「金融業界は年収が高いと聞くけれど、自分が転職したら実際にいくらくらいになるのだろう」「体育会での経験は、年収にどれくらい反映されるのだろう」。20代で金融業界への転職を考え始めると、こうした疑問が浮かびやすくなります。
結論から言うと、公開統計では金融業界の平均年収は他の業界より高い水準にあります。ただし、数字は「誰を集計したか」によって大きく変わり、20代の転職者がそのまま当てはまるとは限りません。また、体育会出身者に限った年収の統計は、確認した範囲では見当たりませんでした。この記事では、国税庁・doda・求人ボックスの公開データを並べ、数字の読み方と、年収以外に確認したい項目を整理します。転職を勧めるものではなく、判断材料をそろえることを目的としています。
結論:金融業界は統計上は年収が高めだが、数字ごとに対象が違うため「自分に近い数字」を選んで読む
金融業界の年収は、国税庁の統計でも、dodaの20代・25歳のデータでも、全体平均を上回っています。一方で、集計の対象(全年齢か20代か、登録者か求人か)が異なるため、一つの数字だけを見て判断するのは避けたほうがよさそうです。
今回確認した3つのデータを、対象別にまとめると次のとおりです。
| データ | 集計の対象 | 金融の数字 | 比較対象の数字 |
|---|---|---|---|
| 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」 | 1年を通じて勤務した給与所得者(全年齢・全雇用形態) | 金融業,保険業 702万円 | 全業種平均 478万円 |
| doda「平均年収ランキング」2025年版 | dodaに登録した20〜65歳の正社員(約60万件) | 25歳・金融 411万円 | 25歳・全体 367万円 |
| 求人ボックス給料ナビ(2026年10月6日時点) | 掲載求人の給与水準 | 銀行窓口 約500万円、保険営業 約426万円 | 求人ごとの想定年収 |
(編集部が出典から作成。個別の数字の読み方は以降の章で補足します)
20代の転職を考えている場合、国税庁の702万円は「全年齢の平均」であり、そのまま自分の初年度の年収になるとは限りません。20代の目安としては、年齢の面ではdodaの25歳のデータのほうが近い参考値になります。
国税庁のデータで見る金融業界の年収|702万円は「全年齢・全職種」の平均
国税庁の統計では、金融業,保険業の平均給与は702万円で、全業種平均の478万円を224万円上回っています。業種別では電気・ガス・熱供給・水道業に次ぐ水準です。
国税庁「令和6年分民間給与実態統計調査」の結果では、全体の平均給与は478万円(前年比3.9%増)、正規雇用者は545万円、非正規雇用者は206万円とされています。業種別では、金融業,保険業が702万円、情報通信業が660万円、宿泊業,飲食サービス業が279万円でした(出典:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2024/minkan.htm )。
この数字を読むときは、次の点に注意が必要です。
- 全年齢の平均であり、勤続年数が長い人や管理職も含まれます。20代の水準ではありません。
- 職種(窓口・渉外・専門職・管理部門など)や、正規・非正規の別を区別していません。
- 大手の金融機関に勤める人の給与が平均を押し上げている可能性があります。ただし、この統計だけでは企業規模別の内訳までは確認できないため、「可能性がある」という範囲にとどめます。
つまり、「金融業界は平均年収が高い」という言い方自体は統計の裏づけがありますが、「20代で転職すればその水準になる」とは読めません。
20代・25歳ではどうか|dodaのデータでは金融が業種分類で最も高い水準
dodaの2025年版データでは、25歳の平均年収は全体で367万円、金融は411万円でした。差は44万円で、業種分類のなかでは金融が最も高くなっています。
同データでは、25歳の業種分類別の平均年収は次のとおりでした。
| 業種分類(25歳) | 平均年収 |
|---|---|
| 金融 | 411万円 |
| 建設/プラント/不動産 | 397万円 |
| メーカー | 395万円 |
| 総合商社 | 394万円 |
| IT/通信 | 394万円 |
| 専門商社 | 388万円 |
