「8月は大学も企業も夏休みの時期だが、体育会の学生への連絡はどうすればよいのか」「内々定者との接点は、何をどの頻度で持てばよいのか」。体育会採用に取り組む担当者の方は、選考開始から2か月がたち、秋の正式な内定日が見えてくるこの時期に、こうした迷いを持つことがあるのではないでしょうか。
結論から言うと、8月の実務は「8月末の公開調査から学生全体の状況を把握する」「夏季休業中の連絡手段と日程を設計する」「全国大会や合宿などの予定に配慮する」「内々定者との接点を保ち、辞退への備えをしておく」の4つに整理できます。この記事では、7月に体育会採用の企業がやることの続きとして、8月に絞った実務アクションをまとめます。年間の流れ全体は体育会採用カレンダーで俯瞰できます。
結論|8月は「状況の把握」「連絡設計」「予定への配慮」「内々定者との接点」の4つに整理できる
8月に企業が動かす主な実務は、次の4つです。
- 8月末に公表される公開調査から、学生の就職活動の状況を把握し、自社の計画と照らし合わせる
- 大学の夏季休業中でも学生に連絡が届く手段を確認し、日程の選択肢を用意する
- 全国大会、秋のリーグ戦、合宿などが学生の予定に入る場合があることを踏まえ、拘束時間と形式を設計する
- 内々定を出した学生との接点を保ちつつ、辞退の意思が伝えられる可能性を前提に備える
採用選考活動の開始は6月1日以降とされていますが、実際の動きは企業ごとに異なります。優先順位は自社の採用計画に合わせてつけることが現実的です。
8月は何が起きる月か|政府の日程要請でいう正式な内定日(10月1日以降)の約1〜2か月前にあたる
内閣官房が公表している2027(令和9)年度卒業・修了予定者等への要請では、広報活動の開始は「卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降」、採用選考活動の開始は「卒業・修了年度の6月1日以降」、正式な内定日は「卒業・修了年度の10月1日以降」とされています(内閣官房「2027(令和9)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請」、2026年11月確認)。要請の日程に沿って考えると、8月は正式な内定日の約1〜2か月前にあたります。
ただし、2028年度以降の卒業予定者については、就職・採用活動の早期化・長期化が進み日程ルールの形骸化が指摘されているとして、政府が見直しに向けた検討を行っていると、内閣府特命担当大臣の記者会見(2026年3月24日)で説明されています(内閣府 記者会見要旨)。次に8月を迎えるのは2028年卒の学生向けの時期ですので、28卒向けの日程は、公表され次第、最新の内容を確認してください。
学生側の動きを見ると、2026年度の8月から9月にかけて、次のような全国大会が開かれていました。
| 競技・大会 |
2026年度の日程 |
出典 |
| 第53回 全日本大学ローイング選手権大会 |
8月26日〜30日(戸田ボートコース) |
日本ローイング協会 |
| 第95回 日本学生陸上競技対校選手権大会 |
9月5日〜7日(日産スタジアム) |
日本陸上競技連盟 |
この2つは、競技統括団体の公式ページで日程を確認できた例です(体育会の引退時期 競技別一覧で2026年9月に確認した内容を、2026年11月に再確認しました)。ボートは8月下旬、陸上競技は9月上旬と、近い時期に続いています。
ただし、これは一部の競技の例にすぎません。春季の公式戦で区切りを迎える部、秋のリーグ戦が続く部、8月に全国大会がある部など、競技・大学・部によって大きく異なります。対象とする競技ごとに連盟の公式発表を確認することが前提です。
取材記事にも、部によって8月前後の過ごし方が分かれる例が確認できます。いずれも一つの部の話で、他の部や大学にそのまま当てはまるとは限りません。
- ある大学のボート部は、4年生が9月のインカレを区切りに引退すると話しています(取材記事、2026年3月6日)。
- ある大学のサッカー部の取材記事には、4年生は9〜10月のリーグ後期戦を区切りに引退する例が挙がっています(取材記事、2026年2月2日)。
- ある大学の男子ラクロス部は、7〜10月のリーグ戦を経て11月に引退すると話しています(取材記事、2026年2月12日)。
