「内々定をいつ出せば間に合うのか」「部活を引退してから声をかけたのでは遅いのか」。採用計画を立てる場面で、こうした問いに向き合うことがあります。本記事では、公表されている調査データで新卒の内々定・内定の時期の全体像を確認し、そのうえで体育会学生の引退時期と重ねて読む方法を整理します。
結論:卒業前年の3月1日時点で4〜5割、6月には8割前後の学生が内々定を持っている
民間2調査では、卒業前年の3月1日時点で内々定率は4〜5割、6月には8割前後に達しています(2026年卒・2027年卒)。運営元メディアの取材記事で確認できた4年生の引退時期の例(5月〜12月)と並べると、多くの例で内々定率が8割前後に達した後の時期にあたります。
一方で、体育会学生に限った内定時期の公開データは、本記事で確認した範囲では見当たりません。以下の数値はすべて学生全体のものです。
本記事で使う3つの調査と、数値を比べるときの注意
調査ごとに対象・定義・時点が異なるため、数値は「同じ調査の中で」比べるのが基本です。
表A 本記事で使う3つの調査
| 調査名 | 実施主体 | 対象・方法 | 指標の意味 | 本記事で使う時点 |
|---|---|---|---|---|
| 大学生キャリア意向調査<就職活動・進路決定> | マイナビキャリアリサーチLab | 大学生への調査(各月で回答者が異なる) | 内々定率(内々定を持っている学生の割合) | 3月1日〜8月末(2027年卒)、3月1日〜10月中旬(2026年卒) |
| 就職プロセス調査 | 株式会社インディードリクルートパートナーズ リサーチセンター(卒業時点の回の発表主体) | 学生への調査。卒業時点の回は大学生の有効回答677人(調査期間2026年3月12日〜17日) | 就職内定率 | 2月1日・3月1日・6月1日・卒業時点(2026年卒) |
| 大学等卒業予定者の就職内定状況調査 | 文部科学省・厚生労働省 | 抽出112校・6,250人(大学・短大・高専・専修学校の合計) | 就職希望者に占める内定取得者の割合(4月1日は就職率) | 10月1日・12月1日・2月1日・4月1日(2026年3月卒) |
同じ「内定率」でも、対象と分母は調査によって異なります。マイナビ調査は「各月ごとの回答者が異なるため、前月調査から数値が減少する場合があります」と注記しています。月ごとの小さな増減は、実際の変化とは限りません。
民間調査で見る内々定率の月別推移(2026年卒・2027年卒)
マイナビ調査では、2027年卒の内々定率は3月1日時点で46.0%、6月末で81.2%、8月末で85.6%でした。
表B 内々定率の月別推移(マイナビ)
| 調査時期 | 2026年卒 | 2027年卒 | 差(編集部計算) |
|---|---|---|---|
| 3月1日 | 43.1% | 46.0% | +2.9pt |
| 3月末 | 54.6% | 58.7% | +4.1pt |
| 4月末 | 70.0% | 70.9% | +0.9pt |
| 5月末 | 77.1% | 76.4% | −0.7pt |
| 6月末 | 82.8% | 81.2% | −1.6pt |
| 7月末 | 81.4% | 83.7% | +2.3pt |
| 8月末 | 87.6% | 85.6% | −2.0pt |
| 9月末 | 88.9% | 本記事執筆時点で未確認 | - |
| 10月中旬 | 90.5% | 本記事執筆時点で未確認 | - |
3月1日〜3月末は2027年卒が上回り、5月末以降は年によって上下が入れ替わっています。各月の回答者が異なるため、1〜2pt程度の差で「早期化した」「遅れた」と断定するのは適切ではありません。2026年卒の10月中旬の90.5%は、前年同値とマイナビが記載しています。
2027年卒の8月末時点では、文理・男女別に理系男子89.3%、理系女子88.1%、文系女子86.2%、文系男子80.8%でした。差の理由は調査が示していないため、断定しません。
就職プロセス調査(2026年卒)の時点別内定率
同調査では、2026年卒の内定率は2月1日で39.3%、3月1日で48.4%でした。3月1日の48.4%は、2017年卒以降の現行スケジュールで過去最高と同調査が発表しています。6月1日は81.6%(前年同期比0.8pt減)、卒業時点(2026年3月)は98.7%(前年同月比−0.1pt)、進路確定率は96.4%(同+0.6pt)でした。
6月1日時点の内定率の推移は次のとおりです。
表B-2 6月1日時点の内定率の推移(就職プロセス調査)
| 卒年 | 6月1日時点の内定率 |
|---|---|
| 2022年卒 | 68.5% |
| 2023年卒 | 73.1% |
| 2024年卒 | 79.6% |
