次年度の採用計画を立てるとき、「自社の課題は他社と比べて特殊なのか、それとも多くの企業に共通するのか」を説明しなければならない場面があります。課題の上位だけを紹介する記事は多い一方、全項目の順位と前年差に加えて規模別・業種別の違いまで読める形にしたものは、編集部が確認した範囲では見つかりませんでした。
そこで本記事では、公表調査であるマイナビ「2027年卒企業新卒採用活動調査」の「採用活動における現時点での問題点」を整理します。先に3点の前提をお伝えします。
- 数値は公表調査に基づくものだけです。編集部の独自調査や推計は含みません。
- 体育会学生に限った公表データは確認できませんでした。本記事の数値はすべて新卒採用全体の値で、体育会学生に限った値ではありません。
- 複数回答の結果で、数値は業種や規模の優劣を示すものではありません。確認日は2026年11月3日です。
結論:採用課題ランキング1位は「母集団の不足」66.9%、上位5項目のうち4項目は接触・応募段階の課題
調査で最も多かったのは「母集団(エントリー数)の不足」で66.9%です。上位5項目は次のとおりです(複数回答、新卒採用全体の値)。
- 母集団(エントリー数)の不足:66.9%
- 選考受験者数の不足:44.9%
- マンパワー不足(他業務との兼ね合い含む):31.6%
- 合同企業説明会での集客不足:31.3%
- 企業の知名度が低い:28.9%
上位5項目のうち4項目は、エントリーや選考受験、説明会の集客、知名度といった接触・応募段階の課題です。残る1項目の「マンパワー不足」は工程ではなく社内体制の課題です。選考後の「内々定辞退の増加」は16.1%で、全体では相対的に低い水準です。ただし、3位以下の顔ぶれは規模によって入れ替わります(後述)。
出典:マイナビ「2027年卒企業新卒採用活動調査」資料編(以下、表の数値は同じ)
調査の概要と、ランキングとして読むときの3つの注意
数値を比較に使うには、調査の定義と母数を確認しておく必要があります。概要は次のとおりです。
| 項目 |
内容 |
| 調査名 |
2027年卒企業新卒採用活動調査 |
| 実施 |
マイナビ キャリアリサーチLab |
| 調査期間 |
2026年6月3日〜20日 |
| 方法 |
HUMAN CAPITALサポネット掲載のWEBフォーム |
| 有効回答 |
3,590社 |
| 本設問の回答 |
資料編の集計表で2,751社 |
| 公開 |
2026年7月22日 |
注意1:複数回答なので合計は100%にならない
各項目は「その課題を挙げた企業の割合」です。順位は挙げた企業の割合の順で、項目の合計は100%になりません。
注意2:回答企業は全企業の縮図とは限らない
回答は調査元の情報サイトを通じて集まったものです。そのため、回答企業の構成が全企業の分布と異なる可能性があります。
注意3:時点は6月の回答
調査期間は6月で、選考が進んでいる時期の回答です。年間を通した課題とは異なる場合があります。
採用課題ランキング(全項目)と前年との差
上位15位までを表にまとめました。差は27年卒から26年卒を引いたポイント差です。
| 順位 |
項目 |
27年卒 |
26年卒 |
差 |
| 1 |
母集団(エントリー数)の不足 |
66.9% |
68.8% |
-1.9 |
| 2 |
選考受験者数の不足 |
44.9% |
51.1% |
-6.2 |
| 3 |
マンパワー不足 |
31.6% |
33.8% |
-2.2 |
| 4 |
合同企業説明会での集客不足 |
31.3% |
30.4% |
+0.9 |
| 5 |
企業の知名度が低い |
28.9% |
28.7% |
+0.2 |
| 6 |
ターゲット層の学生からの応募が少ない |
25.0% |
25.6% |
-0.6 |
| 7 |
説明会参加者からのエントリーが少ない |
21.0% |
21.4% |
-0.4 |
| 8 |
受験学生の質の低下 |
18.0% |
18.9% |
-0.9 |
| 9 |
内々定辞退の増加 |
16.1% |
16.8% |
-0.7 |
| 10 |
個別企業セミナーの出席率低下 |
15.3% |
16.8% |
-1.5 |
| 11 |
選考辞退の増加 |
14.0% |
15.5% |
-1.5 |
| 12 |
採用予算不足 |
10.6% |
11.4% |
-0.8 |
| 13 |
同業他社・採用競合の情報不足 |
10.0% |
11.1% |
-1.1 |
| 14 |
学生と対面でのコミュニケーション機会を十分に持てていない |
9.0% |
9.1% |
-0.1 |
| 15 |
28年卒のインターンシップ準備への悪影響(時期の被り) |
8.0% |
7.4% |
+0.6 |
16位以下は次のとおりです。
- 7.9%:Uターン学生の採用難(前年6.9%)、採用協力社員や面接官の教育・研修不足(前年6.1%)
- 7.1%:採用スケジュールが遅れたこと
- 5.3%:採用計画見直しが必要なこと
- 4.8%:選考基準見直しが必要なこと、新卒採用活動に不慣れ・ツールが整っていない
- 4.3%:経営陣の関心が低い、理解が得られない
