「介護の仕事に関心はあるけれど、年収はどれくらいなのだろう」「今の収入から下がらないだろうか」。20代で介護職への転職を考え始めると、まず気になるのがお金の面です。
結論から言うと、公開統計では介護職員の賃金は全産業の平均より低い水準にあり、一方で近年は上昇傾向も示されています。ただし、統計ごとに集計の対象や算出方法が異なるため、1つの数字だけを見て判断するのは避けたほうがよさそうです。また、体育会出身者に限った介護職の年収統計は、確認した範囲では見当たりませんでした。この記事では、厚生労働省と求人ボックス給料ナビの公開データを並べ、数字の読み方と、年収以外に確認したい項目を整理します。転職を勧めるものではなく、判断材料をそろえることを目的としています。
介護の仕事内容や資格ステップ、体育会経験が活きやすい場面については、介護業界への転職、体育会経験はどう活きる?強みと未経験の壁で整理しています。本記事では年収データの読み方に絞って解説します。
結論:統計は「全産業平均より低め・上昇傾向」だが、数字ごとに対象が違うため自分に近い数字を選ぶ
介護職の年収は、集計対象が異なる3つの公開データで見ると水準が少しずつ違うため、「どの数字が自分の応募先に近いか」を選んで読むのが現実的です。
今回確認した公開データを、対象別にまとめると次のとおりです。
| データ | 集計の対象 | 介護の数字 | 比較の数字 |
|---|---|---|---|
| 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(介護職員の賃金集計) | 調査対象企業の介護職員(賞与込みの月額換算) | 月額31.4万円(前年30.3万円) | 全産業平均(役職者を除く) 月額39.6万円(前年38.6万円) |
| 厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」 | 処遇改善加算を取得している事業所の常勤・月給の介護職員(2024年9月) | 平均給与額 338,200円(前年同月比+13,960円) | 同調査内での他職種との比較は別途確認が必要 |
| 求人ボックス給料ナビ(2026年10月6日時点) | 掲載求人の給与水準(中央値) | 介護士 年収約347万円・月給約29万円 | 求人ごとの想定年収 |
(編集部が各出典から作成。数字の読み方は以降の章で補足します)
20代の転職を考えている場合、表の数字の多くは全年齢の平均です。年齢構成が上の世代に寄れば平均は上がる可能性があるため、20代の初年度の年収がそのまま当てはまるとは限りません。
厚生労働省の賃金統計で見る介護職員の水準|全産業平均との差は月額8.2万円
令和7年賃金構造基本統計調査の集計では、介護職員の賃金は月額31.4万円で、全産業平均(役職者を除く)の39.6万円より8.2万円低い水準でした。前年の30.3万円から1.1万円上がっており、全産業平均(前年38.6万円)も1.0万円上がっています。
この数字は、厚生労働省老健局が「賃金構造基本統計調査による介護職員の賃金について」として公表した集計に基づきます(出典:厚生労働省 賃金構造基本統計調査による介護職員の賃金について https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_72236.html )。算出方法は、調査年6月分の給与に、前年1〜12月分の賞与の12分の1を加えた額とされています。
数字を読むときの注意点は次のとおりです。
- 全年齢・全勤続年数の平均であり、20代の水準そのものではありません。
- 施設・訪問・通所など、働く場の違いや夜勤の有無による差を、この1つの数字からは読み取れません。
- 全産業平均との差は、年齢構成や企業規模の違いも含んだ比較です。同じ年齢・同じ経験年数で並べた差ではありません。
処遇改善加算と給与の関係|上昇傾向でも事業所ごとの差は残る
介護職員の給与は近年上昇傾向がみられ、この間に処遇改善加算の拡充も行われていますが、加算の取得状況や運用の仕方は事業所によって異なるため、同じ職種でも受け取る額には差が出ます。
厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」では、処遇改善加算を取得している事業所の常勤・月給の介護職員について、2024年9月の平均給与額が338,200円で、前年同月から13,960円増えたとされています。このうち基本給等は253,810円で、前年同月から11,130円の増加でした(出典:厚生労働省 令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/24/dl/r06kekka.pdf )。
ここでも読み方に注意が必要です。
- 加算を取得している事業所の常勤職員が対象のため、非常勤や加算を取得していない事業所の水準は含みません。
- 平均給与額には、基本給のほか各種手当や処遇改善に関わる支給が含まれます。基本給等との差額(約8.4万円)の内訳は、事業所によって異なります。
- 賃金構造基本統計調査(月額31.4万円)とは、集計の対象・算出方法・含まれる手当の範囲が異なるため、数字を直接比べて優劣を判断することはできません。
求人票を見る際は、基本給と手当・加算の内訳が分けて書かれているかを確認すると、金額の意味をつかみやすくなります。
求人ベースの目安|地域差は約97万円、初任給は23万円程度
求人ボックス給料ナビでは、2026年10月6日時点で、介護士の平均年収は347万円、平均月給は29万円、初任給は23万円程度と示されています。いずれも集計対象求人における給与水準の中央値です(出典:求人ボックス給料ナビ「介護士の年収・時給・給料」 https://xn--pckua2a7gp15o89zb.com/%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E5%A3%AB%E3%81%AE%E5%B9%B4%E5%8F%8E%E3%83%BB%E6%99%82%E7%B5%A6 )。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 平均年収(中央値) | 347万円 |
| 平均月給 | 29万円 |
| 初任給 | 23万円程度 |
| 平均時給(パート・アルバイト) | 1,243円 |
| 平均時給(派遣社員) | 1,899円 |
| 年収が最も高い都道府県 | 東京都 386万円 |
| 年収が最も低い都道府県 | 青森県 289万円 |
| 地域差 | 97万円 |
(2026年10月6日時点の掲載情報。更新により数字は変わります)
同ページでは、同じ職種でも都道府県によって年収が約97万円違うことが示されています。地方から都市部へ、あるいはその逆の転居を伴う転職の場合は、年収の額面だけでなく、家賃などの生活費も含めて比べる必要があります。
求人ベースの数字には、次の点にも注意してください。
- 求人票に書かれた想定の金額であり、実際の支給額とは異なる場合があります。夜勤手当や残業代の扱いは求人ごとに違います。
- 数字の大小は掲載求人の構成や雇用形態の違いにも左右されます。そのため、資格の有無による差を示す数字としては読めません。
- 経験者を想定した求人と、未経験者向けの求人が混在している場合があります。
20代の転職で、年収を読むときの3つの視点
介護職への転職で年収を比べるときは、現在の年収・応募先の給与内訳・働き方の3点を、同じ基準に揃えて並べると判断しやすくなります。
1. 額面と手取りを分けて考える 今の年収が賞与込みの額面なのか、月給だけなのかを揃えます。介護の求人では、月給に夜勤手当や処遇改善に関わる手当が含まれている場合があります。含まれる範囲を、求人票の記載で確認します。
2. 固定の部分と変動の部分を分ける 基本給のほか、夜勤手当・資格手当・処遇改善に関わる手当のうち、どれが毎月固定で支給され、どれが勤務状況によって変わるのかを確認します。夜勤の回数が前提の金額かどうかは、年収の見え方を大きく変えます。
3. 数年後の水準も確認する 初年度の金額だけでなく、資格取得後の手当や昇給の仕組みも確認します。資格ステップや研修支援の有無は事業所によって異なるため、面接や見学の場で、入社3年目・5年目にどのような待遇になるかを聞いておくと、入社後のギャップを減らすことにつながる場合があります。
年収の数字だけで判断しない|転職前に確認したい項目
年収の金額だけでは働き方が見えにくいため、勤務形態・資格支援・設備などをあわせて確認しておくと、入社後のギャップを減らすことにつながる場合があります。
| 確認項目 | 確認する理由 | 確認の方法の例 |
