「解禁前に学生はどこまで動いているのか」「部活を引退してからでは遅いのか」。採用計画を立てる場面で、こうした問いに向き合うことがあります。
本記事では、内閣府とマイナビの公表データで就活解禁(3月1日)前の学生の動きを整理し、そのうえで体育会学生の競技日程と重ねて読む方法を示します。
結論:学生全体では大学3年生の夏にインターンシップ参加が本格化し、2月までに約7割が最初の面接を受けている(公務員・教職員志望者を除く)
内閣府の2025年度調査では、インターンシップ参加は大学3年生の7月から本格化しています。最初の採用面接を受けた時期は、卒業前年の2月までが約7割、3月までが約9割でした(公務員・教職員志望者を除く集計)。解禁日の3月1日より前に、学生の動きの多くが始まっていることになります。
なお、体育会学生に限った就活開始時期の公開データは、本記事で確認した範囲では見当たりません。以下の数値はすべて学生全体のものです。
本記事で使う調査と、数値を読むときの注意
調査ごとに対象・卒年・定義が異なるため、数値は優劣の比較ではなく「時期の目安」として読みます。
表A 本記事で使う調査
| 調査名 |
実施主体 |
対象・回答数 |
調査時期 |
本記事で使う指標 |
| 学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査(2025年度) |
内閣府 |
有効回答4,415名(大学4年3,157・大学院2年1,258) |
2025年度 |
インターンシップ参加率、選考との関わり、最初の面接・内々定の時期、就活の始まりの認識 |
| 2027年卒 大学生キャリア意向調査6月<インターンシップ・キャリア形成活動> |
マイナビ |
n=2,511 |
2025年6月20日〜30日 |
6月単月の参加率 |
| 2027年卒 大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(中間総括) |
マイナビ |
n=1,396 |
2025年10月5日〜14日 |
10月時点の参加率 |
| 2027年卒 大学生広報活動開始前の活動調査 |
マイナビ |
n=983 |
2026年2月2日〜9日 |
2月時点の参加率、エントリー予定社数 |
内閣府調査の対象は2026年3月卒業予定(2025年度に大学4年)の学生で、マイナビの3調査は2027年卒です。卒年が違うため、数値を直接つなげて「推移」と読むことはできません。
また、内閣府調査は2023年度調査以降、「インターンシップと呼称されるもの」を対象とし、それ以外のキャリア形成支援は除いて回答するよう案内しています。マイナビ調査の「キャリア形成活動」はオープン・カンパニーや仕事体験も含む指標で、両者の対象範囲は同じではありません。
「インターンシップ」の定義が変わった点
2022年6月(令和4年6月)の三省合意(文部科学省・厚生労働省・経済産業省)の改正で、インターンシップ等は次の4タイプに整理されました。
- タイプ1:オープン・カンパニー
- タイプ2:キャリア教育
- タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ
- タイプ4:高度専門型インターンシップ(試行)
このうちタイプ3・4が「インターンシップ」とされています。一定の基準を満たすインターンシップで企業が得た学生情報は、広報活動・採用選考活動に使えるようになりました(使えるのはそれぞれの活動の開始時期以降)。令和5年度(2023年度)に参加するインターンシップから適用されています。
日程ルールとしては、内閣官房の要請で、広報活動は3月1日以降、採用選考活動は6月1日以降、正式な内定は10月1日以降とされています。「解禁」はこの広報活動開始日を指し、実際には本記事のデータのとおり、それ以前から多くの接点が持たれています。
大学3年生の6〜7月に参加が増え、秋には8割を超える
マイナビ調査では、2027年卒の6月単月のキャリア形成活動の参加率が49.2%(前月比19.0pt増)、10月時点の参加率が87.1%でした。内閣府調査でも、大学3年生の7月から参加が本格化しています。
表B マイナビ調査(2027年卒)で見る参加状況
| 時点 |
指標 |
数値 |
出典 |
| 2025年6月(単月) |
キャリア形成活動の参加率 |
49.2%(前月比+19.0pt) |
マイナビ6月調査 |
| 2025年6月(単月) |
オープン・カンパニー&キャリア教育等 |
42.9%(前月27.1%) |
マイナビ6月調査 |
| 2025年10月 |
参加率 |
87.1% |
マイナビ中間総括 |
| 2025年10月 |
オープン・カンパニー等 |