- 3.7%:選考(面接)のWEB実施に対応できていない
- 2.9%:入社前研修の準備不足、企業説明会のWEB開催に対応できていない
- 1.4%:個別企業セミナーの内容が不評
なお「その他」(2.2%)と「特に問題はない」(2.7%)は順位に含めていません。
前年から下がった課題
最も下がったのは「選考受験者数の不足」で、51.1%から44.9%へ6.2ポイント低下しました。1位の「母集団の不足」も68.8%から66.9%へ下がり、調査元は26年卒同様に微減と記述しています。ただし、低下の理由は調査では示されていません。
前年から上がった課題
前年より上がった主な項目は、採用協力社員や面接官の教育・研修不足(+1.8)、Uターン学生の採用難(+1.0)、合同企業説明会での集客不足(+0.9)、28年卒のインターンシップ準備との時期の被り(+0.6)です。いずれも2ポイント未満の小幅な動きで、1年分の差だけで傾向が変わったと判断するのは避けたほうがよいでしょう。
調査元は、合同企業説明会での集客不足、採用予算不足、時期の被りを「増加傾向」と解説しています。ただし採用予算不足は今年の単年では11.4%から10.6%へ0.8ポイント下がっており、増加傾向という記述は複数年の推移を指すものと読めます。単年の前年差と混同しないようにご注意ください。
企業規模別に見ると、3位以下の課題が入れ替わる
規模によって高い項目が異なり、300人未満では知名度、300人以上では説明会の集客や辞退が目立ちます。主要項目の規模別の値は次のとおりです。
| 項目 |
300人未満 |
300〜999人 |
1,000人以上 |
| 母集団の不足 |
66.7% |
68.5% |
65.2% |
| 選考受験者数の不足 |
44.2% |
47.4% |
44.7% |
| マンパワー不足 |
29.6% |
34.7% |
36.8% |
| 合同企業説明会での集客不足 |
26.7% |
37.3% |
46.3% |
| 企業の知名度が低い |
30.6% |
26.7% |
23.2% |
| 受験学生の質の低下 |
15.2% |
23.3% |
24.0% |
| 内々定辞退の増加 |
11.7% |
24.5% |
25.5% |
| 選考辞退の増加 |
10.6% |
21.0% |
19.9% |
| 28年卒インターンの時期被り |
4.6% |
13.4% |
16.9% |
出典:マイナビ「2027年卒企業新卒採用活動調査」資料編(回答数は300人未満1,902社、300〜999人596社、1,000人以上253社)
1,000人以上では、合同企業説明会での集客不足(46.3%)、内々定辞退の増加(25.5%)、時期の被り(16.9%)が高くなっています。300〜999人でも内々定辞退の増加(24.5%)と選考辞退の増加(21.0%)は1,000人以上と同程度で、辞退の課題は300人以上の層で共通して高い結果です。一方、300人未満では企業の知名度が低い(30.6%)が3つの規模の中で最も高く、選考辞退の増加(10.6%)や内々定辞退の増加(11.7%)は低めです。ただし母集団の不足は3つの規模で大きな差がなく(65.2〜68.5%)、差の理由も調査では示されていません。
上場・非上場でも差があり、選考辞退の増加は上場27.4%・非上場12.9%、内々定辞退の増加は24.3%・15.5%、受験学生の質の低下は27.2%・17.3%でした(回答数は上場184社、非上場2,567社)。これらの差の理由は、調査では示されていません。
業種別に見ると、突出する課題が違う
業種ごとに高い項目が異なり、自社の業種の行を見ると位置づけを確認しやすくなります。主要項目を示します(かっこ内は回答数)。
| 項目 |
建設(395) |
製造(666) |
商社(341) |
小売(102) |
金融(116) |
マスコミ(65) |
ソフト・通信(340) |
サービス・インフラ(605) |
官公庁等(121) |
| 母集団の不足 |
74.9 |
66.2 |
66.9 |
71.6 |
53.4 |
49.2 |
56.5 |
63.3 |
60.3 |
| 選考受験者数の不足 |
42.5 |
45.2 |
46.6 |
53.9 |
43.1 |
40.0 |
40.0 |
42.6 |
38.0 |
| 合同説明会での集客不足 |
31.6 |
30.5 |
35.8 |
43.1 |
35.3 |
7.7 |
22.6 |
26.4 |
18.2 |
| マンパワー不足 |
27.3 |
36.0 |
27.6 |
34.3 |
44.0 |
41.5 |
29.1 |
31.2 |
33.9 |
| 企業の知名度が低い |
35.9 |
40.5 |
24.6 |
18.6 |
17.2 |
12.3 |
36.2 |
26.1 |
19.0 |
| 受験学生の質の低下 |
12.7 |
20.1 |
18.8 |
20.6 |
25.9 |
29.2 |
30.6 |
17.2 |
22.3 |
| 採用予算不足 |
9.9 |
11.1 |
7.0 |
17.6 |
13.8 |
10.8 |
