OB・OG訪問は、学生にとって人事担当者には聞きにくい話も聞ける場になっています。一方、企業側で窓口や対応のルールを決めていないと、依頼を受けた社員ごとに対応が分かれる場合があります。2026年10月1日からは、求職者等へのセクシュアルハラスメント防止措置が事業主の義務となり、社員への訪問も対象に含まれます。この記事は、受け入れ体制を5領域15項目で点検するチェックリストと、体育会学生を受け入れるときの追加の観点をまとめたものです。課題全体の一覧は体育会採用の課題別チェックリスト12選の④を詳しくした位置づけです。チェック項目は、公開調査と厚生労働省の指針をもとに編集部が作成しました。なお、本記事はチェックリストの観点整理であり、法的助言ではありません。

結論:受け入れ体制は「窓口・対応社員・面談ルール・選考との関係・記録」の5領域で点検すると抜けが見つけやすい

OB・OG訪問の受け入れ体制は、次の5領域に分けて確認すると、どこが未整備かを把握しやすくなります。

  • 窓口:学生が誰に、どう申し込むかが決まっているか
  • 対応社員:誰が、どこまで話してよいかが共有されているか
  • 面談ルール:時間帯・場所・連絡手段・相談窓口が決まっているか
  • 選考との関係:訪問が選考にどう関わるかを学生に伝えているか
  • 記録と振り返り:実施状況を把握し、次に生かす仕組みがあるか

OB・OG訪問の現状:学生の4人に1人が実施し、2026年10月からは指針の対象にも

公開調査では学生の4人に1人がOB・OG訪問を実施し、訪問した学生の75.0%が「次のステップに進みたい」と答えています。加えて、2026年10月から社員への訪問が法令上の防止措置の対象に含まれます。

マイナビの「2027年卒 大学生キャリア意向調査5月〈学生のOB・OG訪問経験〉」(調査期間2026年5月25日〜31日、2027年卒の大学生・大学院生、有効回答1,841名)では、次の結果が示されています。

項目 結果
OB・OG訪問の実施 4人に1人
実施時期 2025年10月〜2026年3月の各月で20%超
訪問のメリット 「業界や具体的な仕事内容について聞ける」40.8%、「会社で働く雰囲気がつかめる」39.1%、「人事担当者には聞けない情報(本音)が聞ける」33.2%
訪問後の意向 「次のステップに進みたい」75.0%
進みたくない理由 「企業になじめない」34.7%、「仕事内容が合わない」27.0%
行わなかった理由 「必要性を感じない」26.7%、「申し込み方法や手順が分からない」20.3%、「希望する企業に学校の先輩がいない」14.9%
OB・OGに連絡を取る際の情報収集方法 「人事担当者からの紹介」26.0%

ここからは編集部の解釈です。「申し込み方法が分からない」「先輩がいない」という理由は、企業側が窓口を設け、対応できる社員を紹介する手順を持つことで補える余地があると考えられます。連絡の手がかりとして「人事担当者からの紹介」を挙げた学生が26.0%いることも、人事が仲介役を担う余地を示しています。一方、75.0%という数字は訪問した学生の意向を集計したものです。訪問が選考結果や入社意向を高めるという因果を示すものではありません。

2026年10月1日施行:社員への訪問も「求職活動等」に含まれる

厚生労働省の資料(「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」、指針は令和8年厚生労働省告示第52号)によると、2026年10月1日から、求職者等に対するセクハラ防止措置が事業主の義務となります。

  • 指針の「求職活動等の例」に、企業の雇用する労働者への訪問が含まれる
  • SNS等オンラインを介したものも含み、社員が通常働いている場所で行われるものに限らない
  • 講ずべき措置の一つに、求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、労働者と求職者等に周知・啓発することがある。例として「面談時間及び場所の指定、実施体制並びにやり取りに用いるSNSの種類の指定」が挙げられている
  • 相談窓口をあらかじめ定めて求職者等に周知する。担当者として人事担当者以外の者を指定することも考えられ、外部機関への委託も例示されている

なお、指針の本文に「OB・OG訪問」という語は出てきません。「企業の雇用する労働者への訪問」が含まれるという記載から、OB・OG訪問の受け入れも対象になりうると編集部は整理しています。具体的な義務の範囲や対応(私的な紹介を経由した訪問の扱いを含む)は、厚生労働省の指針や都道府県労働局で確認してください。

OB・OG訪問の受け入れ体制チェックリスト(5領域15項目)

「はい」と答えられない項目が、見直し候補です。表の右列は、「いいえ」の場合に起きやすいことの例です。

① 窓口

窓口が決まっていないと、依頼が社員個人に分散し、会社として実施状況をつかみにくくなります。

No. チェック項目 「いいえ」のときに起きやすいこと
1 訪問の申し込み窓口(部署・連絡先)を一本化している 社員個人への直接依頼が分散し、誰がいつ会ったかを会社が把握しにくい
2 申し込み方法を採用サイトや説明会で学生に案内している 方法が分からない学生が申し込めない(上記調査では20.3%が理由に挙げた)
3 学校の先輩がいない学生にも、対応できる社員を紹介する手順がある 出身校の先輩がいる学生に機会が偏りやすい

② 対応社員

対応する社員の負担と話す内容を、会社として整理しておく領域です。

No. チェック項目 「いいえ」のときに起きやすいこと
4 対応社員を選ぶ基準と、本人の同意・業務時間の扱いを決めている 特定の社員に負担が集中する場合がある
5 話してよい範囲(合否の見込み、未公開情報、他の学生の情報など話さないこと)を共有している 社員ごとに伝える内容がばらつきやすい
6 対応社員向けに、事前の説明や研修の機会がある ルールが周知されず形だけになる場合がある(指針でも周知・啓発のための研修等が例示されている)

