「ハローワークで求人票は受理されたが、学校に何を持って、誰に、何を話せばよいか分からない」。高卒採用に初めて取り組む企業や、久しぶりに高卒求人を出す企業では、こうした迷いが出ることがあります。営業のような訪問になって先生に嫌がられないかという不安もあるかもしれません。

結論から言うと、学校訪問は進路指導部の先生が生徒・保護者に自社を説明できる材料を渡す場です。令和9年3月卒(2027年3月卒)は7月1日以降に、受理印のある求人票の写しを持って、事前連絡のうえで行います。

この記事では、①訪問の目的、②時期、③訪問前の準備、④当日の流れ、⑤やってはいけないこと、⑥訪問後のフォローの順に整理します。

結論:高卒採用の学校訪問は「先生が生徒に説明できる材料を渡す場」

学校斡旋の仕組みでは、生徒が求人を知り応募先を決める過程に進路指導部が関わるため、編集部では、訪問の目的を先生への情報提供と整理しています。

厚生労働省は、高校生を対象とした求人について「ハローワークにおいて求人の内容を確認したのち、学校に求人が提出されることとなります」と案内しています(厚生労働省)。京都府教育庁の資料では、7月1日以降、学校での求人票の受理と生徒への紹介があり、そのあと保護者を交えた面談、職場見学、応募先の決定へ進む流れが示されています(京都府教育庁)。企業の情報は、学校の中で先生や保護者との面談を経て生徒に届く構造になっています。

もう一つ押さえたいのが、求人票の見られ方です。ハローワーク大隅の資料によると、高卒求人は「高卒就職情報WEB提供サービス」で各高校の進路指導室から閲覧でき、ハローワークインターネットサービスでは閲覧できません(ハローワーク大隅)。編集部の整理では、役割分担は次のとおりです。

  • 求人票: 進路指導室で検索・閲覧され、各社を見比べるときの基本資料になる
  • 学校訪問: その求人票を先生が理解し、生徒に説明するための補足を渡す機会になる

高卒採用の仕組み全体は高卒採用とはで整理しています。

学校訪問はいつから?令和9年3月卒は7月1日以降(7月1日より前の扱いは地域で異なる)

厚生労働省の令和9年3月卒の期日では、「企業による学校への求人申込及び学校訪問開始」は7月1日です。

日付(令和9年3月卒) 内容 訪問で企業がやること
6月1日 求人申込書受付開始 ハローワークへ求人申込を進め、受理印のある求人票を用意する
7月1日 学校への求人申込及び学校訪問開始 事前連絡のうえで訪問し、求人票の写しと補足資料を渡す
9月5日 応募書類提出開始(沖縄県は8月30日) 応募は学校を通じて受け付ける。訪問では応募ルールを確認する
9月16日 選考開始及び採用内定開始 この日より前に選考・内定を示唆しない

出典は厚生労働省です。ハローワーク大隅の資料も「安定所受理印の押された高卒求人票をコピーして、高校に持参または送付してください。7月1日以降事業所による高校訪問ができます」と案内しています(ハローワーク大隅)。期日は毎年度定められるため、翌年度以降は新しい期日を確認し、この表を使い回さないでください。

7月1日より前の接触の扱いは資料ごとに表現が異なる

7月1日より前の接触については、地域の資料で表現に違いがあります。

  • 京都府教育庁の資料(京都労働局サイト掲載): 学校で求人票の閲覧が始まる7月1日より前は、「求人票の条件等には触れない一般的な業務内容の説明や情報交換」とする案内です(京都府教育庁)。なお、この資料には作成年度の明記がありません。
  • 愛知労働局(2027年3月卒向けの案内): 学校訪問について「事前に学校の了解をとった上で行うことができます。なお、実施時期はハローワークに求人申込みをした日以降です」としつつ、推薦依頼先高校への求人申込み(求人票送付)は7月1日以降に行うよう求めています(愛知労働局)。

どちらも資料ごとの表現であり、全国共通のルールとして読むことはできません。少なくとも、7月1日より前に求人票の条件を示して生徒への紹介を依頼することは、全国共通の期日に照らして避けるべき行為と考えられます。自社の対象地域については、管轄の労働局・ハローワーク・訪問先の学校に確認してください。期日の全体像は高卒採用スケジュール2027卒で整理しています。