| 2025年卒 | 82.4% |
| 2026年卒 | 81.6% |
2022年卒から2025年卒にかけて上がり、2026年卒はわずかに下がっています。
初めて内定を得た時期:卒業前年の2月までに約半数
就職プロセス調査(2026年卒・卒業時点)では、初めて内定を取得した時期が卒業前年2月(2025年2月、大学3年生の2月)までの累計で49.1%と、前年から8.8pt増えています。
初めて選考を受けた時期は、卒業前々年12月(2024年12月)が16.1%で最も高くなっています。卒業前年2月までの累計は78.3%(前年比+5.4pt)、卒業前年5月までの累計は9割を超えました。同調査のリリースは、これを「企業の内定出しのスケジュールが早期化している」と表現しています。
企業側の予定のデータもあります。キャリタスの「新卒採用に関する企業調査(2024年10月)」(調査期間2024年9月25日〜10月7日、1,064社、2024年10月21日発表)では、2026年卒採用で年内に面接を始める予定の企業が3割超、内定出し開始のピークは3月の見込みとされていました。これは実績ではなく「予定」の回答です。
なお、民間調査の「内々定」と、政府の日程ルールで正式な内定日とされる卒業・修了年度の10月1日以降の「正式な内定」は、別のものとして扱われています。日程ルールの詳細は体育会採用カレンダーで整理しています。
政府調査で見る就職内定率(2026年3月卒)
文部科学省・厚生労働省の調査では、大学生の就職内定率は10月1日時点で73.4%、12月1日で84.6%、2月1日で92.0%、4月1日時点の就職率は98.0%でした。
表C 大学(学部)の就職内定率・就職率(2026年3月卒)
| 時点 | 大学(学部) | 前年同期比 | 公表日 |
|---|---|---|---|
| 10月1日 | 73.4% | +0.5pt | 2025年11月14日 |
| 12月1日 | 84.6% | +0.3pt | 2026年1月23日 |
| 2月1日 | 92.0% | −0.6pt | 2026年3月17日 |
| 4月1日(就職率) | 98.0% | 増減なし | 2026年5月22日 |
10月1日の内訳は男子71.5%・女子75.8%、4月1日は男子97.5%・女子98.7%でした。
民間調査の8月末(85.6%、2027年卒)より政府調査の10月1日(73.4%、2026年卒)の数値が低くなっています。ただし、卒年、対象(抽出校)、分母(就職希望者)、指標の定義がいずれも異なるため、単純な比較はできません。どちらが正しいという話ではなく、同じ調査の時系列で読むものです。
体育会採用での読み方:引退時期の取材例を内々定率に重ねる
取材記事にあった引退時期の例を内々定率の推移に重ねると、引退が秋以降になる競技では、引退時点で多くの学生がすでに内々定を持っている時期と重なる可能性があります。
表D 引退時期の取材例と、近い時点の内々定率・就職内定率
| 競技 | 取材記事にあった引退・最終大会の時期の例 | 近い時点の数値 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 卓球 | 4年生は5月の春季リーグを最後に引退した例 | 5月末 76.4%(マイナビ・2027年卒) | 取材記事 |
| ボート | 4年生は9月のインカレを区切りに引退した例 | 8月末 85.6%(マイナビ・2027年卒) | 取材記事 |
| サッカー | 4年生は9〜10月のリーグ後期戦を区切りに引退した例 | 8月末 85.6%(マイナビ・2027年卒)、10月1日 73.4%(政府・2026年3月卒) | 取材記事 |
| ラクロス(男子) | 7〜10月のリーグ戦を経て11月に引退した例 | 12月1日 84.6%(政府・2026年3月卒) | 取材記事 |
| 準硬式野球 | 秋季大会後、11月の引退試合を最後に引退した例 | 同上 | 取材記事 |
| アメリカンフットボール | 秋季リーグ戦から11〜12月の全国大会・入替戦を区切りに4年生が引退した例 | 同上 | 取材記事 |
| チアリーディング | 4年生の引退は12月の全日本選手権後という例 | 同上 | 取材記事 |
表の読み方には注意が必要です。引退時期は運営元メディアの取材記事にあった個別の例で、競技全体の標準ではありません。内定率は学生全体の数値で、体育会学生に限ったものではありません。異なる調査・卒年を並べているため、比較ではなく「時期の目安」として読んでください。競技別の引退時期は体育会の引退時期 競技別一覧で詳しく整理しています。
この表から、次のような示唆が考えられます。
