次年度の採用計画を立てるとき、「何人に応募してもらえば何人採れるのか」「自社の歩留まりは業界と比べてどうか」を説明しなければならない場面があります。「業界平均」を探しても、KPIの設計方法を解説する記事は多い一方で、編集部が確認した範囲では、業種別の比較値を出典つきで並べたものは見つかりませんでした。
そこで本記事では、公表調査であるマイナビ「2026年卒企業新卒内定状況調査」から、業種別の数値を集めて整理します。先に3点の前提をお伝えします。
- 数値は公表調査に基づくものだけです。編集部の独自調査や推計は含みません。
- 体育会学生に限った公表データは確認できませんでした。本記事の数値はすべて新卒採用全体の値で、体育会学生に限った値ではありません。
- 数値は業種の優劣を示すものではありません。確認日は2026年10月27日です。
結論:体育会採用KPIの業界平均は、新卒全体の公表データを“比較の物差し”として使う
体育会学生に限ったKPIの公表データは確認できず、使えるのは新卒採用全体の業種別データです。調査の要点は次の4つです(いずれも新卒採用全体の値です)。
- 内定者1人あたりの応募は48.3人、1次面接受験は6.0人です。
- 採用充足率は69.7%です。
- 平均選考回数は2.1回、一次選考から内々定までは平均24.1日です。
- 内々定辞退率が3割以上の企業は59.4%です。
これらは自社の数値が大きく外れていないかを確かめる「桁感の確認」には使えますが、そのまま目標値にするものではありません。以下、定義と注意点を確認したうえで、指標ごとに業種別の値を見ていきます。
データの出所と、KPIとして読むときの3つの注意
KPIの比較値として使うには、1つの調査に絞って定義と母数をそろえて読むことが前提になります。調査の概要は次のとおりです。
| 項目 |
内容 |
| 調査名 |
2026年卒企業新卒内定状況調査 |
| 実施 |
マイナビ キャリアリサーチLab |
| 調査期間 |
2025年9月5日〜10月3日 |
| 回答数 |
1,810社 |
| 集計 |
業種構成を経済センサスに合わせたウエイトバック集計 |
| 業種区分 |
建設/製造/商社/小売/金融/マスコミ/ソフトウエア・通信/サービス・インフラ/官公庁・公社・団体の9分類(製造は建設を除く) |
読むときの注意は3つあります。
注意1:「内定者1人あたり」は入社者1人あたりではない
「内定者1人あたりの応募数」は、内定を出した人数を分母にした値で、入社した人数を分母にしたものではありません。内定後に辞退があるため、入社ベースの目標に使う場合は辞退分を見込む必要があります。
注意2:段階ごとに集計対象の企業が違う
歩留まりの各段階は、その段階の人数と内定者数の両方に回答した企業だけで集計されており、回答数は370〜482社と段階ごとに異なります。集計対象の企業が段階ごとに違うため、段階どうしの比率を計算しても概算にとどまります。
注意3:回答数が少ない業種は参考値
調査元は、回答数が30以下のセルを参考値として扱うよう注記しています。業種によっては回答が少ないところ(マスコミなど)があり、その値は桁感の確認にとどめるのが妥当です。
内定者1人あたりの歩留まり平均(業種別)
全体では内定者1人あたり応募48.3人・説明会参加14.6人・1次面接6.0人で、業種によって大きな開きがあります。まず全体の値です。
| 指標(内定者1人あたり) |
26年卒 |
25年卒 |
| インターンシップ・仕事体験参加 |
5.7人 |
6.2人 |
| 応募(エントリー) |
48.3人 |
53.7人 |
| ES提出 |
11.9人 |
10.0人 |
| 説明会参加 |
14.6人 |
13.4人 |
| 1次面接受験 |
6.0人 |
5.5人 |
上場・非上場で分けると、応募は上場43.5人、非上場50.9人です。
業種別では次のとおりです(26年卒、内定者1人あたりの人数。新卒採用全体の値で、体育会学生に限った値ではありません)。
| 業種 |
応募 |
説明会参加 |
1次面接 |
| 建設 |
25.7人 |
8.7人 |
3.9人 |
| 製造 |
58.2人 |
14.1人 |
6.2人 |
| 商社 |
39.5人 |
12.2人 |
5.3人 |
| 小売 |
38.8人 |
6.4人 |
4.7人 |
| 金融 |
23.6人 |