訪問前の準備|受理印のある求人票・訪問先リスト・事前連絡

準備の中心は、受理印のある求人票の写し、訪問先の優先順位、学校への事前連絡の3つです。

受理印のある求人票の写しを用意する

学校に渡す求人票は、ハローワークの受理印があるものに限られます。神奈川のハローワーク資料(作成年度の記載なし)は、「学校訪問や学校へ求人情報を提供する際には、受理済みの求人票(安定所の受理印のあるもの)を複写して使用すること(受理印がない求人票での募集はできないこと)」としています(ハローワーク(神奈川))。ハローワーク大隅の資料も、マイページから打ち出した求人票を受理印を受けることなく学校に持ち込むことがないよう求めています(ハローワーク大隅)。

同資料は、高等学校が受理した求人票を前提に生徒への就職指導を始めるため、できるだけ労働条件を変更しないよう求めています。訪問で渡す求人票の内容が、そのまま学校での指導の前提になると考えておくとよいでしょう。求人票の中身の整え方は高卒採用の求人票の書き方で解説しています。

訪問先の優先順位を決める

校数について一次情報に一律の基準はないため、編集部の整理として優先順位の考え方を示します。

  • 前年度に接点や応募があった学校
  • 通勤圏にある学校
  • 採用職種に関係する学科のある学校

優先順位を付ける目的は、訪問の回数を増やすことではなく、限られた時間で説明の質をそろえることにあります。訪問先が多い場合は、担当者が分かれて説明内容にばらつきが出ることがあるため、訪問先リストと補足資料はセットで用意しておくと運用しやすくなります。

推薦依頼校(指定校)を指定する場合は、神奈川のハローワーク資料では「推薦依頼高校一覧」を求人申込書とともに提出するとしています(ハローワーク(神奈川))。愛知労働局は、30校以上を指定する場合に「推薦依頼校一覧」の提出が必要としています(愛知労働局)。このように運用は地域により異なるため、管轄のハローワークで確認してください。

事前に学校へ連絡し、目的と所要時間を伝える

ハローワーク大隅の資料は「高校に訪問される際は事前に高校にご連絡ください」としており(ハローワーク大隅)、愛知労働局も「事前に学校の了解をとった上で」としています(愛知労働局)。進路指導の先生は授業や校務の合間に対応する場合があるため、訪問の目的と所要時間を最初に伝えておくと調整しやすくなります。

持参物

持参物 目的
受理印のある求人票の写し 学校へ提出する正式な求人情報。受理印のないものは使えない
会社案内・採用パンフレット 事業内容や職場の雰囲気を伝える
求人票の要点を高校生・保護者向けに言い換えた補足資料 先生が生徒・保護者に説明するときの材料にする
応募前職場見学の実施予定(特定日を指定する場合は実施予定表) 生徒が学校を通じて見学を申し込めるようにする。詳細は高卒採用の職場見学の内容を参照
名刺 訪問後の連絡先を明確にする

当日の流れ|進路指導の先生に伝えること

当日は、求人票の要点、仕事と職場の様子、入社後の育成、応募前職場見学の案内を、先生が生徒・保護者に説明しやすい順で伝えます。

京都府教育庁の資料は、高校生が応募先を検討する際の要素として、仕事内容、賃金・賞与・夜勤の有無・休日等の条件、交通の便、寮や借り上げ住居の有無、企業説明会、インターンシップ、会社見学、若手社員との交流、先輩の存在、保護者の意見、知名度などを挙げています。これを訪問時の説明項目に対応させると、次のようになります(対応は編集部の整理です)。

応募先検討の要素 訪問で用意する説明・資料
仕事内容 1日の流れを写真や図で示した補足資料
賃金・賞与・夜勤の有無・休日等の条件 求人票の記載そのものを示し、解釈が分かれる点を整理したメモ
交通の便 最寄り駅やバス路線、通勤手段の案内
寮や借り上げ住居の有無 制度がある場合はその内容(求人票の記載に沿って説明する)
会社見学・企業説明会・インターンシップ 応募前職場見学の案内と実施予定
若手社員との交流・先輩の存在 若手社員の仕事の様子の紹介(卒業生に触れる場合は本人の了解を得た範囲で)
保護者の意見 保護者が読んでも分かる言葉で書いた会社案内

編集部が組んだ訪問の流れ(例)

