「OB・OGの社員から体育会の後輩を紹介してもらえないか」「紹介に頼るのは偏りが出そうで不安」。体育会採用に取り組む担当者の方は、紹介を採用チャネルとして使うかどうかで迷うことがあるのではないでしょうか。
結論から言うと、体育会採用でのリファラルは、「誰が・何を・どこまで」を先に決めておけば、広告に頼る方法とは別の入口として検討できます。反対に、決めずに始めると、担当者個人の人脈に依存し、紹介の有無で評価が揺れる場合があります。この記事では、設計の5つの論点、法律と公正な選考の観点、始め方を整理します。手法全体の中での位置づけは体育会採用の手法別比較表、5手法の概説は体育会学生の採用方法で確認できます。
結論|リファラルは「紹介の入口」と「選考の基準」を分けて設計する
リファラル採用とは、社員やOB・OGなどの人脈から、自社に合いそうな人を紹介してもらい、選考につなげる方法です。体育会採用では、部活のOB・OGが社内にいる企業が、その縁を活かす形で使われます。
設計では、次の2つを分けて考えると整理しやすくなります。
- 入口:誰が、どの範囲の学生に、どんな形で声をかけるか
- 基準:紹介された学生を、他のルートの学生とどう同じ基準で見るか
入口は広げやすい一方、基準が曖昧だと、紹介者との関係が選考に影響しているのではないかという疑問を、学生にも社内にも与えやすくなります。
リファラル採用はどのくらい使われているか|公開調査で見る導入状況
導入状況を知る手がかりとして、東京商工リサーチの調査があります。2026年6月1日〜8日に実施され、6,475社が回答した調査では、リファラル採用のみを取り入れている企業が22.2%、リファラル採用とアルムナイ採用(退職者の再雇用)の両方を取り入れている企業が27.0%で、合わせて49.2%がリファラル採用を取り入れていました。規模別では、大企業が60.4%、中小企業が48.3%です。リファラル採用の報酬額を尋ねた設問では、「報酬は支払っていない」が40.9%で最多、次いで「1〜10万円未満」が20.7%、「明確な規定はない」が20.4%でした(東京商工リサーチ「リファラル採用」調査、2026年10月確認)。
読むときの注意が3点あります。
- この調査は新卒と中途を区別しておらず、体育会の新卒採用だけの数字ではありません
- 導入有無の調査であり、効果の大きさを示すものではありません
- 定着率が最も高い採用方法としてリファラルを選んだ企業は18.5%、「採用方法による差はない」とした企業は40.4%でした。リファラルが定着に有利と読み切れる結果ではありません
体育会の新卒採用に限ったリファラルの実施率や効果を示す公開データは、今回確認できた範囲では見当たりませんでした。以降は、数字ではなく設計の考え方を中心に整理します。
体育会採用で、紹介という入口が成り立つ理由と限界
体育会には、OB・OG会や先輩後輩のつながりが、就職の場面でも存在する場合があります。取材記事から、次のような声が確認できます。いずれも個人の経験であり、一般化はできません。
- ある国立大学のアメリカンフットボール部出身者は、就職活動に十分向き合えず地元企業中心に受けていたところ、部の先輩の紹介でインフラ企業に入社したと話しています(OBOGインタビュー、2026年8月28日)。
- ある大学のサッカー部出身者は、就職や転職の多くが人の紹介による縁がきっかけで、体育会からの人脈の価値を実感していると話しています(OBOGインタビュー、2026年3月24日)。
- ある私立大学のボウリング部出身者は、同じ大学の体育会OBのネットワークが仕事上の人脈構築に直結していると話しています(OBOGインタビュー、2026年8月28日)。
また、人事の声では、SNS運用代行のNOWAY株式会社が「メンバーは全員紹介(リファラル)で集め、信頼できるかとルールを守れるかを最優先している」と述べています(人事の声、2026年3月10日)。ただし、これは新卒の体育会採用ではなく、同社のメンバーの集め方についての発言です。
限界も押さえておく必要があります。紹介の入口は、社内にその競技・大学のOB・OGがいなければ成立しません。また、特定の大学や競技に偏りやすく、他のルートの学生と比べる機会が減る場合があります。体育会の採用で使うほかの入口は、スカウトや説明会などと組み合わせて検討する方法があります。
設計の5つの論点|誰が・何を・どこまでを先に決める
リファラルを運用する前に、次の5つを決めておくと、運用が人に依存しにくくなります。
| 論点 |
決めておくこと |
| 紹介者 |