同じ「8月」でも、大会の準備期間の部と公式戦の最中の部では状況が異なります。
公開調査で見る8月末の学生の状況|内々定率と活動継続率をどう読むか
8月末の学生の状況を知る手がかりとして、マイナビの調査があります。マイナビが2027年卒の大学生・大学院生を対象に行った調査(実施期間2026年8月25日〜31日、有効回答1,557名)では、8月末の内々定率は85.6%と報告されています(マイナビキャリアリサーチLab「2027年卒 大学生キャリア意向調査8月」)。
| 区分 |
内々定率(8月末) |
前月比 |
活動継続率(8月末) |
前月比 |
| 全体 |
85.6% |
+1.9pt |
23.4% |
−7.5pt |
| 文系 |
83.5% |
+2.8pt |
27.9% |
−9.7pt |
| 理系 |
88.9% |
+0.4pt |
16.4% |
−3.9pt |
前年同月と比べると、内々定率は全体で2.0ポイント低く、活動継続率は1.6ポイント高いと報告されています。7月末は内々定率83.7%、活動継続率30.9%でしたので(2027年卒 大学生キャリア意向調査7月)、7月末から8月末にかけて、内々定率は上がり、活動継続率は下がっています。
この数字を読むときは、次の3点に注意が必要です。
- 調査の対象はマイナビの調査に回答した学生全体で、体育会の学生に限った数字ではありません
- 2027年卒(2026年8月時点)の数字であり、28卒の学生に同じ水準が当てはまるとは限りません
- 活動継続率が23.4%という報告は、8月末でも就職活動を続けている学生が一定数いることを示しています。ただし文系と理系で水準が異なるため、「学生全体が同じように続けている」とは読めません
体育会の学生に限った8月末の内々定率や活動継続率を示す公開データは、今回確認できた範囲では見当たりませんでした。体育会の学生が全体と同じ動きをするとは断定できないため、自社の採用で実際に接した学生の動きと併せて見ることが現実的です。応募や辞退が思うように動かない場合の見直し方は、体育会採用がうまくいかないときの見直しポイントで工程ごとに整理しています。
夏季休業中の連絡手段と日程を設計する
大学が夏季休業に入ると、大学のキャリアセンター経由の連絡が届きにくくなる場合があります。休業期間の長さは大学によって異なるため、対象とする大学の学年暦で確認してください。連絡設計では、次の観点が考えられます。
| 配慮の観点 |
具体例 |
| 連絡手段 |
大学経由か、学生本人への直接連絡か、事前に確認し、複数の手段を持つ |
| 日程の選択肢 |
平日夜・休日・オンラインなど、学生が選べる枠を用意する |
| 返信期限 |
夏季休業や大会・合宿で返信が遅れる場合を想定し、期限を急がせない |
| 企業側の休業 |
自社のお盆休みなどで連絡が止まる期間を、あらかじめ学生に伝えておく |
| 大学・部の方針 |
連絡方法が定められている場合は、それに従う |
企業側の夏季休業で連絡が止まる期間は、再開日と合わせて先に伝えておくと、学生の不安を減らせる場合があります。
全国大会や合宿と重なる学生への配慮
8月は、全国大会、秋のリーグ戦に向けた準備、合宿などが学生の予定に入る部があります。取材記事には、合宿を含む練習の負担が大きい部の例があります。
- ある大学のボート部は、通年の活動の例として、週9回の練習と週5日の合宿生活があると話しています(取材記事、2026年3月6日)。取材記事の時期の表現と2026年度の大会日程が一致しない場合があるため、年度ごとに連盟の発表で確認してください。
これは一つの部の例で、すべての部に当てはまるわけではありません。ただ、練習や合宿の日程が詰まっている時期に、拘束時間の長い選考やイベントを入れると、学生の負担が大きくなる場合があります。採用側は、次のような工夫を検討できます。
- 拘束時間を短くし、オンラインでも参加できる形を用意する
- 日程の候補を多めに出して、学生側に選んでもらう
- 大会の直前・直後の日程は避けられるか、学生に確認してから決める
夏のプログラム(勉強会・インターンシップなど)を8月に行うか
夏のプログラムを実施するかどうかは、自社の採用計画によって異なります。取材記事には、夏の取り組みに触れた企業の声があります。いずれも一社の考え方で、同じ設計がどの企業にも合うとは限りません。