|---|---|---|
| 給与の内訳(基本給・手当・賞与) | 同じ年収額でも、固定の割合が違うと毎月の収入の安定度が変わる | 求人票の給与欄、面接での質問 |
| 夜勤の頻度と手当 | 夜勤を含む前提の金額かどうかで、実際の働き方と収入が変わる | 面接で「想定の夜勤回数」を確認する |
| 資格取得の支援 | 研修費の補助や勤務時間内の受講があるかで、取得までの負担が変わる | 募集要項、面接での確認 |
| 昇給・昇格のモデル | 初年度だけでなく数年後の水準も判断材料になる | 面接で3年目・5年目の想定を聞く |
| 身体的負担への対策 | 移乗介助などの負担を軽くする設備・研修の有無で、長く働けるかが変わる | 見学時に設備や研修体制を確認する |
(編集部作成の確認項目。事業所によって制度は異なります)
これらは一般的に確認しておきたい項目であり、すべての事業所に当てはまるわけではありません。
一次情報:福祉分野の企業が見ている点
編集部が取材した「人事の声」には、介護そのものではありませんが、フィットネス・福祉分野の企業の声があります。
株式会社OSHIRI(フィットネス・福祉分野、2025年12月25日取材)の人事担当者は、採用では完成度よりもまず一歩を踏み出し、行動を通して学べる人を求めていると話しています(出典:ツナカレメディア「人事の声」)。この発言は採用で見ている点についてのもので、年収や処遇については触れられていません。1社の声であり、介護業界全体に当てはまる傾向とは言えませんが、年収の金額とは別に、「どのような姿勢が求められるか」を確認する材料にはなります。
体育会経験は年収にどう関わるのか|統計では確認できない部分
体育会出身者に限った介護職の年収統計は、確認した公開資料の範囲では見当たりませんでした。そのため、「体育会出身だと年収が高くなる」とも「低くなる」とも言い切れません。
一般的には、介護職の年収は資格の有無・経験年数・勤務形態・事業所の加算の取得状況などで決まる部分が大きいと考えられます。体育会経験がある場合は、チームでの情報共有や、年代の異なる相手との関わり方を、具体的な行動として伝えられるかどうかが、選考で見られる材料になる場合があります。その結果として提示される年収に影響するかどうかは、事業所や職種によって異なります。
提示された年収に迷ったときの伝え方や準備の仕方は、転職の年収交渉、20代はどうやる?準備と伝え方の型で整理しています。業界をまたいで年収水準を比べたい場合は、体育会出身の転職、業界別平均年収ランキングも参考になります。体を動かす職種の年収を知りたい場合は、トレーナー職への転職、年収はどれくらい?も確認できます。
応募前に整理しておくチェックリスト
年収の数字を確認したあとは、自分の状況に当てはめる作業が必要です。次の項目を書き出してみると、判断しやすくなります。
- 現在の年収(額面)と、手取りで生活に必要な金額を把握したか
- 応募先の想定年収が、夜勤手当や各種手当を含む数字なのか確認したか
- 応募先の働く場(施設・訪問・通所など)と勤務形態(常勤・非常勤)を絞ったか
- 資格取得の支援と、取得までに必要な期間を確認したか
- 年収以外に重視したい点(勤務地、働き方、身につくスキルなど)を書き出したか
まとめ:公開データで水準をつかんだうえで、内訳と働き方を確認する
介護職員の賃金は、厚生労働省の統計では全産業平均より低い水準で、近年は上昇傾向にあります。ただし、統計ごとに対象や算出方法が異なり、どの数字も20代の初年度の年収をそのまま示すものではありません。求人ベースでも都道府県による差が約97万円あり、事業所ごとに加算や手当の内訳が違います。
一つの数字で判断せず、給与の内訳・夜勤の頻度・資格支援・昇給の仕組みを、現在の働き方と並べて確認してください。体育会経験が年収に直接どう反映されるかは、統計では確認できません。応募先の業務と自分の経験を具体的に結びつけて伝える準備は、選考のなかで役立つ可能性があります。
介護職への転職が自分に合っているか、年収以外の条件も含めて整理したい場合は、ツナカレキャリアの無料キャリア相談もご活用ください。なお、ツナカレキャリアを運営する株式会社PieceTimesは有料職業紹介事業の許可を申請中のため、現時点では求人のご紹介・斡旋は行っておらず、キャリアに関する情報提供・ご相談のみを承っています。