「3月に広報が始まったが、4月は何を優先すればよいのか」「春のリーグ戦が始まる学生に、どこまで連絡してよいのか迷う」。体育会採用に取り組む担当者の方は、広報開始の翌月にこうした迷いを持つことがあるのではないでしょうか。
結論から言うと、4月の実務は「選考開始前の接点の位置づけの整理」「春季シーズンなど学生の予定への配慮」「公開調査から見える学生の状況の把握」「内定者フォローの継続」の4つに整理できます。この記事では、3月に体育会採用の企業がやることの続きとして、4月に絞った実務アクションをまとめます。年間の流れ全体は体育会採用カレンダーで俯瞰できます。
結論|4月は「接点の位置づけ」「予定への配慮」「状況の把握」「内定者フォロー」の4つに整理できる
4月に企業が動かす主な実務は、次の4つです。
- 政府の要請で採用選考の開始とされる6月1日より前の時期に、学生とどのような接点を持つかの整理
- 春季リーグ戦の開幕や新入生の迎え入れなど、学生側の予定に合わせた日程・形式の設計
- 公開調査から、4月時点の学生の就職活動の状況を把握し、自社の計画と照らし合わせること
- 内定者フォローの継続と、辞退の兆しの確認
4月は、政府の要請が定める日程の節目(3月1日・6月1日・10月1日)のいずれにも当たらない月で、そこから先の運営は企業が自社の採用計画に合わせて設計する実務です。
4月は何が起きる月か|広報開始の次の月で、選考開始の6月1日より前にあたる
4月は、政府の要請で定められた日程の上では、広報活動の開始日(3月1日)と採用選考活動の開始日(6月1日)の間にあたります。内閣官房が公表している2027(令和9)年度卒業・修了予定者等への要請では、広報活動の開始は「卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降」、採用選考活動の開始は「卒業・修了年度の6月1日以降」、正式な内定日は「卒業・修了年度の10月1日以降」とされています(内閣官房「2027(令和9)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請」、2026年10月確認)。次に4月を迎えるのは2028年卒の学生向けの時期ですので、28卒向けの要請は公表され次第、最新の内容を確認してください。
ただし、要請は日程の目安を示すもので、実際の選考の動きは企業によって異なります。次の章で触れるとおり、学生側の調査では4月の時点で内々定を得ている学生が相当数いることが報告されています。つまり、要請上は「選考開始前」の月でありながら、実際には学生との接点や、選考・内々定の動きがある企業もある月、と捉えることができます。
公開調査で見る4月の学生の状況|内々定率と活動継続の数字をどう読むか
4月に学生がどのような状況にあるかを知る手がかりとして、マイナビの調査があります。マイナビが2027年卒の大学生・大学院生を対象に行った調査(実施期間2026年4月25日〜30日、有効回答1,258名)では、4月末の内々定率は70.9%(前年同月比+0.9ポイント)で、3月末から12.2ポイント上昇したと報告されています。文系は64.8%(前年同月比−0.3ポイント)、理系は80.3%(同+2.4ポイント)です。活動継続率は61.9%、内々定を保有しながら活動を続けている学生の割合は32.8%とされています(マイナビキャリアリサーチLab「2027年卒 大学生キャリア意向調査4月」)。
比較のため3月末の数字を挙げると、同じ調査の3月末時点の内々定率は58.7%でした(マイナビキャリアリサーチLab「2027年卒 大学生キャリア意向調査3月」)。調査ごとに回答者は異なるため厳密な追跡ではありませんが、3月から4月にかけて内々定を得ている学生の割合が上がっていることが読み取れます。
この数字を読むときは、次の3点に注意が必要です。
- 調査の対象はマイナビの会員である学生全体で、体育会の学生に限った数字ではありません
- 2027年卒(2026年4月時点)の数字であり、28卒の学生に同じ水準が当てはまるとは限りません
- 内々定を得ていても活動を続けている学生が一定数いるため、「内々定率が高い=母集団がいなくなる」とは読めません。活動継続率が61.9%という報告は、4月末の時点でも就職活動を続けている学生が多いことを示しています
体育会の学生に限った4月の内々定率や動き出しの時期を示す公開データは、今回確認できた範囲では見当たりませんでした。体育会の学生が全体と同じ動きをするとは断定できないため、自社の採用で実際に接した学生の動きと併せて見ることが現実的です。就活解禁前後の学生の動きについては、就活解禁前の動き出し時期データで公開調査を整理しています。
