「物流は人手不足だから年収も上がっているらしい」「体力には自信があるから、体育会出身なら稼げるのではないか」。20代で物流業界への転職を考え始めると、こうした話を耳にする場面があるかもしれません。
結論から言うと、公開統計では物流を含む運輸業,郵便業の平均給与は全業種の平均とほぼ同じ水準です。ただし数字は「誰を集計したか」で変わり、職種によっても水準が異なります。また、体育会出身者に限った年収の統計は、確認した範囲では見当たりませんでした。この記事では、国税庁・求人ボックス・厚生労働省の公開情報を並べ、数字の読み方と年収以外に確認したい項目を整理します。転職を勧めるものではなく、判断材料をそろえることを目的としています。
結論:物流の年収は全体平均とほぼ同水準。職種と働き方の前提を見て読む必要がある
運輸業,郵便業の平均給与は、国税庁の最新の統計で全業種平均を約4万円下回る、ほぼ同水準です。一方で、職種別の求人ベースの数字は426万円から468万円の範囲に収まっており、職種間の差は大きくありません。
今回確認した公開データを、対象別にまとめると次のとおりです。
| データ |
集計の対象 |
数字 |
| 国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査」 |
1年を通じて勤務した給与所得者(全年齢・全雇用形態) |
運輸業,郵便業 約483万円(全業種平均 487万円) |
| 求人ボックス給料ナビ(2026年10月6日時点) |
掲載求人の給与水準(中央値) |
トラック運転 426万円、倉庫内作業 468万円、物流管理関連 465万円 |
(編集部が出典から作成。いずれも「物流に就いた体育会出身者」の数字ではありません)
20代の転職でそのまま自分の年収になるとは限りません。国税庁の数字は全年齢の平均で、勤続年数が長い人も含みます。求人ベースの数字は、求人票に書かれた想定の水準です。
国税庁のデータで見る運輸業,郵便業の年収|全業種平均とほぼ同水準
国税庁の「令和7年分民間給与実態統計調査」(2026年9月公表)では、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は487万円で、運輸業,郵便業は約483万円(482.5万円)でした。全業種平均より約4万円低い、ほぼ同じ水準です(出典:国税庁「令和7年分民間給与実態統計調査結果について」)。
参考までに、同じ調査で最も高い業種は電気・ガス・熱供給・水道業の約854万円、最も低い業種は宿泊業,飲食サービス業の約276万円でした。物流を含む運輸業,郵便業は、同資料の14業種のうち高いほうから9番目で、中位からやや下に位置します。
この数字を読むときは、次の点に注意が必要です。
- 運輸業,郵便業には、道路貨物運送だけでなく、鉄道・旅客運送・郵便・倉庫業なども含まれます。物流の仕事だけの平均ではありません。
- 全年齢・全職種・全雇用形態の平均であり、20代の水準ではありません。
- 管理職や専門職、勤続年数の長い人も含まれるため、未経験で入社した場合の初年度の水準とは異なる可能性があります。
つまり「運輸業,郵便業は全体平均とほぼ同水準」とは言えますが、「物流に転職すれば483万円になる」とは読めません。
求人ベースの目安|トラック運転・倉庫内作業・物流管理で見る職種別の水準
求人ボックス給料ナビでは、2026年10月6日時点で、職種ごとの年収が次のように示されていました。いずれも「集計対象求人における給与水準の中央値」で、求人ボックスが掲載求人から算出した値です(出典:求人ボックス給料ナビ「トラック運転の仕事の年収・時給」、「倉庫内作業の仕事の年収・時給」、「物流管理関連の仕事の年収・時給」)。
| 職種 |
年収(中央値) |
月給(中央値) |
初任給の目安 |
| トラック運転 |
426万円 |
36万円 |
24万円程度 |
| 倉庫内作業 |
468万円 |
39万円 |
23万円程度 |
| 物流管理関連 |
465万円 |
39万円 |
24万円程度 |
3職種のあいだの差は最大でも42万円です。職種による違いよりも、勤務地や雇用形態、残業・手当の有無による違いのほうが大きい場合があります。たとえばトラック運転のページでは、地域別で最も高い東京都が486万円、最も低い沖縄県が332万円と、154万円の差が示されていました。物流管理関連でも、東京都525万円と沖縄県389万円で136万円の差でした。
求人ベースの数字を読むときの注意点は次のとおりです。
- 求人票に書かれた想定の水準であり、実際の支給額とは異なる場合があります。
- 集計のたびに数値が更新されます。同じ職種でも時期によって数字が変わるため、最新のページで確認してください。
- 経験者向けと未経験者向けの求人が混在している場合があります。
- 残業代や各種手当を含む金額かどうかは、求人ごとに異なります。
年収の数字は「労働時間のルール」とセットで読む|2024年4月の上限規制
物流の年収を読むときは、金額だけでなく、その金額がどのような労働時間を前提にしているかも合わせて確認したい点です。