- 引退後に初めて接点を持つ設計だけだと、その時期には内々定を持つ学生の割合が高い可能性があります。引退前の接点(オンライン・短時間・日程を選べる形式など)を検討する余地があります。
- 一方で、2026年卒の10月中旬時点の内々定率は90.5%で、裏返せば約1割の学生はこの時点で内々定を持っていません(編集部計算)。政府調査でも12月1日時点の就職内定率は84.6%で、2月1日の92.0%まで上がり続けています。引退後の採用機会がないとは言えません。
- 正式な内定日である10月1日以降も選考を続ける企業にとっては、秋から冬にかけての引退時期が、ひとつの接点の機会になり得ます。
取材記事と人事の声に見る個別の例
ツナカレメディアの取材記事から、個別の声を紹介します。
- 東北大学アイスホッケー部の卒業生は、部活動を続けながら就職活動をしたため応募企業を6社に絞ったと話しています(OBOGインタビュー)。
- 一橋大学アメリカンフットボール部の卒業生は、就職活動に十分向き合えず地元企業を中心に受けていたものの、部の先輩の紹介でインフラ企業に入社したと振り返っています(OBOGインタビュー)。
- ある経理・AI SaaS企業の人事担当者は、体育会学生向けに夏は勉強会、冬に説明会を行う2段階のアプローチで関係を深めていると話しています(人事の声)。
- あるマーケティング・ITベンチャーは、内定までにインターンや面接で7〜8回以上の接点を持っていると話しています(人事の声)。
いずれも個別の声であり、体育会学生全体の傾向を示すものではありません。
自社の内定出し時期を公表データと照らす4つの手順
自社の「内々定を出した日」の分布を月別に集計し、同じ卒年の公表データの推移と並べるところから始めるのが現実的です。
- 自社の内々定日を月別に集計する。 初回の内々定日と承諾日を分けて記録します。定義が混ざると、公表データとの比較ができません。
- 比べる調査を1つに決め、定義と時点をそろえる。 民間調査の月別内々定率と並べるのか、政府調査の10月1日以降の内定率と並べるのかを先に決めます。
- 体育会学生の応募者について、最後の公式戦の予定を本人に確認して記録する。 競技名から推測で埋めず、本人の申告を残します。取材記事の例は個別のものです。
- 内定出し後のフォロー期間の長さを見積もる。 内々定から正式内定日・入社までの期間が長くなる場合の接点設計は体育会学生の内定者フォロー、辞退率の見方は内定辞退率のデータ解説で解説しています。
まとめ:内定出し時期は「同じ調査の推移」と「学生ごとの競技日程」の両方で考える
マイナビ調査の2027年卒では、内々定率は3月1日時点の46.0%から、6月末に81.2%まで上がっています。就職プロセス調査(2026年卒)では、初めて内定を得た時期が卒業前年2月までの累計で49.1%でした。政府調査では、10月1日時点の就職内定率が73.4%、12月1日で84.6%です。
調査ごとに定義が異なるため、数値は同じ調査の時系列で読み、自社の内々定日の分布と並べます。体育会学生については、競技の標準を当てはめるのではなく、応募者ごとの最後の公式戦の予定を確認したうえで、接点の持ち方を考えるのが現実的です。
自社の内定出し時期の見直しや、競技日程を踏まえた接点設計についてご相談がある場合は、採用のご相談からお気軽にお問い合わせください。
参考にした公開データ
(確認日:2026年10月10日)
- 【9月更新】2027年卒就職内定率(内々定率)の状況|マイナビキャリアリサーチLab(2026年9月14日更新)
- 2026年卒就職内定率(内々定率)の状況|マイナビキャリアリサーチLab
- 就職プロセス調査(2026年卒)「2026年3月度(卒業時点)内定状況」|インディードリクルートパートナーズ リサーチセンター(2026年3月25日発表)
- 就職プロセス調査(2026年卒)3月1日時点の内定状況(日本の人事部ニュース)
- 就職プロセス調査(2026年卒)6月1日時点の内定状況(DXマガジン)
- 令和7年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査(10月1日現在)|文部科学省
- 同(12月1日現在)
- 同(2月1日現在)
- 令和7年度大学等卒業者の就職状況調査(4月1日現在)|文部科学省
- キャリタス 新卒採用に関する企業調査(2024年10月)
- 内閣官房「2027(令和9)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請」
- ツナカレメディア:取材記事(卓球・ボート・サッカー・ラクロス・準硬式野球・アメリカンフットボール・チアリーディング)、OBOGインタビュー(東北大学アイスホッケー部・一橋大学アメリカンフットボール部)、人事の声(経理・AI SaaS企業・マーケティング・ITベンチャー)