- 経理・AI SaaSの株式会社TOKIUMは、体育会学生向けに夏は勉強会、冬に説明会を行う2段階のアプローチで関係を深めていると述べています。同社は、就活で誰に何を相談すればよいか分からず、一人で悩みを抱えがちだと感じているとも述べています(人事の声、2025年12月18日)。
- マーケティング・ITベンチャーの株式会社L&E Groupは、内定までにインターンや面接で7〜8回以上の接点を持ち、志望者の適性を見極めていると述べています(人事の声、2025年9月19日)。
これらの声からは、接点の回数や時期を設計して関係を深めている企業があることがうかがえます。8月に実施する場合の確認項目は、次のとおりです。
- 実施の目的が、母集団形成か、見極めか、内々定者のフォローかが決まっているか
- 大会や合宿と日程が重ならないか
- 参加の負担(拘束時間・移動・費用)が学生にとって過度になっていないか
インターンシップの運営上の要件や確認項目は、インターン設計 改善チェックリストで整理しています。複数の手法を比べて検討する場合は、体育会採用の手法別比較表も参考になります。
内々定後の接点と辞退への備え
すでに内々定を出している学生がいる場合、8月も接点を保つことが課題になります。要請では正式な内定日が10月1日以降とされており、内々定から正式な内定までには期間があります。その間、学生が他社の選考を続けたり、複数の内々定を比較したりする可能性があります。
連絡が途切れると、学生が入社後のイメージをつかみにくくなる可能性があります。ただし、頻繁な連絡や承諾の催促は、学生に負担や圧力と受け取られる可能性があります。内閣府の記者会見要旨では、内定を条件に他社の就職活動をやめさせる行為や、セクハラなどを行わないことが要請の内容として説明されています(内閣府 記者会見要旨)。
| 観点 |
確認する内容 |
| 接点の頻度 |
連絡が途切れていないか。大会や合宿の予定に合わせて間隔を調整できているか |
| 接点の中身 |
一方的な案内になっていないか。学生の疑問や不安を聞く機会があるか |
| 他社選考への姿勢 |
他社の選考を続けることを前提に、承諾の催促や他社の辞退を求める言動になっていないか |
| 辞退の兆し |
返信の遅れや連絡頻度の変化に気づける体制があるか |
| 辞退を伝えられたとき |
引き止めではなく、理由を聞く機会として扱う方針を決めているか |
設計の詳細は体育会学生の内定者フォロー設計に、辞退の兆しの見方は内定辞退防止チェックリストにまとめています。
9月以降に向けて8月のうちに決めておくこと
8月の終わりは、正式な内定日(要請上は10月1日以降)に向けた準備の時期でもあります。8月のうちに次の点を決めておくと、9月以降の動きが滞りにくくなります。
- 内定式や正式な内定通知の時期と、その連絡方法
- 追加募集を行うかどうか、行う場合の対象と時期
- 辞退が出た場合の、人員計画への影響の見直し
8月の実務チェックリスト
最後に、8月の前半と後半に分けた確認項目をまとめます。
| 時期 |
確認項目 |
| 8月前半 |
対象とする競技の全国大会・秋のリーグ戦の日程を、連盟の公式発表で確認 |
| 8月前半 |
対象とする大学の夏季休業の期間と、学生への連絡手段を確認 |
| 8月前半 |
自社の夏季休業の期間と再開日を、学生に伝える準備 |
| 8月後半 |
8月末の公開調査を踏まえた、追加募集の可否の自社方針の確認 |
| 8月中 |
内々定者フォローの頻度と中身の確認、他社選考を続ける学生への姿勢の再確認 |
| 8月中 |
9月以降の内定通知・追加募集・辞退対応の方針を決定 |
まとめ|8月は「連絡が途切れない設計をして、学生の予定を踏まえて進める」月
8月は、大学の夏季休業と、全国大会や秋のリーグ戦の準備が重なる場合がある月です。公開調査から学生全体の動きを把握しつつ体育会の学生にそのまま当てはめない、夏季休業中でも届く連絡手段と日程の選択肢を用意する、大会や合宿に配慮して拘束時間を抑える、内々定者には承諾を急かさず途切れない接点を保つ、という考え方があります。優先順位は自社の採用計画に合わせてつけることが現実的です。
8月の進め方や、夏季休業中の連絡設計、内々定者フォローの設計に迷う場合は、30〜45分のオンラインでの採用のご相談をご利用ください。
参考文献