③ 面談ルール(指針への対応)

7〜9は、上で紹介した指針の例示に沿う項目です。飲食を伴う面談の扱いなども、自社で決めておく項目として検討対象になります。

No. チェック項目 「いいえ」のときに起きやすいこと
7 面談の時間帯と場所(オンラインを含む)を指定している 社員と学生の二者間で日時や場所が決まり、会社が実施状況を把握しにくい
8 学生とのやり取りに使う連絡手段を指定し、個人のSNSアカウント等の扱いを決めている 私的な連絡手段でのやり取りが生じやすく、記録も残りにくい
9 学生が相談できる窓口を定め、学生に周知している(人事以外の担当者や外部窓口も選択肢) 学生が困ったときの相談先が分からない

④ 選考との関係

訪問が選考に関わるのかどうかは、学生の話しやすさに影響する場合があります。

No. チェック項目 「いいえ」のときに起きやすいこと
10 訪問が選考に影響するかどうかを学生に明示している 選考の一部か判断できず、本音で質問しにくくなる場合がある
11 訪問内容を選考で参照する場合は、記録の項目と使い方を決め、学生に説明している 社員の印象が基準なく選考に混ざり、学生の不信につながりやすい
12 訪問しなかった学生が不利にならないよう、説明会など代わりの情報提供の場がある 訪問の有無で得られる情報に差が出やすい

⑤ 記録と振り返り

記録は、次の改善と、問い合わせがあったときの確認の土台になります。

No. チェック項目 「いいえ」のときに起きやすいこと
13 訪問の日時・対応社員・形式を記録している 学生から問い合わせがあったときに、実施状況を後から確認しにくい
14 訪問後に学生の感想や質問内容を集め、対応社員にフィードバックしている 対応の良し悪しが社員に伝わらず、改善されにくい
15 採用シーズン後にルールと運用を見直す時期を決めている ルールが更新されず、実態とずれていく場合がある

体育会学生を受け入れるときに追加で確認したい3つの観点

体育会学生の受け入れでは、上の15項目に加えて「競技日程への配慮」「部の先輩とのつながりの扱い」「相談相手としての役割」の3点を確認しておくと運用しやすくなります。この3観点は編集部の整理です。

練習・試合日程と重ならない候補日を用意する

複数の候補日を出し、オンラインの選択肢も用意しておくと、練習や試合と重なる学生が参加しやすくなります。引退時期は競技や大学によって異なるため、体育会の引退時期 競技別一覧も参考に、時期を調整してください。

部の先輩・後輩のつながりを、断りやすさに配慮して扱う

ある国立大学ラグビー部の取材では、卒業前に先輩へOB訪問やES添削を依頼する進路相談の文化があると語られています(取材記事、2025-10-29取材)。また、あるアメリカンフットボール部出身者は、部の先輩の紹介で入社したと振り返っています(インタビュー、2026-08-28取材)。

同じ部・競技出身の社員を紹介することは、接点として有効な場合があります。一方、先輩後輩の関係があると、学生が誘いや依頼を断りにくい場合も考えられます。紹介は会社の窓口を経由し、学生が辞退しやすい形にしておくと安心です。スポーツの部活動と職場では評価の仕組みや関係性が異なるため、部の上下関係をそのまま訪問の場に持ち込まない配慮も必要です。

就活の相談相手としての役割を決めておく

経理・AI SaaS企業の人事担当者は、体育会学生は部活動に打ち込むあまり就活の相談相手が少なく、孤立しがちだと感じていると語っています(取材記事、2025-12-18取材)。ある大学サッカー部出身者は、幅広い企業を見るためにOB訪問を重ねたと振り返っています(インタビュー、2026-04-01取材)。

これらは個別の声であり、一般化はできません。ただ、学生が訪問に「就活の進め方」の相談を持ち込む場合があることは想定しておけます。対応社員とは、次の点をあらかじめすり合わせておくと、社員ごとの対応の差を小さくしやすくなります。

  • 自社の話に加えて、業界の見方や他社との比べ方をどこまで話すか
  • 部活動と就活を並行した自身の経験を話せる社員を、対応者に含めるか
  • 選考や人事制度など、答えられない質問を受けたときに人事へつなぐ手順

チェックリストの運用手順:まず「いいえ」の多い領域から手を付ける

5領域のうち「いいえ」の多い領域から着手すると、限られた人手でも改善を進めやすくなります。次の4ステップで進めます。

  1. 人事担当者と対応社員で、15項目に回答する
  2. 領域ごとに「いいえ」の数を数える
  3. ③面談ルールは指針への対応にかかわるため、優先度を高めに置く
  4. 採用シーズン後に、同じ項目で再点検する

対応社員の基準をそろえる際は、面接官評価のばらつき防止チェックリストが参考になります。内定後のOB・OGとの接点については、内定辞退防止チェックリストもあわせてご覧ください。

まとめ:受け入れ体制は5領域で点検し、「いいえ」の多い領域から整える

OB・OG訪問の受け入れ体制は、窓口・対応社員・面談ルール・選考との関係・記録の5領域で点検できます。2026年10月からは社員への訪問も指針の対象に含まれるため、面談ルールと相談窓口の周知は優先して確認したい領域です。体育会学生には、競技日程、先輩後輩の関係、相談相手としての役割という3つの観点を加えると、運用しやすくなります。すべてを一度に整える必要はなく、「いいえ」の多い領域から少しずつ進めてください。

体育会学生との接点づくりやOB・OG訪問の受け入れ設計を、自社の採用計画とあわせて整理したい場合は、採用相談からご連絡ください。

参考文献