体育会採用の母集団をどれくらいに見積もればよいのかを考えるとき、競技別の部員数を調べようとして、競技をまたいで比べられる表が見つからずに手が止まることがあります。本記事は編集部が各競技の統括団体の公表資料を1件ずつ確認し、公表状況を一覧にしたものであり、独自の調査・推計は含みません。確認日は2026年9月26日です。

結論:競技を横断して部員数を並べられる公開データは限られ、比較は「公表している競技」に絞るのが実務的

大学カテゴリの部員数を実数で公表している競技は限られており、競技をまたいで同じ条件でランキングをつくることは、現時点では難しいのが実情です。実務では、公表値がある競技だけを実数として扱い、それ以外は人数ではなく傾向として扱う二段構えが現実的です。以下、競技別の公表状況の一覧、実数化が難しい理由、採用実務への落とし込みの順に整理します。

この記事の調べ方と、編集部が採用した4つの選定基準

本記事の数値は、すべて各競技の統括団体が自ら公表している資料から取っています。確認にあたって採用した基準は次の4点です。

  1. 数値は各競技の統括団体(連盟・協会)が自ら公表しているものに限り、人材サービス各社が独自に示す推計値は使用しません。
  2. 公表値は「指標名・数値・基準日」の3点セットで記載し、基準日が異なるものを同じ表で単純比較しません。
  3. 大学カテゴリ単独の人数が公表されていない競技については、無理に推計せず「公表なし」と記載します。
  4. 順位付けは編集部では行いません。順位は第三者が公表しているものを、その母集団の定義とともに引用する形に限ります。

競技別に「大学の部員数」の公表状況を確認した一覧(2026年9月26日確認)

確認できた範囲では、大学カテゴリの部員数を実数で公表しているのは硬式野球が最も明確で、他の競技は全カテゴリ合計のみ、または大学という区分自体がない場合があります。

競技 公表主体・資料 公表されている指標と数値 基準日・年度 大学単独の人数
硬式野球(大学) 全日本大学野球連盟「加盟校数および部員数」 加盟校369校・部員数28,166名 令和8(2026)年度・5月1日現在 あり
ラグビー(大学) 日本ラグビーフットボール協会の発表値を引用した学会発表 登録者9,253人・275チーム 2023年 あり(協会発表値の引用)
ラクロス 日本ラクロス協会「会員数推移表」 男性6,037名・女性6,948名・合計12,985名(重複削除後) 2026年3月末現在 なし(全カテゴリ合計のみ)
サッカー 日本サッカー協会「サッカー選手登録数」 第1種121,696人・全種別合計836,297人 2025年度 なし(「大学」という独立区分がなく、大学生は第1種などに含まれる)
バスケットボール 日本バスケットボール協会「登録者数推移」 競技者登録数582,670人(3×3を除く) 2025年度 同ページの表には内訳の記載がなく、カテゴリー別は年度別の個別資料を確認する必要がある
陸上競技 日本陸上競技連盟「登録について」 登録会員数 約40万人。都道府県別内訳資料に「一般・高校・中学・大学」の区分あり(2024年度が最新) 2024年度 都道府県別の積み上げが必要(本記事では全国の大学合計は集計していない)

この表からは2点を押さえておく必要があります。(1) 基準日・年度・登録単位が競技ごとに異なるため、この表の数値をそのまま並べて順位をつけることはしていません。(2) 「大学単独の人数なし」は競技人口が少ないことを意味せず、公表の粒度の違いを示しているだけです。

大学ラグビーは登録者数とチーム数の推移を数値で確認できる

大学ラグビーについては、協会の発表値をもとに登録者数とチーム数の推移を数値で追った資料があり、2012年と2023年を比べるとどちらも減っています。

  • 2023年の大学の登録者は9,253人・275チームで、2012年と比べて登録者は2,449人、チーム数は47チーム少ない状況です(出典: 青木敦英〈芦屋大学〉・溝畑潤〈関西学院大学〉「大学ラグビーにおける競技人口の推移」日本体育・スポーツ・健康学会第75回大会予稿集、2025年。日本ラグビーフットボール協会の発表値を引用したもの)。
  • 同じ発表では、関西大学ラグビーリーグの総選手数が2024年に1,921人で、最も多かった2016年・2018年の2,357人から6年間で400人以上減ったことも報告されています。

