協賛、主務、学連、インカレ、デュアルキャリア——体育会学生の採用に関わると、社内の共通言語になっていない用語が次々に出てきます。本記事は編集部が体育会採用の用語から50語を選び、7分類で整理したまとめです。新しい調査や独自データは含みません。

結論:用語は「意味」だけでなく「採用実務のどの場面で使うか」とセットで押さえる

50語は7分類に整理し、各語には採用実務で使う場面を示すタグを添えました。用語の意味だけを覚えるよりも、「その語が自社のどの工程で出てくるか」とセットで押さえるほうが、社内での共有や外部とのやり取りに使いやすくなります。

分類は、(1)組織・制度、(2)役職・役割、(3)大会・シーズン、(4)進学ルートと就職支援、(5)採用手法・チャネル、(6)競技継続と雇用形態、(7)キャリアと定着の7つです。場面タグは【母集団形成】【日程設計】【書類・面接】【雇用形態・条件】【入社後・定着】【社内説明】の6種類を使い分けています。自社が着手している工程に近い分類から読み進めていただく想定です。

この用語集の選定基準と、収録しなかった語

編集部は体育会採用の用語リスト(約60語)を管理しており、採用担当者が最初に押さえたい基礎用語50語を選定しました。選ばなかった語は専門性の高さ・実務との距離・定義の重複を理由に個別解説側に残しています。個別解説は本記事とは粒度が異なり、順次整理していく予定です。

選定基準は次の4つです。

  1. 学生・大学・支援会社とのやり取りで目にする頻度が高い基礎用語を優先。
  2. 制度・法令に関わる語は、官公庁の一次情報で確認できる範囲にとどめる。
  3. 個社のサービス名・団体名は序列化を避けるため収録しない。
  4. 意味が大学・競技・チームで異なる語は注記し、一律の定義は置かない。

収録しなかった11語と理由は、次のとおりです。

語 収録しなかった理由
OG会 OB会・OBOG会と重複するため
新人戦/個人戦/団体戦 大会区分の細目で「公式戦」「全国大会」で足りるため
二部リーグ/昇格・降格 リーグ運営の細目でリーグ戦の説明に含まれるため
部費/部活動収支 部の会計領域で採用実務との距離が遠いため
合宿/寮生活 学生生活の語で共通言語になる場面が限られるため
引退試合 「部活動引退時期」に含まれるため

1.組織・制度の基本用語(8語)

用語 意味 採用実務で使う場面
体育会 大学公認の運動部の連合組織、またはその所属部を指す語 【社内説明】
体育会系 規律や上下関係を重んじる組織文化を指して使われる口語表現 【社内説明】
体育会本部 各部を横断して運営・調整を担う学生組織。名称や権限は大学ごとに異なります 【社内説明】
学生団体 大学公認・非公認を問わず学生が運営する組織全般 【社内説明】
学連 特定競技の大学横断組織で、リーグ戦・大会の運営を担います 【日程設計】
学生スポーツ団体 大学スポーツ全体の振興・統括に関わる団体 【社内説明】
兼部 複数の部に同時に所属して活動する学生の状態 【書類・面接】
新歓 新入生を勧誘し入部を促す時期・活動の総称 【日程設計】

「体育会」は組織・制度上の実体を指し、「体育会系」は組織文化を指す口語表現です。学生スポーツ団体としては、一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)が2019年3月1日に設立されています(出典:スポーツ庁)。加盟大学・団体数は公表値を特定できず扱いません。

2.役職・役割の用語(10語)

用語 意味 採用実務で使う場面
主将 チームを統括し対外的な代表も務めることが多い役職。担当範囲はチームで異なります 【書類・面接】
副将 主将を補佐し、不在時の代行や特定の役割を分担する立場 【書類・面接】
主務 部の事務・会計・渉外など運営面を担う役職。競技面の主将と役割を分ける形が見られます 【書類・面接】
マネージャー 練習運営や選手のサポート、対外調整を担う役割 【書類・面接】
トレーナー 選手のコンディション管理・ケガ予防を支える役割 【書類・面接】
アナリスト 対戦相手・自チームのデータ分析で戦術立案を支援 【書類・面接】
部長 部の責任者として大学の教職員が務める場合がある役職。企業の部長職とは別物です 【社内説明】
監督 チームの方針・戦術を統括する立場。学生が務めるチームもあります 【書類・面接】
コーチ 特定の技術・戦術領域を専門的に指導する立場 【書類・面接】
キャプテンシー 役職の有無に関わらず発揮されるリーダーシップの資質 【書類・面接】

