「体育会出身の転職体験談を読んでみたけれど、自分の場合に当てはまるのか分からない」「みんな成功しているように見えて、参考にしてよいのか迷う」。社会人になって数年目の、20代の体育会OB/OGの方に向けて書いています。
結論から言うと、体験談は「何をしたか」の結果よりも、「何がきっかけで動いたか」「どんな形で変えたか」「動いたあと何が変わったか」の3軸で読むと、自分の状況と並べやすくなります。この記事では、ツナカレメディアで公開されているOB/OGインタビュー3例と、厚生労働省の公的調査をもとに、体験談の読み方を整理します。転職を勧める記事ではありません。転職するか、今の場所で続けるかを決めるのは、読者ご自身です。
結論|体験談は「きっかけ」「転職の形」「変化」の3軸で読むと、自分と比べやすい
体験談を自分の判断に生かすには、3つの軸に分けて読む方法があります。
| 軸 |
見るポイント |
自分に当てはめる問い |
| きっかけ |
何が動く理由になったか |
今の自分の違和感は、どれに近いか |
| 転職の形 |
社内で変えたか、同じ業界で移ったか、別の業界へ移ったか |
自分が変えたいのは職種か、環境か、業界か |
| 変化 |
動いたあとに何が変わり、何が変わらなかったか |
変えたいものと、残したいものは何か |
どれも「この通りにすればうまくいく」という型ではありません。あくまで、自分の状況を言葉にするための整理の枠です。
体験談を読む前に|公開されている話に偏りがある点を知っておく
体験談を読むときは、次の点を前提にしておくと、読み違いを減らせます。
- 公開されている体験談は、本人が経歴を振り返って語ったものです。当時の迷いや、動かなかった選択肢が、すべて語られているとは限りません
- 公開されている体験談はうまくいった例に偏っている可能性があり、うまくいかなかった例や転職しなかった人の話は目にする機会が少ないかもしれません
- 転職時の年齢や時期、業界の状況は人によって異なります。20代の転職にそのまま当てはまるとは限りません
つまり、体験談は「こうすればよい」という答えではなく、「こういう動き方もある」という選択肢の見本として読むのが適切です。
公的データで見る|転職の理由は人によって分かれる
個人の話を読む前に、全体像を公的データで確認しておきます。厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」(調査時点は令和7年10月1日、令和8年9月25日公表、個人調査の有効回答7,310人)では、転職者が直前の勤め先を離職した主な理由は「自己都合」が81.3%でした。25〜29歳に限ると89.4%です(表10)。
自己都合で辞めた人の理由(3つまでの複数回答)をみると、総数では「賃金が低かったから」25.5%、「会社の将来に不安を感じたから」25.2%、「満足のいく仕事内容でなかったから」24.7%が上位でした(表11)。25〜29歳でも、理由は仕事内容・賃金・会社の将来など複数に分かれています(表11)。
ここから言えるのは、転職の理由は一つに決まっておらず、仕事内容・賃金・会社の将来など複数に分かれているということです。体育会出身者に限った統計は、今回確認した範囲では見当たらなかったため、この数字は転職者全体の傾向として扱います。
事例1|新卒で営業を選び、社内で職種を変えてから転職した例
ある大学の卓球部出身の方は、新卒で入社した会社で法人営業からキャリアを始めました。営業職を選んだ理由について、日本語での対人コミュニケーションに強い苦手意識があったためと話しています。その後、社内でエンジニアの職種に転向し、さらに2回の転職を経て、現在もエンジニアとして働いています(ツナカレOB/OGインタビュー、2026年3月18日公開)。
この例を3軸で読むと、次のように整理できます。
- きっかけ:業務の中で、営業数値の管理に使う表計算の作業がプログラミングと共通すると気づいたことが、職種を考える入り口になったと語られています
- 転職の形:まず会社を辞めずに社内で職種を変え、そのうえで職種を変えずに会社を移っています。環境を変えることと職種を変えることを、別の段階で行っています
- 変化:部活動での経験について、「どんなにビハインドがあったとしても、自分と強者の差をコツコツと埋めていけば、きっと成果はついてくる」と話しています
読み取れるのは、転職の前に「社内で変えられること」を試した例がある点です。ただし、社内で職種を変えられるかどうかは会社の制度や状況によって異なります。
事例2|同じ業界の中で、役割と環境を変えながら移った例
ある大学のサッカー部で副キャプテンを務めた方は、新卒で映像制作会社に入り、CM制作の進行管理を担当しました。その後、広告会社の企画職、別の広告会社の新規営業、マーケティング支援や事業開発も手がける会社と、3回の転職を経験しています(ツナカレOB/OGインタビュー、2026年4月1日公開)。