以下は編集部が組んだ例であり、一次情報に基づく標準ではありません。所要時間は学校の都合に合わせてください。

  1. 挨拶・訪問の目的を伝える
  2. 求人票の要点を説明する
  3. 仕事と職場の様子を伝える
  4. 入社後の育成と相談体制を伝える
  5. 応募前職場見学の案内をする
  6. 先生からの質問を受ける
  7. お礼を伝えて終了する

先生からの質問への答え方

  • 求人票の記載と食い違う回答をしない: 学校は受理された求人票を前提に指導するため、口頭の説明がずれると、学校側が前提としている求人票と食い違うおそれがあります。
  • 答えられない質問は持ち帰る: その場で推測して答えず、後日、学校に回答します。
  • 条件を口頭で上乗せしない: 求人票にない条件は約束しません。

なお、ハローワーク新津(新潟)は、高卒求人を申し込んだ企業を対象に、学校訪問のポイントを解説するオンラインセミナーを開いています。「生徒だけでなく先生に選ばれる企業になるためには」という演題が掲げられており(ハローワーク新津)、ハローワーク側も、訪問時の伝え方を企業向けの論点として扱っていることがうかがえます。管轄のハローワークにこうした機会がないか確認してみるのも一つの方法です。

学校訪問でやってはいけないこと

学校を通さない生徒への接触、受理印のない求人票の使用、求人票にない条件の約束、選考につながる行為は避けます。

避けたい行為 理由・出典 代わりにできること
受理印のない求人票を持ち込む 受理印のないものでは募集できないとされる(神奈川、大隅) 受理後の求人票を複写して使う
生徒に直接連絡する、学校を通さない応募を促す 「学校を通さずに生徒と直接連絡を取り合うこと等は避けて」とされる(京都府教育庁) 先生に補足資料を渡し、見学は学校を通じて調整する
7月1日より前に求人票の条件に踏み込む 京都府の資料では条件に触れない説明にとどめるとされる(地域差あり) 一般的な業務内容の説明にとどめ、地域の案内を確認する
求人票にない条件を口頭で約束する、受理後に条件を安易に変える 学校は受理した求人票を前提に指導する(大隅) 求人票の記載に沿って説明する
9月16日より前に選考・内定を示唆する 令和9年3月卒の選考開始は9月16日(厚生労働省) 情報提供に徹する
本籍・家族など、適性と能力に関係ない事項を話題にしたり確認したりする 「公正な採用選考の基本」で配慮が求められる(厚生労働省) 仕事に関係する説明と質疑に絞る

応募ルールにも注意が必要です。一人一社制の運用や複数応募の解禁時期は都道府県により異なります。神奈川のハローワーク資料(作成年度の記載なし)も「複数応募が可能な時期は都道府県によって異なる」と明記しています。訪問時に、学校の応募ルールを確認しておくとよいでしょう。詳しくは高卒採用の一人一社制とはで整理しています。

訪問後のフォローと翌年度への記録(チェックリスト)

訪問後は、お礼と補足情報を学校経由で届け、訪問記録を残して翌年度の訪問計画に使います。

訪問前

  • 求人票に受理印がある
  • 訪問先の優先順位を決めた
  • 事前連絡で目的と所要時間を伝えた
  • 補足資料を用意した
  • 応募前職場見学の案内を用意した

当日

  • 求人票の記載に沿って説明した
  • 答えられなかった質問を記録した

訪問後

  • 答えられなかった質問に、学校経由で回答した
  • お礼を学校に連絡した
  • 先生から出た質問と、学校の応募ルールを記録した(生徒個人の情報は記録しない)

記録を残しておくと、翌年度に求人票や補足資料のどこが伝わりにくかったかを見直す材料になります。求人申込から内定後までの時期別タスクは高卒採用やることリストで確認できます。

まとめ:学校訪問は先生への情報提供と割り切る

学校訪問は、次の4点を押さえると進めやすくなります。

  1. 訪問の目的は、先生が生徒・保護者に説明できる材料を渡すことです。
  2. 令和9年3月卒は7月1日以降が期日で、7月1日より前の扱いは地域で異なるため、管轄に確認します。
  3. 受理印のある求人票の写しを持ち、事前連絡のうえで訪問します。
  4. 学校を通さない生徒への接触や、求人票にない条件の約束は避けます。

自社の採用対象地域での学校訪問の進め方や、求人票と説明資料の整え方についてご相談がある場合は、採用のご相談からお問い合わせください。