| インターネット/広告/メディア | 369万円 |
| メディカル | 350万円 |
| サービス | 346万円 |
| 小売/外食 | 333万円 |
(出典:doda「25歳の平均年収」https://doda.jp/guide/heikin/age/25.html 。対象は2024年9月〜2025年8月末にdodaに登録した20〜65歳の正社員、有効回答約60万件)
金融と最も低い小売/外食の差は78万円ですが、金融と2位の建設/プラント/不動産の差は14万円です。「金融は上位にあるが、2位との差は14万円にとどまる」と読むこともできます。
また、dodaの全体データでは、20代の平均年収は365万円、30代は454万円、40代は517万円でした(同「平均年収ランキング」https://doda.jp/guide/heikin/ )。これは登録者の平均であり、同じ業種でも職種や企業によって幅があることに変わりはありません。
業態別に見る年収の違い|同じ金融でも銀行・保険・証券で水準が異なる
金融業界のなかでも、業態によって平均年収には差があります。dodaの業種別データでは、金融の主要業種の平均年収は次のようになっています。
| 業種 | 平均年収 |
|---|---|
| 証券会社 | 609万円 |
| 信託銀行 | 607万円 |
| 都市銀行 | 567万円 |
| 損害保険 | 524万円 |
| 地方銀行 | 473万円 |
| 生命保険 | 461万円 |
(出典:doda「平均年収ランキング」 https://doda.jp/guide/heikin/ 。調査期間は2024年9月〜2025年8月、20〜65歳の正社員が対象)
最も高い証券会社と最も低い生命保険の差は148万円です。「金融」とひとくくりにしても、応募先の業態によって水準が大きく異なることがわかります。
ただし、この表は全年齢の平均です。20代前半の水準は、いずれの業態でもこの数字より低い可能性があります。また、同じ業態のなかでも、企業規模や職種、地域によって幅があります。あくまで「業態によって傾向が異なる」ことを示す参考値として扱ってください。
求人ベースの目安|窓口と営業で数字が違い、地域差もある
求人ボックス給料ナビでは、2026年10月6日時点で、銀行窓口の仕事の年収は約500万円、保険営業の年収は約426万円と表示されています。いずれも掲載求人の給与水準から算出された値で、同ページには「集計対象求人における給与水準の中央値」との注記があります(出典:求人ボックス給料ナビ「銀行窓口の仕事の年収・時給」「保険営業の仕事の年収・時給」)。
保険営業のページでは、地域別の年収も示されており、最も高い東京都が452万円、最も低い徳島県が371万円で、地域差は81万円でした。同じ職種でも、勤務地によって年収の水準が変わることがわかります。
求人ベースの数字を読むときは、次の点に注意してください。
- 求人票に書かれた想定年収であり、実際の支給額とは異なる場合があります。インセンティブや残業代の扱いは求人ごとに違います。
- 集計のたびに数値が更新されます。時期によって数字が変わるため、最新のページで確認してください。
- 経験者を想定した求人と、未経験者向けの求人が混在している場合があります。
年収の数字だけで判断しない|転職前に確認したい項目
金融業界の求人は、年収の金額だけでは働き方がわかりにくいため、固定給と成果連動の比率、資格、勤務地などを合わせて確認すると、入社後のギャップを減らす助けになります。
確認しておきたい項目を、表にまとめました。
| 確認項目 | 確認する理由 | 確認の方法の例 |
|---|---|---|
| 年収の内訳(固定給・賞与・インセンティブ) | 同じ年収額でも、成果に連動する割合が違うと、毎月の収入の安定度が変わる | 求人票の給与欄、面接での質問 |
| 評価の仕組み(個人評価かチーム評価か) | 営業系の職種では、評価の対象が個人の件数か、チームの成果かで働き方が変わる | 面接で「評価はどのような指標で行われますか」と聞く |
| 入社後の資格取得 | 業務に関連する資格の取得が前提になる職種がある場合があり、学習時間が必要になる | 募集要項の応募資格・入社後の取得期限 |
| 勤務地・転勤の有無 | 転勤の有無によって、生活面の負担や手当の扱いが変わる場合がある | 募集要項の勤務地欄、面接での確認 |