71.8% |
マイナビ中間総括 |
| 2025年10月 |
仕事体験 |
57.0% |
マイナビ中間総括 |
| 2025年10月 |
インターンシップ(5日以上) |
27.7% |
マイナビ中間総括 |
| 2026年2月 |
参加率 |
85.6% |
マイナビ広報活動開始前調査 |
| 2026年2月 |
平均参加社数 |
5日以上のインターンシップ0.8社・仕事体験3.4社・オープン・カンパニー&キャリア教育5.7社 |
マイナビ広報活動開始前調査 |
注意点として、10月の87.1%と2月の85.6%は別の調査・別の回答者です。数値だけを見て「参加率が減った」と読むことはできません。
低学年からの参加と「選び方が分からない」悩み
マイナビの6月調査は、同社の低学年向け調査(27・28年卒)の結果として、1・2年生のときにキャリア形成プログラムへの参加経験がある学生が30.1%だったことを紹介しています。また、初めて応募する前にプログラムの選び方が分からず悩んだ学生は60.3%でした。
参加の入口が早い学生がいる一方で、選び方に迷った経験のある学生は6割に上っています。自社のプログラムの内容が、応募前の学生に伝わる形で示されているかを確認する材料になります。
内閣府調査で見る参加率の推移
内閣府調査では、インターンシップと呼称されるものへの参加率は2021年度から2025年度にかけて7割台で推移しています。
表C 内閣府調査のインターンシップ参加率(参加計)
| 調査年度 |
参加率 |
| 2021年度 |
73.2% |
| 2022年度 |
72.8% |
| 2023年度 |
77.1% |
| 2024年度 |
76.1% |
| 2025年度 |
74.6% |
2025年度調査では、参加者のうち5日以上の経験者が40.1%(前年34.6%)、複数回参加した学生が63.7%でした。
解禁前のプログラムが選考を含む割合は前年より高い
内閣府調査では、参加したインターンシップ等が実質的な選考を含んでいた割合は58.6%(前年53.7%)で、参加後に「早期選考の案内」を受けた学生は73.5%でした。
参加後に企業から受けたアプローチは次のとおりです。
- 早期選考の案内:73.5%
- 採用説明会・セミナーへの参加(2025年2月以前開催):58.0%
- 採用試験・面接等(2025年5月以前開催):52.3%
企業説明会等への参加のピークが卒業前年度の9月以前だった割合は33.7%(前年27.5%)、採用目的の説明会に限ると14.0%(前年10.3%)でした。いずれも前年より高くなっています。
最初の採用面接の時期は、卒業前年の2月までに約7割、3月までに約9割です(公務員・教職員志望者を除く)。最初の内々定は2月までに約4割、4月までに約7割、5月までに約9割でした。内々定の時期の詳しいデータは、内定出し時期のデータまとめで整理しています。
マイナビの2026年2月調査では、3月以降にエントリーする予定の社数は平均6.7社(前年比1.3社減)、就活を終えたい時期は6月が最多の19.7%(前年比2.3pt減)、キャリア形成プログラムで最も良い印象を抱いた企業について「その企業で働きたいと思った」割合は89.6%でした。解禁前に接点を持った企業の比重が高まっている可能性も考えられますが、調査はその因果関係までは示していません。
学生は何をもって「就活が始まった」と考えているか
内閣府調査では、学生が就活が始まったと考えるタイミングは、「就職活動準備」が45.5%、「インターンシップ関連」が27.8%、「具体的なアクション」が21.0%でした。
表D 就職活動が始まったと考えるタイミング(n=3,285)
| 区分 |
割合 |
| 就職活動準備 |
45.5% |
| インターンシップ関連 |
27.8% |
| 具体的なアクション |
21.0% |
| その他・覚えていない |
5.7% |
詳細項目では、「インターンシップと呼称されるものに関するウェブサイトに登録した時」が約2割で最多でした。就職活動の期間として「9ヶ月間程度以上」と答えた学生は約5割でした。
学生が就活の始まりと捉えるきっかけは、エントリーやエントリーシート提出といった具体的なアクションより、準備やインターンシップ関連のほうが多くなっています。企業側が3月1日の広報活動開始を起点に接点を考えている場合、学生の捉え方とは起点がずれている可能性があります。
体育会採用での読み方:競技日程と3年生の夏を重ねる
取材記事で確認できた4年生の引退時期の例は5月〜12月が中心で、3年生の夏に本格化するインターンシップは、現役のシーズン中と重なる可能性があります。体育会学生の行動を示す統計ではなく、時期の重なりの目安として読んでください。