この数値は単一競技・単一リーグのものであり、他競技に同じ傾向があるとは言えません。減少の理由についても、この数値からは特定できません。採用の実務では、こうした推移が確認できる競技については「数年後も同じ母集団規模が続く前提を置かない」という程度の材料として扱うのが無理のない使い方です。

硬式野球は高校と大学の公表値を並べられる(同じ世代を追跡した数値ではない)

硬式野球は高校・大学の双方で同年度の加盟校数と部員数が公表されており、規模感の落差を実数で確認できる数少ない例です。

  • 高校(硬式): 3,746校・124,116名・1校平均33.1名(日本高等学校野球連盟「2026年〈令和8年〉度 加盟校部員数・硬式」、2026年5月末現在集計)
  • 大学: 369校・28,166名(全日本大学野球連盟、令和8年度・5月1日現在)

留保: 高校は3学年・大学は4学年で学年構成が異なり、基準日も登録単位も異なります。したがってこの2つの数値の比は進学率や競技継続率を示すものではなく、規模感の目安にとどまります。

同じ資料内の大学側の時系列を見ると、2018年度381校・29,207名から2025年度367校・27,446名を経て2026年度369校・28,166名となっています。校数はゆるやかに減る一方で部員数は年ごとに上下しており、単年の増減で傾向を判断しないことをおすすめします。

実数で横断比較しにくい3つの理由

比較が難しいのは情報が隠されているからではなく、登録の仕組みが競技ごとに違うためです。

  1. 登録の単位が違う: 大学の部を単位に登録する競技と、個人が都道府県協会などを通じて登録する競技があり、「大学の部員数」という数え方がそもそも成立しない場合があります。
  2. カテゴリー区分が違う: サッカーの第1種のように年齢・所属で区切る区分では、大学生が社会人と同じ区分に含まれます。この場合、公表されている数値から大学生だけを取り出すことはできないため、「大学の登録者数は非公表」として扱うほかありません。
  3. 公表の粒度と基準日が違う: 5月1日現在・5月末・3月末など基準日が異なり、公表の場(統括団体サイト・年度別資料・都道府県別資料)もそろっていません。基準日が数か月ずれると新入部員の加入状況も変わるため、異なる基準日の数値を同じ表に並べて差を語ることは避けたほうが無難です。

「人気の部活ランキング」は母集団が違う別の指標

順位を示した公表データは存在しますが、母集団は就職支援サービスの登録学生であり、全国の大学生全体ではありません。人数も公表されていないため、規模の見積もりには使えません。

出典は株式会社スポーツフィールド「体育会就活ラボ」2025年3月24日公開の記事で、スポナビ登録学生(2025年卒業学生)を対象に2024年5月に集計されたものです。

2025年卒TOP10は次の通りです。

  1. 硬式野球
  2. サッカー
  3. ラクロス
  4. 陸上・競走
  5. バスケットボール
  6. ラグビー
  7. アメリカンフットボール
  8. バレーボール
  9. 準硬式野球
  10. 軟式野球

男女別(2023年卒のTOP5)では、男子が硬式野球・サッカー・ラグビー・準硬式野球・ラクロス、女子がラクロス・バスケットボール・バレーボール・陸上・競走・チアリーディング・チアダンスとなっています。

これは体育会学生向けの就職支援を行う事業者による自社サービスの登録学生データの集計です。サービスの評価には立ち入らず、母集団の性質を踏まえて読む必要があります。順位に人数が併記されていないため、競技間の人数差はこの資料からは分かりません。

