高卒求人を出したところ、定時制や通信制の学校から推薦が届いた。あるいは、推薦依頼校の一覧に定時制・通信制の学校を入れてよいのか迷っている。採用担当者の方から、こうした場面で「全日制と同じ扱いでよいのか」「見学や面接の日程はどう組むのか」という疑問が出ることがあります。
結論から言うと、島根労働局・ハローワーク佐賀の資料は、定時制・通信制の生徒にも全日制と同様の応募機会を求めています。学校推薦を通じた応募の流れも、確認できた資料では全日制と同様です。企業側で変えるのは見学・面接・入社の「日程と連絡の組み方」で、変えないのは「選考基準と質問のルール」です。
この記事は、令和9年3月卒(2027年3月卒)を対象に、学校推薦の流れの中で企業が確認したいことに絞って整理します。求人票の書き方、職場見学、面接質問の一般論は、それぞれの記事に送ります。
結論:定時制・通信制の生徒も全日制と同じ高卒採用の枠組みで迎え、日程と連絡の組み方を学校と確認する
応募の機会と選考基準は全日制と同じにし、違いが出やすい「見学・面接・入社の日程」を学校経由で確認するのが基本です。
- 応募機会の確保が求められている(島根労働局・ハローワーク佐賀の資料)
- 修業年限は3年以上とされ、学校により異なる(学校教育法第56条)
- 面接などの質問は適性・能力に関することに限る(厚生労働省の公正採用選考の考え方)
どの点も、運用は都道府県や管轄のハローワークで異なる場合があります。申込前に管轄の案内を確認してください。
定時制・通信制の生徒は高卒求人の対象|島根・佐賀の資料は全日制と同様の応募機会を求めている
定時制・通信制の生徒は新規高卒者として高卒求人に応募でき、島根労働局とハローワーク佐賀の資料は、課程を理由に機会が失われないよう求めています。
労働局・ハローワークの要請(令和9年3月卒向け資料)
令和9年3月卒向けの資料のうち、定時制・通信制に触れている2つの該当文を、原文のまま並べます。
島根は島根労働局、佐賀はハローワーク佐賀の資料で、いずれもそれぞれの管轄向けの案内です。ただ、2つの資料は同じ方向を向いており、課程だけを理由に応募の入口を狭めない、という考え方が示されています。
修業年限と学校の形の違い
全日制と定時制・通信制では、修業年限の定めが異なります。通信制には広域・狭域という区分もあり、学校の形は一様ではありません。次の表は、法令と文部科学省の調査から確認できる範囲を整理したものです。
| 項目 |
内容 |
出典 |
| 全日制の修業年限 |
3年 |
学校教育法第56条 |
| 定時制・通信制の修業年限 |
3年以上 |
学校教育法第56条 |
| 通信制課程を置く高校の数 |
323校(令和7年5月1日現在) |
文部科学省「令和7年度通信制高等学校実態調査」 |
| 通信制の修業年限の内訳 |
3年(「3年以上」との回答を含む)319校、4年4校 |
同上 |
| 広域通信制・狭域通信制 |
広域133校、狭域190校 |
同上 |
広域通信制とは、学校の所在する都道府県のほか、他の都道府県に住む生徒も併せて受け入れる通信制の課程を指します(学校教育法第54条第3項に規定があります)。そのため、学校の所在県と生徒の居住県、さらに自社の所在県が一致しない場合があります。この点は後の「一人一社・複数応募」で扱います。
卒業時期や授業の時間帯は、学校ごとに異なる場合があります。生徒個人の事情を企業側で推測せず、必要なことは学校に確認する、という姿勢が基本です。
学校推薦の流れは全日制と同じ
令和9年3月卒の採用選考期日は、厚生労働省が2026年2月16日に公表しています(厚生労働省)。
| 時期 |
内容 |
| 6月1日 |
ハローワークの求人申込書受付開始 |
| 7月1日 |
企業の学校への求人申込・学校訪問開始 |
| 9月5日(沖縄県は8月30日) |
学校から企業への応募書類提出開始 |
| 9月16日 |
選考開始・採用内定開始 |