- きっかけ:1回目は「企画を生み出す側に回りたい」という志向、2回目は、より自由な環境で幅広い企業に新規提案をしたいという考えが理由とされています
- 転職の形:業界は広告・マーケティングの周辺にとどまり、制作→企画→営業→事業開発と、役割を少しずつ広げています
- 変化:現職では、チームをゼロから立ち上げるマネジメントも経験したと語られています。体育会経験については、「スポーツもビジネスも、本質は大きく変わらないと思っています」と話しています
この例では、1回目と2回目の転職について、理由が言葉になっている点が特徴です。「何を変えたいのか」を一回ごとに整理しているため、動く理由と動いた先の関係が読み取りやすくなっています。
事例3|異なる業界へ移り、「やりたいこと」を周囲に伝え続けた例
ある大学のアメリカンフットボール部出身で、高校の部活動でコーチを務めた経験のある方は、新卒で銀行に入り、法人営業や融資を担当しました。約2年半後に外資系のコンサルティング会社へ転職し、その後、スポーツ関連の事業を行う会社に移っています(ツナカレOB/OGインタビュー、2026年5月19日公開)。
- きっかけ:コンサルティング会社への転職は、「財務だけでなく戦略面も学びたい」という考えからとされています
- 転職の形:銀行からコンサルティング、スポーツ関連事業へと、業界を変えています
- 変化:コンサルティング会社に在籍していた時期から、「将来的にはスポーツの仕事がしたい」と周囲に伝え続けていたところ、上司がスポーツ関連のプロジェクトに推薦してくれたと話しています。「自分の意思や目標を周囲に伝え続けていたからこそ、チャンスにつながったのだと思います」と振り返っています
この例から読み取れるのは、転職という行動の前に、「何をしたいか」を周囲に伝えていた点です。ただし、周囲に伝えれば同じ機会が得られるとは限りません。本人の語りから分かるのは、この方の場合はそれがきっかけの一つになった、というところまでです。
3例を並べて見えること
3つの例を軸ごとに並べると、動き方の違いが分かります。
|
事例1(卓球部出身) |
事例2(サッカー部出身) |
事例3(アメフト部出身) |
| きっかけ |
業務の中での気づき |
「企画する側に回りたい」など役割への志向 |
「戦略面も学びたい」、スポーツの仕事への関心 |
| 転職の形 |
社内で職種を変えたあとに転職 |
同じ業界の中で役割を変えて移る |
業界を変えて移る |
| 変化 |
職種が変わった |
役割が広がり、マネジメントも経験 |
関心のあった分野に移った |
この3例に共通するのは、「何を変えたいのか」を自分の言葉で語っている点です。一方で、転職の形も、きっかけも、人によって異なります。どれが正解という比較はできません。
自分の転職に引きつけて読むための5つの問い
体験談を読んだあとは、次の5つの問いに書き出してみる方法があります。書いたメモは、転職するかどうかを考える材料にも、今の職場でできることを探す材料にもなります。
- 今の違和感は、仕事内容・環境・業界・評価のどれに近いか
- 変えたいものは何か(職種、役割、会社、業界、働き方)
- 変えたくないもの、残したいものは何か
- 会社を辞めずに変えられる部分(異動、担当業務、働き方の調整)はあるか
- 周囲に伝えていないだけで、すでに考えていることはあるか
転職を考える場合は、自分の強みをどう整理するかの参考として体育会の競技別・強みの活かし方の早見表が、転職するかどうか自体に迷う場合は転職するべきか分からないときの整理の仕方が参考になります。1社目の振り返りから進めたい方は、体育会出身の転職で失敗を繰り返さない4ステップもあわせてご覧ください。
体験談を判断材料にするときの注意点
最後に、体験談を使うときの注意点をまとめます。
- 1つの体験談で判断せず、複数の例と、公的データのような全体像を並べて読む
- 結論(どこへ移ったか)より、きっかけと選び方に注目する
- 転職するかどうかの判断は、体験談の数ではなく、自分の状況と確かめた事実で行う
- 転職しない選択、社内で変える選択も、同じ重みで検討する
まとめ|体験談は「答え」ではなく「自分の状況を言葉にする材料」
体育会出身者の転職体験談は、きっかけ・転職の形・変化の3軸で読むと、自分の状況と並べやすくなります。紹介した3例は動き方も理由も異なり、どれかをまねれば同じ結果になるという話ではありません。体験談を読んだ結果、転職を考える場合も、今の職場で続ける場合も、5つの問いに書き出した内容が次の一歩を決める材料になります。急いで決める必要はなく、確かめられる事実を一つずつ増やしていく進め方があります。
参考文献