社員全員か、特定の部署や年次か。退職者や外部のOB・OGを含めるか |
| 紹介の対象 |
競技・学年・大学を限定するか。就活の時期をどう考えるか |
| 紹介の形 |
「会ってみてほしい」という接点づくりか、応募の推薦か |
| 選考の扱い |
紹介の有無で、評価基準や選考ステップを変えるか |
| 情報の扱い |
学生の連絡先や個人情報を、本人の同意なくやり取りしないか |
特に「紹介の形」は、学生に負担をかけないために重要です。後輩が先輩に断りにくい関係にある場合、依頼のつもりが事実上の圧力になる場合があります。紹介者への依頼文には、断ってもよいこと、学生が自分の意思で決められることを書いておくと、誤解を防ぎやすくなります。
「情報の扱い」では、紹介者が学生の連絡先を会社に渡す場合は、学生本人が了承していることを確認する手順を決めます。個人情報の取り扱いの詳細は、自社の規程や専門家に確認してください。
紹介報酬と法律|職業安定法36条と、社員・社外のOB・OGの違い
紹介報酬を設ける場合は、法律の確認が欠かせません。職業安定法第36条は、労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者に報酬を与えて労働者の募集に従事させようとするときは、厚生労働大臣の許可を受けることを求めています。報酬を与えずに募集に従事させる場合は、届出が必要とされています(条文は職業安定法 第36条〜第43条、概要はe-Gov法令検索で確認できます)。
条文の文言上、規制の対象になるのは「被用者以外の者」を募集に従事させる場合です。そのため、自社の社員が紹介する場合と、退職者や外部の個人が紹介する場合とでは、扱いが分かれる可能性があります。体育会採用では、社外のOB・OGや、大学の関係者に紹介を頼みたくなる場面もありますが、報酬の有無を問わず、先に確認が必要です。具体的な制度が条文に当たるかどうかは、管轄の都道府県労働局や社会保険労務士などの専門家に確認してください。この記事は法的助言ではありません。
なお、前述の調査では、報酬を支払っていない企業が最多でした。報酬を設ける場合でも、金額の水準より、誰に・どの条件で支払うかの明文化が先になります。
公正な選考を保つ|紹介ルートでも同じ基準で見る
紹介で来た学生を、他のルートの学生と違う基準で見ると、選考への信頼を損なう場合があります。次のような取り決めが考えられます。
- 紹介ルートでも、面接評価シートなど同じ基準で評価する
- 紹介者は選考の評価に関与しない。評価内容も共有しない
- 紹介者が面接官になる場合は、別の面接官を加える
- 結果は紹介者ではなく学生本人に直接伝える
評価基準の整え方は体育会学生の面接評価シートのテンプレート、面接官ごとのばらつきを抑える点検は面接官の評価ばらつき防止チェックリストで整理しています。応募者の適性・能力と関係のない事項を選考で聞かないという、公正な採用選考の考え方は、紹介ルートでも変わりません。
また、紹介された学生が不採用になる場合に、紹介者と学生の関係が悪くならないよう、結果の伝え方を事前に決めておくことも大切です。
始め方|小さく始めて、決めたことを記録する
いきなり制度化せず、小さく試す進め方があります。
- 社内に体育会出身のOB・OGが何人いるか、競技や大学ごとに把握する
- 紹介の形(接点づくりか推薦か)と、報酬の有無を決める
- 紹介者向けの依頼文に、断ってもよいことと学生の同意の確認を書く
- 紹介ルートの学生にも同じ評価シートを使う運用を、選考担当者に共有する
- 紹介の件数、選考の進み方、辞退の理由を記録し、次の年度の判断材料にする
OB・OGが後輩と会う場面では、会社側の窓口や面談のルールがないと、社員ごとの対応にばらつきが出ます。受け入れ側の体制はOB・OG訪問の受け入れ体制チェックリストで点検できます。
まとめ|リファラルは入口の一つとして、基準を揃えたうえで使う
体育会採用でのリファラルは、OB・OGの縁を活かせる入口の一つです。ただし、新卒の体育会採用での効果を示す公開データは確認できておらず、導入状況の調査も新卒と中途を区別していません。紹介者・対象・形・選考の扱い・情報の扱いの5点を先に決め、報酬を設ける場合は職業安定法の確認を行い、紹介ルートでも他のルートと同じ基準で評価することが、設計の軸になります。自社の人員や競技の接点に合わせて、小さく試しながら調整する進め方が現実的です。
自社でリファラルをどう位置づけるか、他の手法との組み合わせをどうするかで迷う場合は、30〜45分のオンラインでの採用のご相談をご利用ください。
参考文献