転職を考え始めて「どの業界なら求人があるのか」を調べると、求人倍率のデータが次々に出てきます。ところが、同じ時期の数字なのに記事によって1倍台だったり2倍台だったりします。これは「求人倍率」と呼ばれる指標が複数あり、集計の対象(母集団)が違うために起こります。この記事では指標ごとの違いを整理したうえで、業界別・職種別の公開データを出典付きで紹介し、20代の体育会出身者が自分の転職判断にどう使えるかを解説します。

中途採用の求人倍率は、どの指標を見るかで数字が変わります

同じ「中途採用の求人倍率」でも、厚生労働省の統計では1.18倍(2026年7月)、dodaの集計では2.86倍(2026年8月)と、集計の対象が違うため数字に2倍以上の開きがあります。どちらかが誤っているわけではなく、見ている範囲が違います。

指標名 出し手 母集団 直近の値(時点) わかること 注意点
有効求人倍率(季節調整値) 厚生労働省 ハローワークに申し込まれた求人・求職 1.18倍(2026年7月) ハローワークを通じた求人と求職者の需給バランス 新卒・中途の内訳は示されない
正社員有効求人倍率(季節調整値) 厚生労働省 同上のうち正社員の求人・求職 1.00倍(2026年7月) 正社員に絞った需給バランス 上の有効求人倍率とは対象が異なる
転職求人倍率 doda(パーソルキャリア) doda会員の転職希望者数とdoda掲載求人数 2.86倍(2026年8月) dodaサービス内の求人数と登録者数の比 doda一社の会員・求人が母集団

(出典: 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」doda「転職求人倍率レポート」

厚生労働省はもう一つ、新規求人倍率(季節調整値)も公表しています。2026年7月は2.10倍で、前月と比べて0.06ポイント低下しました(出典: 同上)。一般に、有効求人倍率は前月から繰り越された分を含む求人・求職を、新規求人倍率はその月に新たに受け付けた分を対象とするとされており、同じ月でも数字が異なります。こうした用語の違いは転職の用語集|体育会出身者がつまずきやすい18語をやさしく解説でも整理しています。

業界別の中途採用求人倍率データ(2026年8月時点)

dodaの業種別データでは、人材サービスやコンサルティングが10倍前後と高く、小売・流通やメディカルは1倍未満です。doda会員という母集団に限った比であり、業界全体の採用しやすさを示すものではありません。

業種 転職求人倍率(2026年8月)
人材サービス 10.87倍
コンサルティング 9.90倍
IT・通信 7.47倍
建設・不動産 5.53倍
メディア 3.86倍
メーカー 3.40倍
金融 2.84倍
エネルギー 2.54倍
商社 1.91倍
メディカル 0.93倍
レジャー・外食 0.85倍
小売・流通 0.82倍
その他 0.26倍

(出典: doda「転職求人倍率レポート」データ詳細

倍率が高い業種と、その読み方

人材サービス(10.87倍)、コンサルティング(9.90倍)、IT・通信(7.47倍)、建設・不動産(5.53倍)はいずれも5倍を超えています。これは、その業種を直近の仕事としているdoda登録者の数に対して、その業種の求人数が多い状態を示しています。求人の数が多いことと、募集要件が自分の経験と合うことは別です。倍率の高さだけで応募先を決めない方が、判断を誤りにくくなります。

1倍を下回る業種の数字が意味すること

メディカル(0.93倍)、レジャー・外食(0.85倍)、小売・流通(0.82倍)、その他(0.26倍)は1倍を下回っています。ここで見落とされやすいのが、dodaの転職希望者の「業種」「職種」は、希望先ではなく直近の仕事の業種・職種で分類されている点です(出典: doda「転職求人倍率レポート」の調査方法)。

つまり「小売・流通0.82倍」は「小売・流通業界に転職しにくい」という意味ではなく、「小売・流通で働いている登録者の数に対して、小売・流通の求人数が少ない」という意味になります。他業界から小売・流通を目指す場合、この数字は自分の状況をそのまま表したものではないため、「入りにくい」と読み替えないよう注意してください。

職種別の中途採用求人倍率データ(2026年8月時点)

職種別では、IT・通信系エンジニアが12倍超で最も高く、事務・アシスタントや販売・サービスは1倍未満です。職種だけ変える転職なら、業種別より職種別データが参考になります。

職種 転職求人倍率(2026年8月)
エンジニア(IT・通信) 12.04倍
エンジニア(機械・電気) 6.81倍
専門職(コンサル・金融) 6.63倍
専門職(建築・不動産) 5.95倍
企画・管理 3.28倍
営業 3.14倍
専門職(化学・食品) 1.78倍
クリエイター 1.21倍
販売・サービス 0.82倍
事務・アシスタント 0.65倍
専門職(メディカル) 0.55倍
その他 0.07倍