定時制・通信制の学校についても、参考として、秋田労働局の令和元年7月22日の資料(秋田労働局)は、定時制・通信制高校でも一般校と同様に校内選考を経て学校推薦により応募しているとしています。同じ資料には、在職中である、学校が遠方であるといった事情で、自らハローワークを利用する生徒もいるとの記載があります。ただし、これは古い資料で、秋田の例です。
どの経路で応募が届いても、生徒への連絡は学校・ハローワークの案内に従います。企業から生徒に直接働きかけることはしません。
求人票と推薦依頼校で確認したいこと
応募資格を課程で絞らず、指定校求人にするか高卒就職情報WEBで公開するかを、届けたい学校の範囲から決めます。
応募資格の書き方
課程(全日制・定時制・通信制)で応募を限定する書き方は、前述の要請の趣旨に沿わない可能性があります。業務上の理由で条件を付けたい場合は、申込前に管轄のハローワークへ相談してください(編集部の整理です)。
求人票の書き方の一般論は、高卒求人票の書き方で扱っています。
指定校求人と公開求人
ハローワーク佐賀の資料では、高卒求人の出し方が次の2種類に整理されています。
| 種類 |
内容(佐賀の例) |
| ①指定校求人 |
推薦を受けたい学校を指定する。指定校以外から推薦があった場合も受付可能 |
| ②公開求人 |
学校を指定せず高卒就職情報WEBで公開する。全国の高校が閲覧可能 |
定時制・通信制の学校にも求人を届けたい場合は、推薦依頼高校の一覧にその学校を含める、または公開求人にする、という方法があります(編集部の整理です)。様式や運用は管轄で異なる場合があるため、申込先のハローワークで確認してください。
勤務時間・就業開始の記載
授業の時間帯は学校により異なります。勤務時間やシフトの幅、見学・面接日の柔軟さを求人票に具体的に書いておくと、学校が生徒に案内しやすくなる場合があります(編集部の整理です)。ただし、ハローワーク佐賀の資料は「求人票に記載した以外の試験等は実施できません」としています。見学・面接の受け入れ方も含め、書く内容は社内で確認してから申し込みます。
応募前職場見学と面接の日程は学校と調整する
見学・面接は日程の選択肢を広めに用意し、日時の連絡はすべて学校を通じて行います。
応募前職場見学
ハローワーク佐賀の資料には、見学日時を限定せず事前連絡で随時応じられる場合は、その旨を求人票に記載するよう案内する記述があります。また、見学の機会に採用選考につながる行為や、内定と受け取られかねない行為はしないこととされています(いずれも佐賀の例)。
見学の進め方の詳細は、高卒採用の職場見学の内容で整理しています。
面接・選考日程
島根労働局の資料は、応募書類の送付を受けた場合は、速やかに選考日時を高等学校等へ通知し、速やかに選考を実施するよう求めています。この流れを前提に、定時制・通信制の学校の生徒が応募してきた場合も、通知と実施は速やかに行います(編集部の整理です)。
そのうえで、授業日やスクーリング日と重ならない日程の候補を複数出し、学校と調整する方法が考えられます(編集部の整理です)。候補日に幅があると、学校側で生徒の予定と照らし合わせやすくなる場合があります。
一人一社・複数応募の時期は都道府県により異なる
一人一社制の運用は、都道府県の申し合わせで異なります。次の表は、確認できた例です。
| 地域 |
運用(令和9年3月卒) |
出典 |
| 佐賀 |
9月16日〜9月30日は1人1社、10月1日から2社目 |
ハローワーク佐賀 |
| 香川 |
令和8年度申し合わせで9月30日まで一人一社、10月1日以降は複数応募可 |
香川県高等学校就職問題検討会議 |
香川の申し合わせには、「県外企業への応募については、応募する都道府県の申し合わせを適用する」との記載があります。広域通信制などで学校の所在県と自社の所在県が異なる場合、どちらの申し合わせが適用されるかは、香川のようにあらかじめ定められていることがあります。自社の所在県と学校の所在県が違うときは、学校と管轄のハローワークに確認してください。
制度の趣旨は、高卒採用の一人一社制とはで整理しています。