11.8人 |
4.7人 |
| マスコミ |
193.1人 |
73.5人 |
12.3人 |
| ソフトウエア・通信 |
60.0人 |
21.1人 |
7.9人 |
| サービス・インフラ |
44.1人 |
11.4人 |
5.7人 |
| 官公庁・公社・団体 |
16.2人 |
8.6人 |
3.6人 |
調査元は、回答数が少ないセルを参考値として網掛け表示しています。マスコミ(回答21〜22社)や官公庁・公社・団体などは回答数が少ないため、この表と選考日数の表の値も桁感の確認にとどめてください。
数値が小さいから効率が良い、とは言えません。調査は業種間の差の理由を示していないため、自社と同じ業種の値は「桁感」の確認にとどめます。
なお、調査の「応募」は就職情報サイトや自社HPからのエントリーを指します。エントリーの受け付け方は企業ごとに違いがあるため、自社と比べるときは、1次面接受験数のように選考に入った段階の値から見るほうが比べやすい場合があります。
採用充足率の業界平均:全体69.7%、業種で51.8%〜96.9%
採用充足率(内定者数÷募集人数)は全体で69.7%です。2026年卒まで4年連続で低下しており、業種別では小売の51.8%から金融の96.9%まで幅があります。推移は次のとおりです。
- 22年卒:83.6%
- 23年卒:81.3%
- 24年卒:75.8%
- 25年卒:70.0%
- 26年卒:69.7%
業種別の値は次のとおりです(新卒採用全体の値です)。
| 業種 |
26年卒 |
25年卒 |
| 建設 |
77.8% |
66.4% |
| 製造 |
69.4% |
78.7% |
| 商社 |
79.8% |
69.2% |
| 小売 |
51.8% |
61.7% |
| 金融 |
96.9% |
79.1% |
| マスコミ |
85.5%(回答21社・参考値) |
95.3% |
| ソフトウエア・通信 |
63.1% |
83.6% |
| サービス・インフラ |
69.2% |
52.5% |
| 官公庁・公社・団体 |
64.8%(回答30社・参考値) |
67.3% |
業種の値は年によって大きく動きます。たとえばソフトウエア・通信は、25年卒の83.6%から26年卒の63.1%に下がっています。単年の業種平均を固定の目標にするのは避けたほうがよいでしょう。規模別の値も公表されていますが、調査元が参考値としているため、数値は載せていません。
充足率は母数である募集人数の置き方で変わるため、自社では募集人数の定義をそろえて年次で比較します。
選考回数と内々定までの日数の平均
平均選考回数は2.1回、一次選考から内々定までの平均は24.1日です。上場企業は平均2.7回・32.8日と、全体より長くなっています(非上場は2.1回・23.3日)。選考回数の分布は次のとおりです。
| 選考回数 |
割合 |
| 1回 |
20.0% |
| 2回 |
51.6% |
| 3回 |
23.1% |
| 4回 |
4.4% |
| 5回 |
0.7% |
| 6回以上 |
0.2% |
業種別の平均は次のとおりです(新卒採用全体の値です)。
| 業種 |
平均選考回数 |
一次選考から内々定までの平均日数 |
| 建設 |
1.8回 |
17.2日 |
| 製造 |
2.2回 |
26.4日 |
| 商社 |
2.3回 |
25.5日 |
| 小売 |
2.2回 |
25.5日 |
| 金融 |
2.5回 |
26.4日 |
| マスコミ |
2.9回 |
49.4日 |
| ソフトウエア・通信 |
2.2回 |
22.6日 |
| サービス・インフラ |
2.1回 |
24.5日 |
| 官公庁・公社・団体 |
2.2回 |
31.2日 |
ここで注意したいのは、数え方の違いです。運営元メディアの取材記事(マーケティング・ITベンチャー、2025年9月19日取材)には、内定までにインターンや面接などで7〜8回以上の接点を持っている例があります(取材記事)。調査の「平均選考回数2.1回」は選考の回数であり、面談やインターンを含む接点の数とは数え方が異なります。これは個別企業の例で、一般的な水準ではありません。
平均より多いから悪い、とは限りません。何を数えるかを社内で決め、その定義のまま年次で比べます。
選考途中・内々定後の辞退の状況