選考開始前の接点の位置づけを整理する
4月に学生と会う機会がある企業にとっての課題は、その場が「企業理解のための接点」なのか「選考」なのかを、学生にも自社の中でも曖昧にしないことです。
要請の本文には、春休み以降に実施する2週間以上の専門活用型インターンシップを通じて高い専門的知識や能力を有すると判断された学生について、6月より前の時期から採用選考のプロセスに移行できるとする特例があります。これは専門性を問う特定の類型であり、すべてのインターンや面談に当てはまる取り扱いではありません。自社の取り組みがどこに当たるかは、要請の本文と、インターンシップの設計を整理した体育会学生向けインターンシップの設計チェックリストで確認してください。
接点の持ち方については、人事の声に例があります。いずれも一社の取り組みであり、同じ手法がどの企業にも合うとは限りません。
- 建設(専門工事)の株式会社スエヒロ工業は、現場見学を必ず実施し、仕事のイメージをつかんでもらってから面接に進める採用手法をとっていると述べています(人事の声、2026年2月9日)。
- マーケティング・ITベンチャーの株式会社L&E Groupは、内定までにインターンや面接で7〜8回以上の接点を持ち、志望者の適性を見極めていると述べています(人事の声、2025年9月19日)。
- 経理・AI SaaSの株式会社TOKIUMは、体育会学生は部活動に打ち込むあまり就活の相談相手が少なく、孤立しがちだと感じていると述べています(人事の声、2025年12月18日)。
接点を設計するときは、次の4点を整理しておくと、学生への案内文も書きやすくなります。
| 整理する点 |
確認する内容 |
| 目的 |
企業理解、個別相談、選考への案内のどれか。案内文に明記しているか |
| 対象 |
競技を継続中か、引退済みか、学年はいつか |
| 形式 |
対面、オンライン、少人数の個別、現場見学などの別 |
| 学生側の負担 |
練習・試合・授業との重なり、移動の負担 |
「説明会を開くつもりが、実質的に選考になっていた」「面談の案内が、選考の案内と受け取られた」といった行き違いを避けるためにも、案内文で目的を言葉にしておくことは有効です。集客の見直しは体育会学生向け説明会の集客で、スカウトの進め方は体育会学生へのスカウト方法で整理しています。
春季シーズンの開幕と学生の予定に配慮する
4月は、競技によっては春のシーズンが始まる時期です。ただし、大学の学事日程や部の年間予定は大学・部・競技によって異なるため、「4月はこうである」と一括りにはできません。ここでは、公表されている日程と取材記事から確認できる範囲の例を紹介します。
連盟が公表している2026年度の日程では、東京六大学野球の春季リーグ戦は4月11日(土)〜6月1日(月)、関東大学サッカーリーグ戦1部の前期は4月4日(土)〜6月7日(日)でした(東京六大学野球連盟「2026年度 春季リーグ戦 日程」、関東大学サッカー連盟 日程表。いずれも大学リーグ戦の開催時期一覧で2026年10月に確認した内容です)。この2リーグでは、4月の開幕から6月上旬にかけて公式戦が組まれています。一方、同じ一覧で取り上げた他のリーグは、開幕が夏以降です。春にリーグ戦があるかどうか、いつ終わるかは競技によって大きく異なるため、対象とする競技ごとに確認することが前提になります。
取材記事からは、次のような例が確認できます。いずれも一つの部の取り組みで、他の部や大学にそのまま当てはまるとは限りません。
- ある国立大学の卓球部は、4年生が5月の春季リーグをもって引退したと話しています(取材記事、2026年6月15日)。春のリーグ戦が引退の区切りとなる部では、4月は最後の大会に向けた準備の時期にあたる可能性があります。
- ある国立大学の男子ラクロス部は、4月に新入生向けの「大運動会」を主催し、昨年は100名超が参加したと話しています(取材記事、2026年3月30日)。新入生の迎え入れを部の行事として行う部では、上級生にも運営の役割がある場合が考えられます。
共通して読み取れるのは、「部の行事や大会の時期に合わせて、学生が予定を組み立てている」という点です。採用側は、次のような配慮を検討できます。
- 説明会や面談の日程を複数用意し、平日夜や休日、オンラインなど学生が選べる形にする
- 連絡は用件を短くまとめ、返信期限を急がせない