| 昇給・昇格のモデル | 初年度の年収だけでなく、数年後の水準も判断材料になる | 面接で入社3年目・5年目の想定を聞く |
(編集部作成の確認項目。企業によって制度は異なります)
これらは一般的に確認しておきたい項目であり、すべての企業に当てはまるわけではありません。なお、金融業界の働き方や、体育会経験が活きる場面については、金融業界への転職、体育会経験はどう活きる?強みと働き方の実態で整理しています。
一次情報:金融機関を選んだ体育会OB・OGの声
編集部が取材したOBOGインタビューでは、金融機関を選んだ理由や、その後のキャリアについての声が複数あります。ただし、いずれの記事でも年収の具体的な金額には触れられていません。年収の話ではなく、「何を基準に選んだか」の参考として紹介します。
ある大学アメリカンフットボール部出身のOBは、スポーツ業界を志望していたものの、まず基礎的なスキルを身につけることを優先してメガバンクに入行したと話しています。その後、外資系コンサルティングファームを経て、スポーツ関連の事業会社に転じています(出典:ツナカレメディア「OBOGインタビュー」2026-05-19公開)。年収の数字ではなく、最初のキャリアで何を身につけるかを軸に金融機関を選んだ例です。
また、ある大学ボウリング部出身のOBは、地元に近く、多様な業種の企業と関われる点を理由に、新卒で地域金融機関を選んだと話しています(出典:同、2026-08-28公開)。
いずれも1人の経験であり、金融機関を選ぶ人に共通する傾向とは言えません。ただ、年収の金額に加えて、「どんなスキルが身につくか」「どんな人・企業と関われるか」といった観点でも、金融機関は比べられることがわかります。
体育会経験は年収にどう関わるのか|統計では確認できない部分
体育会出身者に限った年収の統計は、確認した公開資料の範囲では見当たりませんでした。そのため、「体育会出身だと年収が高くなる」とも「低くなる」とも言い切れません。
一般的には、年収は職種・企業規模・経験年数・評価制度などで決まる部分が大きいと考えられます。体育会経験がある場合は、目標に向けてどう取り組んだか、周囲とどう関わったかを具体的な行動として伝えられるかどうかが、選考で見られる材料になる場合があります。その結果として、提示される年収に影響するかどうかは、企業や職種によって異なります。
提示された年収に迷ったときの伝え方や準備の仕方は、転職の年収交渉、20代はどうやる?準備と伝え方の型で整理しています。金融以外の業界を含めて年収水準を比べたい場合は、体育会出身の転職、業界別平均年収ランキングも参考になります。IT職の年収を知りたい場合は、SEへの転職、年収はどれくらい?も確認できます。
応募前に整理しておくチェックリスト
年収の数字を確認したあとは、自分の状況に当てはめる作業が必要です。次の項目を書き出してみると、判断しやすくなります。
- 現在の年収(額面)と、手取りで生活に必要な金額を把握したか
- 応募先の想定年収が、固定給なのか、インセンティブを含む数字なのか確認したか
- 応募先の業態(銀行・証券・保険など)と職種(窓口・渉外・内勤など)を絞ったか
- 入社後に必要な資格と、取得までの学習時間を確認したか
- 年収以外に重視したい点(勤務地、働き方、身につくスキルなど)を書き出したか
まとめ:公開データで水準をつかんだうえで、自分に近い数字と年収以外の条件を見る
金融業界の年収は、国税庁の統計でもdodaのデータでも、全体より高い水準でした。ただし、国税庁の702万円は全年齢・全職種の平均であり、20代の目安としては、年齢の面でdodaの25歳のデータ(金融411万円)のほうが近い参考値になります。業態や職種、地域によっても水準は変わるため、一つの数字で判断せず、固定給とインセンティブの内訳や評価制度などの条件とあわせて確認してください。
体育会経験が年収に直接どう反映されるかは、統計では確認できません。一方で、応募先の業務と自分の経験を具体的に結びつけて伝える準備は、選考のなかで役立つ可能性があります。
金融業界への転職が自分に合っているか、年収以外の条件も含めて整理したい場合は、ツナカレキャリアの無料キャリア相談もご活用ください。なお、ツナカレキャリアを運営する株式会社PieceTimesは有料職業紹介事業の許可を申請中のため、現時点では求人のご紹介・斡旋は行っておらず、キャリアに関する情報提供・ご相談のみを承っています。