厚生労働省によると、自動車運転者の時間外労働には、2024年4月から年960時間の上限規制が適用されています。あわせて、運転時間や休息期間を定めた「改善基準告示」も2024年4月から改正後の内容が適用されています(出典:厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」)。改善基準告示では、年間の拘束時間が原則3,300時間以内(労使協定により例外あり)とされています(出典:厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」)。
また、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を整理した記事では、トラックドライバーの労働時間は全産業平均を上回る状況が続いていると指摘されています(出典:マイナビキャリアリサーチLab「トラックドライバーの労働時間・所得」)。
こうした規制の下では、残業の量を前提に年収を組み立てている求人は、働き方の見直しとあわせて条件が見直されている可能性があります。求人票の年収が「何時間の残業を含んだ金額か」を確認しておくと、判断材料の一つになります。
年収の数字だけで判断しない|応募前に確認したい項目
物流の求人は、同じ金額でも内訳によって働き方が大きく変わります。確認したい項目を表にまとめました。
| 確認項目 |
確認する理由 |
確認の方法の例 |
| 基本給と手当の内訳 |
残業代・深夜手当・歩合の割合で、月ごとの収入の安定度が変わる |
求人票の給与欄、面接での質問 |
| 想定残業時間(固定残業代の有無) |
年収が何時間の残業を前提にした金額か把握するため |
募集要項の「固定残業代」の記載 |
| 必要な免許・資格と取得費用 |
運転業務では入社後に免許が必要になる場合があり、費用負担や取得支援の有無が影響する |
募集要項の応募資格、会社の支援制度 |
| 勤務形態(日勤・夜勤・シフト) |
生活リズムへの影響と手当の額が変わる |
面接での1日・1週間の流れの確認 |
| 昇給・昇格のモデル |
初年度の金額だけでなく、数年後の水準も判断材料になる |
面接で入社3年目・5年目の想定を聞く |
(編集部作成の確認項目。企業によって制度は異なります)
これらは一般的に確認しておきたい項目であり、すべての企業に当てはまるわけではありません。
一次情報について|物流業界に特化した取材記録は確認できていません
編集部が保有する人事担当者・OBOGの取材記録の範囲では、物流・運送業界で体育会出身者の採用や年収について語った記録は確認できていません。そのため、この記事では体験談を載せず、公開統計のみで構成しています。物流業界の働き方や体育会経験が活きる場面については、物流業界への転職、体育会経験はどう活きる?で一般的な傾向として整理しています。
体育会経験は年収にどう関わるのか|統計では確認できない部分
体育会出身者に限った年収の統計は、確認した公開資料の範囲では見当たりませんでした。そのため、「体育会出身だと年収が高くなる」とも「低くなる」とも言い切れません。
一般的には、年収は職種・企業規模・経験年数・勤務形態・評価制度などで決まる部分が大きいと考えられます。体育会経験がある場合は、早朝や不規則なスケジュールへの対応、チームでの役割分担など、具体的な行動を応募先の業務と結びつけて伝えられるかどうかが、選考で見られる材料になる場合があります。その結果が提示額にどう影響するかは、企業や職種によって異なります。
提示された年収に迷ったときの準備の仕方は、転職の年収交渉、20代はどうやる?準備と伝え方の型で整理しています。他の業界と水準を比べたい場合は、体育会出身の転職、業界別平均年収ランキングや、体力面の見せ方も近い施工管理への転職、年収はどれくらい?も参考になります。物流の人手不足の背景となる求人倍率は中途採用の求人倍率を業界別データで解説で確認できます。
応募前に整理しておくチェックリスト
年収の数字を確認したあとは、自分の状況に当てはめる作業が必要です。次の項目を書き出してみると、判断しやすくなります。
- 現在の年収(額面)と、生活に必要な手取りの金額を把握したか
- 応募先の想定年収が、基本給のみなのか、残業代・手当を含む数字なのか確認したか
- 志望する職種(運転・倉庫内作業・物流管理など)を絞ったか
- 必要な免許・資格と、取得までの期間や費用を確認したか
- 年収以外に重視したい点(勤務形態、休日、身につくスキルなど)を書き出したか
まとめ:公開データで水準をつかんだうえで、働き方の前提と年収以外の条件を見る
物流を含む運輸業,郵便業の平均給与は、国税庁の統計で全業種平均とほぼ同水準でした。求人ベースでも、トラック運転・倉庫内作業・物流管理関連はいずれも400万円台半ば前後で、職種間の差は大きくありません。ただし、国税庁の数字は全年齢・全職種の平均であり、20代の転職でそのまま当てはまるとは限りません。
また、年収は残業時間や手当の内訳、勤務形態と組み合わさって決まります。2024年4月から運転者の時間外労働に上限規制が適用されているため、求人票の金額がどの働き方を前提にしているかを確認することが大切です。体育会経験が年収に直接どう反映されるかは、統計では確認できません。
物流業界への転職が自分に合っているか、年収以外の条件も含めて整理したい場合は、ツナカレキャリアの無料キャリア相談もご活用ください。なお、ツナカレキャリアを運営する株式会社PieceTimesは有料職業紹介事業の許可を申請中のため、現時点では求人のご紹介・斡旋は行っておらず、キャリアに関する情報提供・ご相談のみを承っています。