「部長」は大学の教職員が務める役職として使われる場合があり、企業の部長職とは意味が異なります。同じ役職名でも担っている範囲はチームによって幅があります。運営元メディアの取材記事では、ある大学の体育会本部が3年生の幹部候補向けに「リーダーズキャンプ」を開催し、主将・主務の悩みを共有する場を設けているという記述がありました(出典:取材記事)。同じ記事には、形骸化していたオンラインの主務会議を対面開催に切り替えたという記述もあります。別の取材記事では、ある大学の準硬式野球部で監督や主務も学生が担い、金銭管理を含めて学生主体で運営しているという記述がありました(出典:取材記事)。いずれも個別の取材に基づく事例であり、全体の傾向を示すものではありません。面接では役職名ではなく、実際に担当した業務を確認することをおすすめします。

3.大会・シーズンの用語(8語)

用語 意味 採用実務で使う場面
リーグ戦 シーズンを通し総当たり形式などで順位を争う公式戦 【日程設計】
インカレ 全日本学生選手権の通称。競技によって開催時期・位置づけが異なります 【日程設計】
全国大会 全国規模で実施される大会全般(インカレを含む場合も) 【日程設計】
公式戦 学連・連盟が主催し記録・順位に反映される試合 【日程設計】
遠征 大会・練習試合のため学外・他地域へ移動すること 【日程設計】
部活動引退時期 学生が競技活動を退き就職活動等へ軸足を移す時期 【日程設計】
世代交代 上級生から下級生へ中心的な役割が引き継がれる過程 【日程設計】
主将交代 主将の役職が新学年の学生に引き継がれるタイミング 【日程設計】

この分類で採用設計に最も影響するのが「部活動引退時期」です。運営元メディアの取材記事には、男子ラクロスで7〜10月のリーグ戦を経て11月に引退したという記述(出典:取材記事)、ボート(漕艇)で4年生が9月のインカレを区切りに引退するという記述(出典:取材記事)、卓球で4年生が5月の春季リーグを最後に引退するという記述(出典:取材記事)がありました。

これらは個別の取材記事の記述であり、競技全体の標準を示すものではありません。ただし3例だけでも5月から11月まで半年以上の開きがあり、同じ競技でもチームによって時期が異なる場合があります。全競技に共通する引退月を前提にした接点設計は避け、接触の機会を年間で複数回に分散させておくほうが安全です。

4.進学ルートと就職支援の用語(5語)

用語 意味 採用実務で使う場面
スポーツ推薦 競技実績を選考要素に含む入試・入学ルートの総称 【母集団形成】
スポーツ推薦入試 学校推薦型選抜などの枠組みで実施される入試制度 【母集団形成】
特別選考ルート 企業が体育会学生向けに設ける選考経路(公的な制度名ではない) 【書類・面接】
体育会就職支援室 大学が体育会所属学生向けに設ける就職支援の専門窓口 【母集団形成】
体育会就活解禁 体育会学生の就職活動が本格化する時期を指す口語表現 【日程設計】

スポーツ推薦入試は学校推薦型選抜などの枠組みで実施され、名称・要件は文部科学省の大学入学者選抜実施要項に基づきます(出典:文部科学省)。「体育会就活解禁」も、政府が卒業年度ごとに公表する日程ルール(広報3月1日・選考6月1日・内定10月1日以降)が骨格です(出典:内閣官房)。年度ごとの要請のため対象年度の確認が必要です。特別選考ルートは企業側の呼称で公的な制度名ではありません。

5.採用手法・チャネルの用語(8語)

用語 意味 採用実務で使う場面
部活動協賛 部・学生団体を金銭・物品面で支援し認知形成につなげる手法 【母集団形成】
OB会 卒業生で構成される親睦・交流目的の組織 【母集団形成】
OBOG会 男女双方の卒業生を含む形で構成される親睦組織の表記 【母集団形成】
体育会説明会 体育会所属学生を主な対象として実施する採用イベント 【母集団形成】
体育会特化型エージェント 体育会学生の紹介を専門に扱う人材紹介事業者を指す語 【母集団形成】
体育会求人サイト 体育会学生の応募を主な対象として運営される求人媒体 【母集団形成】
アスリートブランディング 競技実績・活動を通じ自社の認知・イメージを高める取り組み 【社内説明】
スポーツ枠採用 競技実績や継続を選考・雇用の条件に組み込む採用区分 【雇用形態・条件】

この分類の語は、社内で名前だけが独り歩きしやすい点に注意が必要です。たとえば「協賛」と一言で言っても、金銭的な支援を指すのか、イベントへの協力や情報発信を指すのかは、社内の想定によって変わります。人材紹介については、職業安定法に基づく許可を受けた事業者が行うものとされています(出典:厚生労働省)。