表E 引退時期の取材例と、解禁前の動きとの関係
| 競技 |
取材記事にあった引退時期の例 |
3年生の夏〜解禁前の動きとの関係 |
出典 |
| 卓球 |
4年生は5月に引退した例 |
3年生の夏は現役期間中 |
取材記事 |
| ボート |
4年生は9月のインカレを区切りに引退した例 |
3年生の夏は現役期間中 |
取材記事 |
| サッカー |
4年生は9〜10月に引退した例 |
3年生の夏は現役期間中 |
取材記事 |
| ラクロス(男子) |
11月に引退した例 |
3年生の夏は現役期間中 |
取材記事 |
| アメリカンフットボール |
11〜12月に引退した例 |
3年生の夏は現役期間中 |
取材記事 |
| 男子ソフトボール |
3年生の秋に引退した例 |
3年生秋の引退後に、解禁前の時期が残る |
取材記事 |
| 軟式野球 |
3年生の秋に引退した例 |
3年生秋の引退後に、解禁前の時期が残る |
取材記事 |
この表の例は個別のもので、競技全体の標準ではありません。また、内閣府・マイナビの数値は学生全体のものです。競技別の引退時期は体育会の引退時期 競技別一覧で詳しく整理しています。
取材記事と人事の声に見る個別の例
ツナカレメディアの取材記事から、解禁前の時期に関わる個別の声を紹介します。
- ある大学サッカー部は、3年生の10月に幹部を退任した後は学業・就職活動に集中しやすくなると話しています(取材記事)。
- ある大学男子ラクロス部は、就職活動を「自己実現」の一部と捉え、必要に応じて部活動を休むことを認めています(取材記事)。
- ある大学テコンドー部では、3・4年生は就活や院試で練習参加の頻度が下がる傾向があるといいます(取材記事)。
- ある大学アイスホッケー部の卒業生は、部活を続けながら就活したため、応募企業を6社に絞ったと話しています(OBOGインタビュー)。
- ある大学アメリカンフットボール部の卒業生は、競技中心で情報収集が不足したまま1社目を決めたことを反省点に挙げています(OBOGインタビュー)。
- ある不動産・住宅開発企業は、大学2年の1月からインターンシップを開催しています(人事の声)。
- ある経理・AI SaaS企業は、体育会学生向けに夏は勉強会、冬に説明会の2段階で関係をつくっています(人事の声)。
いずれも個別の声で、体育会学生全体の傾向を示すものではありません。
自社の解禁前の接点を見直す4つの観点
自社の接点がどの時期に集中しているかを、公表データの推移と体育会応募者の競技日程の両方に照らして確認するのが現実的です。
- 自社プログラムの実施月を一覧にする。 インターンシップ、説明会、面談などを月別に並べ、3年生の6〜7月以降に参加が本格化するという公表データと重ねます。実施月が特定の時期に偏っていないかを確認できます。
- プログラムがタイプ1〜4のどれに当たるかを確認する。 学生情報を選考に使う場合は、三省合意の基準(就業体験・指導・実施期間・情報開示の各要件)を満たしているかを整理しておきます。自社の位置づけが曖昧なままだと、学生への説明も曖昧になります。
- 体育会の応募者には、最後の公式戦や主要大会の予定を本人に確認して記録する。 競技名から推測せず、本人の申告を残します。取材記事の例は個別のもので、同じ競技でも学校や学年によって異なる場合があります。
- 夏に参加できない学生向けの選択肢を検討する。 冬・春の短時間プログラム、オンライン実施、複数の日程といった選択肢があります。ツナカレメディアの取材では、夏は勉強会・冬は説明会の2段階で関係をつくる企業の例もあります。
接点の設計については、体育会採用イベントの企画設計と体育会採用カレンダーも参考にしてください。
解禁前の接点から内定につながった後の辞退リスクの確認には、内定辞退防止チェックリストが参考になります。
まとめ:解禁前の動きは「3年生夏からの公表データ」と「学生ごとの競技日程」の両方で読む
内閣府の調査では、インターンシップ参加は大学3年生の7月から本格化し、最初の採用面接は2月までに約7割でした。参加したインターンシップ等が実質的な選考を含んでいた割合は58.6%で、解禁前のプログラムが選考に近づいている様子もうかがえます。
学生が就活の始まりと捉えるきっかけも、エントリーなどの具体的なアクションより、準備やインターンシップ関連が多くなっています。一方で、体育会学生に限ったデータは確認できていないため、競技の標準を当てはめるのではなく、応募者ごとの競技日程を確認したうえで接点の持ち方を考えるのが現実的です。
解禁前の接点設計や、競技日程を踏まえたプログラムの時期についてご相談がある場合は、採用のご相談からお問い合わせください。
参考にした公開データ
(確認日:2026年10月15日)