内々定辞退率が3割以上の企業は59.4%、選考途中の辞退率が3割以上の企業は36.3%で、辞退分を見込んだ目標設定にしておくと安全です。
内々定辞退率が3割以上の企業は59.4%(25年卒は59.0%)、辞退者なしの企業は23.8%です。業種別の「3割以上の企業の割合」は次のとおりです。
| 業種 |
内々定辞退率3割以上の企業の割合 |
| 建設 |
62.1% |
| 製造 |
60.3% |
| 商社 |
59.0% |
| 小売 |
68.8% |
| 金融 |
72.0% |
| マスコミ |
50.0%(回答22社・参考値) |
| ソフトウエア・通信 |
54.2% |
| サービス・インフラ |
54.2% |
| 官公庁・公社・団体 |
52.1% |
選考途中の辞退率が3割以上の企業は36.3%(25年卒は38.6%)、辞退者なしの企業は26.0%です。
これらは「辞退率が3割以上の企業の割合」であり、業種の平均辞退率ではありません。辞退率そのものの推移や理由は、内定辞退率のデータ解説で整理しています。
公表平均から自社のKPIを逆算する計算例
公表平均は自社実績がないときの仮置きに使い、実績がたまったら自社の値に置き換えます。以下は編集部が公表平均を当てはめた計算例で、推奨値ではありません。
内定5人を目標にした場合、全体平均を当てはめると次のようになります(四捨五入した概数)。
- 応募:約240人(48.3人×5=241.5人)
- 説明会参加:約73人(14.6人×5)
- 1次面接:約30人(6.0人×5)
業種平均で置き換えると数字は変わります。たとえば建設の値なら、応募は約130人(25.7人×5)、1次面接は約20人(3.9人×5)です。
入社人数から逆算する場合は、自社の過去の辞退率で内定数を上積みします。本調査で公表されているのは「辞退率が何割の企業がどれだけあるか」という分布で、平均の辞退率ではありません。具体的な上積み率は自社実績で置いてください。
体育会チャネルで読み替えるときは、体育会限定のデータがないことが前提になります。協賛、OB/OG、スカウトなど、応募数では測りにくい経路もあります。そうした経路は公表平均の「応募」段階とそのまま比べず、チャネルごとに自社実績を分けて記録するのが基本です。数字の置き方の詳細は、採用KPI設計の基本で整理しています。
応募経路を自社の採用活動の中でどう位置づけるかの例として、運営元メディアの取材記事(旅行・IT企業、2026年6月8日取材)に、自社サイト起点の採用導線を構築して採用単価を改善した例があります(取材記事)。これは個別企業の例で、他社で同じ結果になるとは限りません。なお、本記事の調査には採用単価の業種別の値は含まれていません。採用コストの公表状況は、採用コストの業界別データは存在するかで整理しています。
企業が振り返りで見ている指標
公表調査では、振り返りで「学生の内定辞退理由」(44.2%)、「採用スケジュール」(41.9%)、「選考歩留まり(遷移率)」(40.9%)を見る企業が多い結果でした。複数回答の結果は次のとおりです。
- 学生の内定辞退理由:44.2%
- 採用スケジュール:41.9%
- 選考歩留まり(遷移率):40.9%
- 入社数:35.9%
- 応募経路:35.9%
- 内定受諾数:35.2%
- 採用費:31.9%
- 採用充足率:26.7%
- 振り返りを行っていない:5.2%
同じ調査では、新卒採用担当者が「全員が他業務と兼任」の企業が77.8%、専任担当者は平均1.1人という結果もあります。限られた人数で運用する場合は、上の項目のうち自社で毎年同じ定義で記録できるものから始めるのも一つの方法です。ただし、兼任の状況と振り返りの内容の関係は、調査では示されていません。
体育会採用の時期ごとの動きは、体育会採用カレンダーで確認できます。
まとめ:業界平均は“桁感の確認”に使い、目標は自社の実績で置く
本記事の要点は次の3つです。
- 体育会学生に限った公表データは確認できず、新卒採用全体の業種別データを物差しにします。
- 内定者1人あたりの歩留まり、充足率、選考日数、辞退は、定義と母数をそろえて読む必要があります。
- 公表平均は仮置きとして使い、自社の実績に置き換えていきます。
体育会採用のKPI設計や、チャネルごとの目標値の置き方についてご相談がある場合は、採用のご相談からお問い合わせください。
参考にした公開データ
(確認日:2026年10月27日)