全国の合計値は、個々の大学の部員数を表さない

統括団体の合計値は全国の総量であり、自社が接点を持つ個々の大学の規模は示しません。運営元メディアの取材記事にも、同じ競技で規模の差や部員数の変動に向き合う例が見られます。

  • 大学ゴルフ部の例: 部員数の減少で最下位ブロックまで降格し、組織改革に着手したという例があります(拓殖大学ゴルフ部、2026年5月19日取材・取材記事)。同じ競技でも、部の規模がリーグでの立ち位置とともに動く場合があることを示す例です。
  • 大学ラグビー部の例: 部員数が少なく実践経験が不足しがちなため、他大学との合同練習で補っているという例があります(横浜国立大学ラグビー部、2025年10月29日取材・取材記事)。全国の登録者数が数千人規模の競技であっても、大学単位では少人数の部があることが分かります。
  • 大学卓球部の例: 部員数の多さを応援の力に変え、声援が試合の雰囲気に影響しているという例があります(名古屋大学体育会卓球部、2026年6月15日取材・取材記事)。部員数の多さが競技成績以外の面にあらわれる場合もあるという例です。

いずれも個別の取材記事に記述があった例であり、競技全体の標準を示すものではありません。採用のターゲットを競技名で決める前に、対象大学の部の規模を個別に確認しておくと、見積もりのずれを小さくしやすくなります。

採用の母集団を見積もるときの4つの注意点

全国の合計値は出発点にすぎず、自社が実際に接点を持てる範囲に落とし込む工程が必要です。

  • 地域と大学の単位まで落とす: 全国の合計値ではなく、自社の拠点から通える地域リーグ・対象大学の部を数えます。硬式野球のように全国369校が公表されている競技でも、自社が接点を持てるのはそのうちの一部です。
  • 学年で割る: 部員数は在籍する全学年の合計であることが多く、単年の採用対象はその一部になります。4学年分が含まれる数値を単年の母集団として社内に共有すると、見込みが実態より大きく見える場合があります。
  • 基準日と年度をそろえる: 異なる基準日の数値を並べて増減を語らないようにします。社内資料に転記するときは、指標名と基準日を数値のすぐ横に併記しておくと、翌年の担当者が同じ条件で更新しやすくなります。
  • 接点を持てる件数で上限を置く: 母集団の名目上の大きさより、説明会・面談などで実際に接点を持てる件数が制約になる場合があります。採用手法ごとの母集団の広さの違いは、採用手法の比較で整理しています。

自社で数字を確認するときの3ステップ

統括団体の公表ページを起点に、指標と基準日を確認してから自社のターゲット範囲に落とす順で進めると、社内で説明しやすい数字になります。

  1. 対象競技の統括団体の公式サイトで、加盟校数・部員数・登録者数のページを探します。統括団体が公表していない数値は、人材サービス各社の推計ではなく「不明」として扱います。
  2. 見つかった数値の指標名・基準日・登録単位を記録します。前年の社内資料と比べる場合は、同じ指標・同じ基準日かを確認します。
  3. 上記の4つの注意点に沿って自社の対象範囲まで落とし込みます。接点を置く時期は競技のシーズンに左右されるため、年間の動き方は採用の年間カレンダーとあわせて確認することをおすすめします。

まとめ:実数で語れる競技を切り分け、残りは傾向として扱う

大学スポーツの競技人口・部員数は、(1) 公表状況が競技によって大きく異なり実数で比較できる範囲は限られること、(2) 登録単位・カテゴリー区分・基準日の違いによって横断比較が難しいこと、(3) 自社での見積もりは統括団体の公表値を起点に地域・大学・学年の単位まで落とし込む手順が必要なこと、の3点に整理できます。採用手法そのものの選び方は体育会学生の採用方法で整理しています。

体育会採用の母集団設計や、自社のターゲット競技の絞り込みについてご相談がある場合は、採用のご相談からお気軽にお問い合わせください。

参考文献