(出典: doda「転職求人倍率レポート」データ詳細

業種別と職種別では見えるものが違います。業種を変えずに職種だけ変えたいなら職種別の表が、今の職種を活かして業種を変えたいなら業種別の表が、それぞれ出発点になります。なお職種別の表も、直近の仕事の職種で分類された登録者数が分母である点は業種別と同じです。営業以外の職種も含めて選択肢を広げたい場合は、「体育会=営業」という前提を外して考える転職先もあわせて参考にしてください。

ハローワークの統計からは「業界別の求人倍率」を直接は読み取れません

厚生労働省が産業別に示しているのは求人倍率ではなく新規求人数の増減です。そのため「業界別の求人倍率」を公的統計からそのまま確認することはできず、民間サービスが公表する業種別データと組み合わせて読むことになります。

厚労省が公表する新規求人(前年同月比、2026年7月分)では、次の産業で増加が見られました。

  • 製造業: 6.8%増
  • サービス業(他に分類されないもの): 5.6%増
  • 医療、福祉: 1.3%増

一方、次の産業では減少が見られました。

  • 宿泊業、飲食サービス業: 10.7%減
  • 卸売業、小売業: 7.3%減
  • 生活関連サービス業、娯楽業: 6.5%減

(出典: 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」

卸売業・小売業の新規求人が前年同月比で減っていることと、dodaの業種別で小売・流通が1倍を下回っていることは、方向としては近い数字です。ただし両者は母集団も算出方法も異なる別の統計であり、片方がもう片方の裏づけになるわけではありません。

企業側の中途採用意向を示すデータ

市場全体では、中途採用を増やす企業が減らす企業を上回る傾向が数年続いています。

リクルートワークス研究所の調査では、2026年度の中途採用について「増える」19.7%、「減る」5.9%でした。中途採用D.I.は5年連続でプラスです(出典: リクルートワークス研究所「中途採用実態調査」)。

一方で、市場全体の数字がそのまま個々の企業の動きを表すわけではありません。営業支援の株式会社エンジンは、急拡大に伴う価値観のズレから集団離職を経験し、中途採用中心から新卒採用中心へ方針を転換したと語っています(出典: ツナカレメディア「人事の声」株式会社エンジン(2025-11-21取材))。これは1社の事例であり一般化はできませんが、市場全体が中途採用に前向きな時期でも企業ごとに方針が変わり得ることを示す例です。求人倍率は市場全体の傾向を示す指標であって、応募先1社の採用可否を示すものではありません。

体育会出身の20代が求人倍率データを見るときの4つの注意点

求人倍率は判断材料になりますが、応募の可否を決める根拠にはできません。押さえたい4点を整理します。

  • ①倍率が高い=入りやすい、とは限りません。 求人倍率は求人数と希望者数の比であり、選考では経験・スキル・資格の要件が個別に問われます。
  • ②体育会出身者に限定した求人倍率の統計は、公表が確認できていません。 本記事の数値はすべて一般の中途採用市場のデータです。
  • ③倍率が高い業界・職種には、未経験者を対象にした求人が含まれることもあります。 ただし倍率からは働き方や定着の状況までは分かりません。労働時間・配属・評価の仕組みなども募集要項や面接で個別に確認しておくとよいでしょう。
  • ④求人倍率は月次で動きます。 本記事の数値は2026年7月・8月時点です。判断時は出典元で最新値を確認してください。

求人倍率データを転職の判断に落とし込む4ステップ

母集団を確認し、業種・職種を見たうえで求人と自分の経験を照らし合わせる順番で進めると整理しやすくなります。

ステップ やること
Step1 見ている数字がどの母集団の指標かを確認する
Step2 業種別と職種別の両方を見る(業種を変えるか職種を変えるかで軸が違う)
Step3 気になった業種・職種の個別求人の応募要件を実際に読む
Step4 自分の職務経験・体育会経験のどの部分が要件と重なるかを文章で書き出す

Step4の言語化については職務経歴書で部活・体育会経験を強みに変える書き方【テンプレ付】で具体的な書き方を解説しています。そもそもいつ動き出すかから整理したい場合は、第二新卒×体育会系の転職完全ガイド|いつ動く?何から始める?もあわせて参考にしてください。

まとめ:数字の母集団を確認してから、自分の経験と突き合わせる

中途採用の求人倍率は、厚生労働省の統計で1.18倍、dodaの集計で2.86倍と、出し手によって数字が大きく異なります。業界別・職種別データも、doda会員の直近の仕事で分類されている前提を踏まえずに読むと意味を取り違えやすくなります。どの指標かを確認し、業種別・職種別を照らし合わせ、応募要件を読み、自分の経験のどこが重なるかを言語化する。この順番で使うと、数字に振り回されずに判断材料にできます。

求人倍率のデータをどう自分の判断に使えばよいか整理がつかない場合は、ツナカレキャリアの無料キャリア相談もご活用ください。なお、ツナカレキャリアを運営する株式会社PieceTimesは有料職業紹介事業の許可を申請中のため、現時点では求人のご紹介・斡旋は行っておらず、キャリアに関する情報提供・ご相談のみを承っています。