「今の会社より安定していそうだが、年収はどうなるのだろう」「民間で数年働いた経験は、公務員になったとき給与に反映されるのか」。民間企業で働く体育会出身の20代が公務員への転職を考え始めると、こうした疑問が出やすくなります。
結論から言うと、公務員の年収は「就く職務の級」「経験年数の換算」「各種手当」「賞与」の組み合わせで決まり、民間の年収と同じ感覚で一つの数字を比べると見誤る場合があります。この記事では、人事院の通知や自治体の公開情報、国家公務員と民間の公開データをもとに、年収の決まり方と比べるときの注意点を整理します。転職を勧めるものではなく、判断材料をそろえることを目的としています。なお、体育会出身者に限った公務員の年収統計は、確認した範囲では見当たりませんでした。
公務員転職の仕組みや評価される点そのものは、体育会出身者の公務員転職|評価される点と仕組みの整理で解説しています。公務員から民間に移る場合は公務員から民間への転職をご覧ください。
結論:公務員の年収は「級・号俸+手当+賞与」で決まる
公務員の月給は、仕事の種類ごとの俸給表にある「職務の級」と「号俸」で決まり、そこに手当と賞与が加わります。人事院の資料によると、国家公務員の俸給表は仕事の種類ごとに17あり、各表に職務の複雑さや責任の度合いに応じた級が定められています。級が変わることを昇格、同じ級の中で号俸が上がることを昇給と呼び、どちらも勤務成績や能力に基づいて決まります(出典: 人事院「国家公務員の給与制度の概要」)。
月給に加わる主な手当は、次のとおりです。
| 手当 |
概要(人事院の資料による) |
| 地域手当 |
民間賃金の高い地域に勤務する職員に支給。東京都特別区では月給の20% |
| 扶養手当・住居手当・通勤手当 |
扶養親族がいる、借家に住む、交通機関を使うなどの場合に支給 |
| 超過勤務手当 |
正規の勤務時間を超えた分に、時間数に応じて支給 |
| 期末手当・勤勉手当(賞与) |
6月1日と12月1日の在職者に支給。令和8年の人事院勧告(8月7日)では年間4.70月分とする内容が示された |
(出典:人事院「国家公務員の給与制度の概要」、賞与月数は人事院「令和8年人事院勧告」。地方公務員は自治体ごとの条例で定められ、国と同じとは限りません)
つまり、同じ「年収400万円」でも、基本給の部分と、地域や家族構成で変わる手当、勤務時間に応じた手当の割合は人によって異なります。比べる際は、総額だけでなく内訳を確認することが前提になります。
民間での経験は、どのように初任給へ反映されるのか
民間企業での在職期間は、一定の条件で経験年数に換算され、初任給の号俸を決める際に考慮されます。国の制度では、人事院の通知「民間企業等からの採用時の給与決定について」(令和8年4月1日給2-54、最終改正令和8年7月30日)が基準を示しています。
通知から読み取れる要点は、次の3つです(出典: 人事院「民間企業等からの採用時の給与決定について」)。
- 換算率:民間在職期間のうち、職員の職務に経験が直接役立つと認められる期間は、経験年数換算表で100分の100の換算率で換算される
- 号俸の決め方:経験年数が同程度の部内職員の号俸を踏まえて決める。採用者の能力等を考慮して、それを超える号俸にすることも可能とされている
- 職務の級の決め方:経験年数にかかわらず、就く職務の内容に応じて決める
注意したいのは、換算されるのは「職務に直接役立つと認められる期間」である点と、級は経験年数ではなく就く職務で決まる点です。たとえば、民間で正社員として5年働いた人が、職務に直接役立つと認められる場合は、経験5年相当の部内職員の号俸が参考にされます。ただし、実際の号俸と金額は採用区分や職務の級によって変わるため、これは仕組みの説明のための仮の例です。
経歴の確認については、在職証明書がなくても、源泉徴収票、厚生年金の加入記録、給与明細、雇用契約書などで事実確認ができるとされています(同通知)。転職の際は、前職の書類を整理しておくと手続きが進めやすくなります。
地方公務員の場合:自治体によって換算の扱いが異なる
地方公務員は、自治体ごとに前歴の換算方法が公開されており、経歴の種類で換算率が異なる場合があります。一例として、箕面市の「転職者等の給与加算制度」では、次のように定められています(出典: 箕面市「転職者等の給与加算制度について」)。
| 経歴の種類 |
換算率 |
| 民間企業など(雇用期限の定めがない直接雇用) |
100% |
| 民間企業など(契約社員・派遣社員・非常勤・アルバイトなど) |
50% |
| 大学院・専門学校など |
30% |
この例では、正社員として4年働いた場合は4年が加算され、正社員以外で4年働いた場合は2年が加算されます。他の自治体が同じ換算率とは限りません。志望する自治体の採用情報や給与の説明ページで、前歴換算の有無や率を確認する必要があります。
