最も高くなる傾向が示されています。

ここで重要な留保があります。この調査は学歴を問わない満15〜34歳の若年労働者全体を対象としたものであり、上記の割合は高卒者に限定した集計値ではありません。高卒に限定した「離職理由」の全国統計は、2026年9月時点で編集部が確認した範囲では見当たりませんでした(存在しないと断定するものではありません)。この統計を高卒者固有のデータとして扱わないよう注意が必要です。

高卒採用に固有の事情:入社前に得られる情報の量が構造的に限られる

結論として、高卒採用は学校斡旋が前提であるため、企業と生徒の接点は求人票と応募前職場見学が中心になり、入社前に得られる情報量が大卒採用に比べて構造的に限られやすいという特徴があります。

高卒採用の仕組みは高卒採用とはで解説したとおり、企業が生徒に直接アプローチするのではなく、ハローワークが確認した求人票を学校の進路指導部が取り次ぐ形が基本です。生徒が企業情報に触れる機会は求人票と応募前職場見学が中心になりやすく、説明会やインターンシップで複数回接点を持つ大卒採用とは異なります。

さらに、応募解禁当初の応募社数を1社に制限する「一人一社制」の運用がある地域では、生徒が比較検討できる企業数が限られやすいという事情もあります。一人一社制は法律で定められた全国一律の制度ではなく、複数応募が解禁される時期や制度を維持しているかどうかは都道府県により異なるため、採用対象地域の運用を個別に確認する必要があります。詳しくは高卒採用の一人一社制とはで整理しています。

こうした構造のもとでは、入社前に生徒が得られる情報と、入社後に体験する労働条件・職場環境との間に認識の差が生じやすいと考えられます(原因を断定するものではなく、仕組み上指摘できる構造の話です)。企業が打てる手は、求人票の記載内容を具体的にすること、応募前職場見学で実際の作業や1日の流れを見せること、学校への説明を求人票と一致させることに向けるのが現実的です。生徒本人への直接連絡やSNSでの接触など、学校を経由しない接点を増やす施策は、学校斡旋の枠組みに合わないため避ける必要があります。

企業が見直せる打ち手を「採用前」と「入社後」に分けて整理する

結論として、離職理由の統計が労働時間・人間関係・賃金に集中していることを踏まえ、企業の打ち手は採用前と入社後に分けて整理すると検討しやすくなります。

採用前に見直せること

  • 求人票の仕事内容・労働時間・休日・初任給の内訳を、実態に即して具体的に記載する
  • 応募前職場見学で、実際の作業内容・1日の流れ・繁忙期の様子を見せる
  • 学校訪問での説明内容を、求人票の記載と食い違わないようにする

入社後に見直せること

  • 教育担当者を明示し、誰が新入社員をフォローするかを社内で共有する
  • 初期研修の内容と期間をあらかじめ決めておく
  • 定期的な面談の場を設け、配属後の状況を早期に把握できるようにする
  • 労働時間・休日の実態を管理し、求人票の記載と乖離がないか確認する

これらの打ち手は前述の離職理由の統計(満15〜34歳の若年労働者全体の集計)と方向性が整合するものですが、実施すれば離職率が下がることを保証するものではありません。自社の状況に合わせて優先順位をつけてください。採用前の準備の詳細は高卒採用やることリストでも整理しています。

自社の離職率をどう読むか|比較する相手を選ぶ3つのステップ

結論として、自社の離職率を評価するときは、全国平均37.9%とだけ比べるのではなく、事業所規模・産業区分・対象年度をそろえたうえで比較することが参考になります。

  • ステップ1:事業所規模に対応する区分の値と比べる。従業員規模が近い区分の離職率(前掲の表)を参照します。
  • ステップ2:自社の産業区分の値と比べる。産業によって水準が大きく異なるため、全国平均より参考になりやすいです。
  • ステップ3:全国平均37.9%との単純比較を結論にしない。規模・産業を揃えたうえでなお差がある場合に、自社固有の要因を検討します。

数値を社内で共有する際は、対象卒業年度(この記事では令和4年3月卒業者)・公表日(令和7年10月24日)・出典を添え、翌年度以降に使い回さないよう注意します。

なお、高卒求人は求人倍率4.12倍・就職内定率98.9%(厚生労働省「令和7年度 高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」、令和8年3月末現在、出典:厚生労働省)と求人数が求職者数を上回る状況が続いています。採用できるかどうかと定着するかどうかは別の課題です。

取材記事から見た、入社前後のギャップを減らす取り組み

結論として、公開取材記事で語られている定着の工夫は、「入社前に伝える情報の量と正確さ」と「入社後に継続的に関わる仕組み」の2点に集まる傾向があります。以下は、運営元メディア「人事の声」の取材記事からの紹介です。いずれも大学生・大卒採用の文脈での取材であり、高卒採用にそのまま当てはまるものではなく、個社の取り組み事例であって業界標準を示すものでもない点にご留意ください。

  • IT・株式会社SPIN TECHNOLOGYでは、入社前に厳しさも含めすべて伝えてギャップをなくすことが離職率の低さにつながっているといいます(出典:人事の声)。
  • 人材・キャリア支援・株式会社STAR CAREERでは、配属後も本社が面談やメンター制度を通じて継続的に関わり、孤立を防ぐ工夫をしているといいます(出典:人事の声)。
  • 人材サービス(通信販売支援)・CCコミュニケーションズ株式会社では、新卒社員は現場のSP事業からキャリアをスタートし、月1回の定期面談で寄り添う運用をしているといいます(出典:人事の声)。

これらは高卒採用向けの取り組みとして語られたものではありませんが、「入社前の情報提供」と「入社後の継続的なフォロー」という方向性は、前述の離職理由の統計とも重なります。

まとめ:全国平均だけで判断せず、規模・産業・自社の条件に分けて見る

高卒の3年以内離職率は37.9%(令和4年3月卒業者、大卒は33.8%)という全国平均が公表されている一方、事業所規模別には5人未満63.2%から1,000人以上26.3%まで、産業別にも宿泊業・飲食サービス業64.7%から小売業48.3%まで幅があります。また離職理由の統計は、高卒者限定ではなく満15〜34歳の若年労働者全体の集計である点を踏まえて扱う必要があります。自社の離職率は全国平均との単純比較ではなく、事業所規模・産業区分をそろえたうえで、対象年度・出典を明記して社内で共有することをおすすめします。

高卒採用の進め方や、自社の状況に応じた定着施策についてご相談がある場合は、採用のご相談からお気軽にお問い合わせください。採用選考期日の詳細は高卒採用スケジュール2027卒もあわせてご覧ください。