面接で聞かないこと|課程を選んだ理由は家庭環境に及ぶ場合がある
定時制・通信制を選んだ理由や通学の事情は、家族・家庭環境・生活環境に及ぶ場合があるため、質問を適性・能力に関することに置き換えます。
厚生労働省の公正採用選考特設サイト「採用選考時に配慮すべき事項」は、本人に責任のない事項(本籍・出生地、家族、住宅状況、生活環境・家庭環境など)を把握することを、就職差別につながるおそれがあるものとして挙げています。課程を選んだ理由を聞くと、本人の意図に関係なく、こうした事項に触れてしまう場合があります。
次の表は、避けたい質問と置き換えの例です(編集部の整理です)。
| 避けたい質問 |
置き換えの例 |
| なぜ全日制ではなく定時制を選んだのですか |
学校で力を入れて取り組んだことは何ですか |
| 働きながら通っている理由は何ですか |
仕事や学校の経験から身についたと思うことは何ですか |
| ご家族は通信制に賛成でしたか |
聞かない |
| 前の学校をやめた理由は何ですか |
聞かない(学歴の経緯には踏み込まない) |
| 通学日は週に何日ですか |
入社後の勤務時間で、確認しておきたいことはありますか |
調査書や統一応募用紙の記載の読み方については、この記事では扱いません。一次情報が確認できなかったためです。気になる点は学校に確認してください。面接質問の全体は、高卒採用の面接質問例20で整理しています。
内定後と入社日の決め方
入社日・研修日は卒業予定日を学校に確認してから決め、内定後の連絡も学校を通じて行います。
ハローワーク佐賀の資料には、次の記載があります(いずれも佐賀の例)。
- 雇用開始は原則として卒業認定日以降とする
- 学校長が認めた場合は、卒業式の翌日以降から卒業認定日以前に、研修や入社式を行うことができる
- 採用内定の取消や、入職時期の繰下げはできない
- 入社日までは、就職承諾書以外の書類を求めることはできない
修業年限は3年以上で、学校により異なります。卒業時期を生徒の年齢や学年から推測せず、学校に確認してください(編集部の整理です)。
在職中の生徒がいる場合も、退職や入社の手続きの調整は本人の判断を尊重し、企業から現在の勤務先の事情を詮索しないことが基本です(編集部の整理です)。連絡は、学校を窓口にします。
定時制・通信制の学校と関係をつくるには
学校訪問は全日制と同じルールで、ハローワークから求人票の交付を受けた後に、事前に学校の了解を得て行います。
ハローワーク佐賀の資料では、学校訪問は、安定所に求人申込書を提出して求人票の交付を受けた日以降に、学校の事前の了解の下で行うこととされています。家庭訪問や、生徒・保護者への直接の働きかけは一切禁止されています。
進路指導の担当者や対応できる時間帯は、学校により異なる場合があります。訪問の前に電話で担当者と時間を確認しておくと、当日の行き違いを減らせます(編集部の整理です)。訪問の進め方は、高卒採用の学校訪問のやり方で扱っています。
確認チェックリスト(定時制・通信制の生徒を迎える前に)
次の項目を求人申込前と応募受付時に確認しておくと、学校とのやり取りが進めやすくなります(編集部の整理です)。
まとめ:定時制・通信制の生徒にも全日制と同じ応募機会を用意し、日程は学校と確認する
定時制・通信制の生徒も新規高卒者として高卒求人に応募でき、島根労働局・ハローワーク佐賀の資料は全日制と同様の応募機会を求めています。企業側で見直すのは、見学・面接・入社の日程と連絡の組み方です。選考基準と質問のルールは、全日制と同じです。
修業年限は3年以上で、卒業時期は学校により異なる場合があります。入社日は学校に確認してから決め、課程を選んだ理由などの家庭環境に及ぶ質問は避けて、適性・能力に関する質問に置き換えます。複数応募の時期や、所在県が異なる場合の扱いは都道府県により異なります。
自社の求人票の応募資格や推薦依頼校の選び方、学校との日程調整の進め方を整理したい場合は、採用のご相談からお問い合わせください。