数字で比べる:国家公務員の平均給与月額と民間の公開データ
公務員と民間を数字で比べるときは、集計の対象と範囲が異なる点に注意が必要です。人事院の「令和8年国家公務員給与等実態調査」には、行政職俸給表(一)の年齢階層別の平均給与月額(俸給と地域手当などの諸手当の合計)が掲載されています。20代から30代前半の部分を抜粋すると、次のとおりです。
| 年齢階層 |
平均給与月額 |
月額×12(賞与を含まない目安) |
| 24歳以上28歳未満 |
297,781円 |
約357万円 |
| 28歳以上32歳未満 |
333,404円 |
約400万円 |
| 32歳以上36歳未満 |
370,391円 |
約444万円 |
(出典:人事院「令和8年国家公務員給与等実態調査」参考1。学歴計。月額×12は編集部の計算で、賞与は含みません)
一方、民間の公開データには次のものがあります。
- 国税庁「令和7年分民間給与実態統計調査」:1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は487万円(男性597万円、女性342万円)。正社員(正職員)は559万円、それ以外は210万円(出典: 国税庁)。全年齢の平均で、賞与を含みます
- doda「年齢別の平均年収」:20代全体で365万円、25歳367万円、27歳399万円、29歳421万円、30歳429万円。調査期間は2024年9月〜2025年8月末、dodaに登録した20〜65歳の正社員が対象で、有効回答は約60万件(出典: doda)
これらを並べて「公務員のほうが高い」「低い」と結論づけることはできません。国家公務員のデータは行政職俸給表(一)の職員全体の月額で、賞与を含まないため年収総額とは範囲が異なります。民間のデータは賞与を含む年収で、dodaは登録者の集計です。さらに、転職してきた人の初任給は、前歴換算や職務の級で変わります。公開データは水準をつかむための参考にとどめ、自分に近い条件の情報で確認するのが現実的です。
民間側の年収データは、20代の転職、平均年収データを整理や体育会出身の転職、業界別平均年収ランキングでも確認できます。
体育会経験は年収にどう関わるのか
体育会出身者に限った公務員の年収統計は、確認した公開資料の範囲では見当たりませんでした。人事院の通知が示す給与決定の軸は、民間在職期間の換算、経験年数に応じた号俸、就く職務に応じた級であり、体育会に所属していた事実が金額に直接反映されるとは読み取れません。
一般的には、体育会での経験は面接で行動や役割を説明する素材になり得ますが、それが年収に結びつくかどうかは採用区分や自治体の制度によって異なります。年収の面では、むしろ「前職の経歴が職務にどれだけ直接役立つと評価されるか」と「どの級の職務に就くか」が影響しやすいと考えられます。前職の業務内容を、志望先の職務と結びつけて説明できるよう整理しておくと、選考でも換算の確認でも役立つ可能性があります。
なお、本記事では公務員へ転職した個別の体験談は扱っていません。
応募前に確認したい項目チェックリスト
年収の比較は、次の項目を同じ条件でそろえてから行うと判断しやすくなります。
- 現在の年収を、月給・賞与・残業代・各種手当に分けて書き出したか
- 志望先の採用区分(国の経験者採用、地方公共団体の社会人経験者採用など)と、応募資格の職務経験年数を確認したか
- 前歴換算の有無と換算率(正社員とそれ以外で異なる場合がある)を、公式情報で確認したか
- 採用時に就く職務の級(係員・係長など)が想定されているか
- 勤務地による地域手当の有無と率を確認したか
- 賞与の支給月数と、超過勤務手当の支給の考え方を確認したか
- 年収以外に重視したい点(働き方、異動の頻度、勤務地など)を書き出したか
これらは一度で確認し切れるものではなく、年度や自治体によって変わり得ます。迷う場合は、志望先の採用担当窓口や説明会で直接質問する方法もあります。
まとめ:総額ではなく、内訳と条件をそろえて比べる
公務員の年収は、職務の級・号俸、手当、賞与の組み合わせで決まります。民間での経験は一定の条件で経験年数に換算されますが、換算率や運用は国と自治体、経歴の種類によって異なります。公開データを並べても、対象や範囲が違うため、単純な高低の比較はできません。
「公務員になれば年収が安定する」「下がるから不利だ」といった印象だけで決めず、志望先の公式情報で換算の扱いと内訳を確認したうえで、現在の条件と同じ基準で比べてみてください。転職するかどうかの判断は、年収以外の条件も含めて、ご自身のペースで進めて問題ありません。
自分の状況に当てはめて整理したい場合は、ツナカレキャリアの無料キャリア相談もご活用ください。なお、ツナカレキャリアを運営する株式会社PieceTimesは有料職業紹介事業の許可を申請中のため、現時点では求人のご紹介・斡旋は行っておらず、キャリアに関する情報提供・ご相談のみを承っています。