- 試合の予定が確定していない時期の日程調整は、候補を多めに出して学生側に選んでもらう
- 大学や部が連絡方法を定めている場合は、それに従う
競技ごとの引退時期や大会の時期の違いは、体育会の引退時期を競技別に整理した記事で確認できます。なお、スポーツと職場では評価の仕組みや人間関係の継続期間が異なるため、部活動での経験をそのまま職場での活躍に結びつけず、自社で何が求められるかを基準に見極める視点は欠かせません。
面接担当者の体制を整える
4月は、面接や面談の担当者の稼働が高まる企業がある一方、新入社員を迎える企業もあります。採用担当者が新入社員の受け入れや研修の運営も兼ねている場合は、採用業務と並行して他の業務を進める必要があります。人員が限られる場合は、事前に役割を分けておくことが有効です。
| 確認項目 |
内容の例 |
| 担当の分担 |
窓口対応、日程調整、面談の実施、記録の整理をだれが担うか |
| 日程の余裕 |
新入社員の受け入れ業務がある場合、その週に面談を入れすぎていないか |
| 評価の観点 |
面接を担当する人が複数いる場合に、見る観点がそろっているか |
| 公正な採用選考の運用 |
応募者の適性・能力と関係のない事項を聞かない運用の再確認 |
最後の項目は、要請の本文が就職活動を行う学生に対するハラスメントが指摘されている点に触れ、学生が安心して就職活動に取り組める環境が重要としていることに関わります。複数人で面接を担当する場合は、体育会学生の面接評価シートのテンプレートや面接官の評価ばらつきを防ぐチェックリストで、評価の観点を事前にそろえておく方法があります。
内定者フォローを続ける
すでに内々定や内定を出している学生がいる場合、4月も接点を保つことが課題になります。先ほどの調査では、内々定を保有しながら就職活動を続けている学生が32.8%と報告されています。内々定を得た学生の中にも、他の企業の選考を続けている学生がいると読み取れます。
こうした状況では、連絡が途切れると、学生が入社への不安を抱えたり、他社の情報に気持ちが傾いたりする場合があります。ただし、頻繁な連絡や承諾の催促は、学生に負担や圧力と受け取られる可能性があるため、注意が必要です。
| 観点 |
確認する内容 |
| 接点の頻度 |
連絡が途切れていないか。競技や学業の予定に合わせて間隔を調整できているか |
| 接点の中身 |
一方的な案内になっていないか。学生の疑問や不安を聞く機会があるか |
| 他社選考への姿勢 |
他社の選考を続けることを前提に、承諾の催促になっていないか |
| 辞退の兆し |
返信の遅れや連絡頻度の変化に気づける体制があるか |
入社前の不安を和らげる工夫として、株式会社SPIN TECHNOLOGYは、入社前に厳しさも含めてすべて伝え、ギャップをなくすことで離職率の低さにつなげていると述べています(人事の声、2026年1月27日)。内定者に自社の実態を正直に伝える姿勢は、フォローの中身を考える際の一つの参考になります。
設計の詳細は体育会学生の内定者フォロー設計に、辞退の兆しの見方は内定辞退防止チェックリストにまとめています。
4月の実務チェックリスト
最後に、4月の前半と後半に分けた確認項目をまとめます。
| 時期 |
確認項目 |
| 4月前半 |
接点の目的(企業理解か選考か)を案内文に明記しているかの確認 |
| 4月前半 |
面接・面談の担当者の分担と、新入社員の受け入れ業務との重なりの確認 |
| 4月前半 |
対象とする競技の春季リーグ戦の日程を、連盟の公式発表で確認 |
| 4月後半 |
学生の試合・練習の予定に配慮した枠(平日夜・休日・オンライン)の追加の検討 |
| 4月後半 |
選考開始時期(要請の日程は6月1日以降)に対する、自社の方針の再確認 |
| 4月中 |
内定者フォローの頻度と中身の確認、他社選考を続ける学生への姿勢の再確認 |
まとめ|4月は「接点の目的を言葉にし、学生の予定を踏まえて運営する」月
4月は、広報活動の開始から選考開始の6月1日までの間にあたる月で、春のシーズンが始まる競技もあり、学生の予定は競技や大学によって大きく異なります。接点の目的を案内文で明確にし、日程の選択肢と負担の軽さを意識して運営し、公開調査から学生全体の動きを把握しつつ体育会の学生にそのまま当てはめない、内定者には承諾を急かさず途切れない接点を保つ、という考え方があります。優先順位は自社の採用計画に合わせてつけることが現実的です。
4月の進め方に迷う場合は、30〜45分のオンラインでの採用のご相談をご利用ください。
参考文献