なお本記事は用語の整理に絞っており、手法どうしの比較は別記事に譲ります。手法の比較は体育会採用の手法別比較表、進め方の全体像は体育会学生の採用方法5選をご覧ください。

6.競技継続と雇用形態の用語(7語)

用語 意味 採用実務で使う場面
実業団 企業に所属しながら競技活動を続ける選手を抱える組織 【雇用形態・条件】
実業団選考 実業団チームへの所属を前提とした選考プロセス 【雇用形態・条件】
企業スポーツ 企業が自社チームの保有等を通じ競技を支援する取り組み全般 【社内説明】
アスリート採用 競技実績・継続を前提とした採用活動の枠組みを指す語 【母集団形成】
アスリート雇用 競技活動との両立を前提にした入社後の勤務形態を指す語 【雇用形態・条件】
パラアスリート採用 障がいのあるアスリートを対象とした採用活動を指す語 【母集団形成】
現役続行 入社後も競技活動を続けながら勤務することを指す語 【雇用形態・条件】

「アスリート採用」と「アスリート雇用」は使われ方が重なる場合がありますが、一般には前者が採用活動の枠組み、後者が競技との両立を前提にした入社後の勤務形態を指す、という使い分けをされる場合があります。公的に定義が統一された語ではないため、社外とやり取りする際はどちらの意味で使っているかを先に確認しておくと、認識のずれを防ぎやすくなります。

競技継続を前提とする採用では、練習・大会日程と勤務時間の調整、遠征時の勤怠や費用の扱いなど、通常の新卒採用にはない条件設計が必要になります。口頭の合意にとどめず、労働条件として文書で明確にしておくことが重要です。

7.キャリアと定着の用語(4語)

用語 意味 採用実務で使う場面
デュアルキャリア 競技者としてのキャリアと人生のキャリアの二重性を捉える考え方 【入社後・定着】
セカンドキャリア 競技引退後に歩む職業人生・キャリアを指す語 【入社後・定着】
キャリアトランジション 競技者から職業人へなど、キャリアの節目の移行を指す語 【入社後・定着】
卒部 部を離れて籍を外れること。競技をやめる「引退」とは区別して使われる場合があります 【入社後・定着】

デュアルキャリアは、日本スポーツ振興センターのAthlete Pathwayで「人生や生涯のひとつの軸を『キャリア』と捉え、そこにアスリートとしての『キャリア』というもうひとつの軸を加えた『二重性』を示す概念」と説明されています(出典:日本スポーツ振興センター)。スポーツ庁も「スポーツキャリアサポート戦略」として引退後のキャリア支援に取り組んでいます(出典:スポーツ庁)。

混同しやすい6組の用語の違い

組 違いの要点
体育会/体育会系 前者は組織の実体、後者は組織文化を指す口語表現です。
主将/主務 主将はチーム全体の代表、主務は事務・運営面の担当です。
学連/学生スポーツ団体 前者は特定競技の組織、後者は大学スポーツ全体を対象とする広い語です。
スポーツ推薦/特別選考ルート 前者は大学入試の枠組み、後者は企業側の選考経路です。
アスリート採用/アスリート雇用 前者は採用活動の枠組み、後者は入社後の勤務形態を指すことが多い語です。
デュアルキャリア/セカンドキャリア 前者は競技と並行するキャリア、後者は引退後のキャリアを指します。

用語の取り違えは学生や大学との認識のずれにつながる場合があるため、社内で使う前に整理しておくことをおすすめします。

用語を社内で使うときに注意したい3点

  • 役職名から人物像を推測しない:主将経験自体が能力の証明にはならず、担った役割の中身を面接で確認します。関連:体育会系人材にはどんな特徴があるか
  • 用語の定義を社内で揃えてから使う:同じ「協賛」「説明会」でも想定内容が違うと、予算・工数の合意が取りづらくなります。
  • 日程に関わる用語は対象年度を確認する:日程ルールも大会日程も年度ごとに更新されるため、前年の資料を流用しません。関連:体育会採用カレンダー

まとめ:自社が使う分類から読み、面接では役職名ではなく役割の中身を確認する

編集部が体育会採用の用語から50語を選び、7分類で整理したのが本記事です。すべてを覚える必要はなく、自社が使う採用チャネルに関わる分類から読み、辞書として参照する使い方をおすすめします。用語の意味は大学・競技・チームで運用が異なる場合があるため、面接では役職名だけで判断せず、本人が担った役割の中身を確認することが重要です。

自社の体育会採用の進め方について具体的に相談したい場合は、採用のご相談からお気軽にお問い合わせください。新卒体育会学生の採用支援は現在もご相談いただけます。

参考文献