11.8 |
9.3 |
10.7 |
| 28年卒インターンの時期被り |
4.1 |
8.7 |
5.6 |
16.7 |
5.2 |
6.2 |
7.6 |
7.6 |
2.5 |
単位は%。出典:マイナビ「2027年卒企業新卒採用活動調査」資料編。製造は建設を除いて集計されています。
業種ごとの特徴を、調査の数値の範囲で整理します。理由は調査では示されていないため、断定はしません。
- 建設:母集団の不足が74.9%で、9業種のなかで最も高い値です。
- 製造:企業の知名度が低いが40.5%で最も高くなっています。
- 小売(回答102社):合同説明会での集客不足43.1%、選考受験者数の不足53.9%、採用予算不足17.6%、時期の被り16.7%が他業種より高い値です。
- 金融:マンパワー不足が44.0%で最も高く、母集団の不足は53.4%と低めです。
- ソフトウエア・通信:受験学生の質の低下が30.6%と高い値です。
- マスコミ:回答が65社と少なめで、合同説明会での集客不足が7.7%など他業種と傾向が異なります。参考程度にとどめるのが妥当です。
課題別に見る、体育会採用で検討できる打ち手(編集部の整理)
調査の課題を採用の工程に割り当てると、体育会採用では「接点の時期と経路」「選考前の相互理解」「社内の体制」の3つで打ち手を検討できます。以下は編集部の整理であり、調査が打ち手の効果を示したものではありません。
| 課題 |
体育会採用で検討できる打ち手 |
関連 |
| 母集団の不足・知名度 |
競技日程を踏まえた接点時期の設計、OB/OG社員からの紹介など説明会以外の経路 |
— |
| 合同説明会での集客不足 |
体育会学生向け説明会の時期・告知・形式の見直し |
説明会の集客 |
| 選考受験者数の不足・選考辞退 |
選考前の職場見学など、仕事内容を具体的に知ってもらう場 |
— |
| 内々定辞退 |
引退・大会シーズンを踏まえたフォロー、入社前の情報開示 |
内定辞退防止チェックリスト |
| マンパワー不足 |
外部に任せる工程と社内に残す工程の線引き |
— |
| 時期の被り |
次年度インターンシップの開催時期と、今年度の選考日程の重なりの確認 |
— |
体育会学生といっても、競技や部の運営によって大会・リーグ戦の時期や練習の予定は異なる場合があります。一括りにせず、接点を持ちたい部の日程を個別に確認してから時期を決める前提で考えます。
表の打ち手のうち、どの課題から着手するかは、次の章の手順で自社の課題を点検してから決めるのが現実的です。
運営元メディアの取材記事から、関連する例を3つ紹介します。いずれも個別企業の例で、他社で同じ結果になるとは限りません。
- 経理・AI SaaS企業(2025年12月18日取材)には、体育会学生向けに夏は勉強会、冬は説明会を行う2段階のアプローチで関係を深めている例があります(取材記事)。同記事では、体育会学生は部活動に打ち込むあまり就活の相談相手が少なく孤立しがちだと感じている、という声もあります。
- 建設(専門工事)企業(2026年2月9日取材)には、現場見学を実施して仕事のイメージを掴んでもらってから面接に進める例があります(取材記事)。
- IT企業(2026年1月27日取材)には、入社前に厳しさも含めて伝えてギャップをなくし、離職率の低さにつなげているという例があります(取材記事)。内々定辞退や入社後ギャップを考える際の一例です。
自社版の「採用課題ランキング」を作る3ステップ
公表ランキングは比較の物差しで、自社の優先順位は同じ項目で自社を点検して決めます。手順は次の3つです。
- 自社を点検する:調査と同じ項目で、採用担当・面接官・現場がそれぞれ「当てはまる」に印を付けます(複数回答)。
- 公表値と並べる:自社の規模・業種の行の値と並べ、公表値より目立って高い項目を拾います。調査の母集団と自社の条件は異なるため、差は桁感の確認にとどめます。
- 工程に割り当てる:拾った項目を工程(接触→応募→選考→内定→入社)に割り当て、工程ごとに打ち手を1つと記録する指標を決めます。指標の置き方は採用KPIの業界平均まとめ、課題別の確認項目は課題別チェックリストが参考になります。
記入例です。架空の例で、数値は入れていません。
| 項目 |
採用担当 |
面接官 |
現場 |
工程 |
| 母集団の不足 |
○ |
○ |
|
接触 |
| 内々定辞退の増加 |
○ |
|
○ |
内定 |
| 面接官の教育・研修不足 |
|
○ |
○ |
選考 |
まとめ:ランキングは“自社の課題が特殊かどうか”を確かめる物差しとして使う
要点は次の3つです。
- 1位は「母集団の不足」66.9%で、上位は接触・応募段階の課題に集中しています。ただし規模や業種で高い項目は異なります。
- 数値は複数回答の新卒採用全体の値で、体育会学生に限った値ではなく、差の理由も調査では示されていません。
- 公表値は桁感の確認に使い、優先順位は自社の点検と工程ごとの打ち手で決めます。
体育会採用で自社の課題の整理や、工程ごとの打ち手の検討についてご相談がある場合は、採用のご相談からお問い合わせください。
参考にした公開データ
(確認日:2026年11月3日)