契約更新の時期が近づくたびに、「このまま更新を続けていいのか」と考えてしまう。契約社員として働く20代の体育会出身者の中には、こうした迷いを抱えている人もいます。「5年働けば正社員になれる」という話を聞いたことがあっても、それが何を指す制度なのかまでは分からない、という場合もあります。

職務経歴書に「契約社員」と書くこと自体が、転職の場でマイナスに見えるのではという不安もあるかもしれません。体力や継続力はアピールできても、説明をどう組み立てればいいのか分からず動き出せずにいる、という状況も起こりえます。

結論から言うと、契約社員から正社員になる道は大きく4つに分かれます。まず「今の会社で目指す」のか「転職で目指す」のかを切り分けると、何を確認・準備すればよいかが見えやすくなります。この記事では、4つのルートの整理、無期転換ルールと正社員化の違い、現職で確認してよいこと、転職時の職務経歴書・面接での伝え方の型、動き出す前の準備チェックリストまでを順番に扱います。

結論:ルートは4つ。「今の会社で目指す」か「転職で目指す」かを先に切り分ける

契約社員から正社員になる道は大きく4つに分かれ、どれを選ぶかで準備すべきことが変わるため、まず現職路線か転職路線かを切り分けることから始めます。

ルート どこで 必要な動き 向いている状況
①現職の正社員登用制度を使う 今の勤務先 制度の有無・要件・実績を確認し、選考に応じる 今の業務内容や職場環境に納得感があり、社内で評価を積み上げられている
②無期転換ルールを使って無期雇用になる 今の勤務先 通算5年超の時点で本人が申込む(※正社員化とは別) まず雇用の安定を優先したい。正社員化は別途検討する
③正社員登用前提の求人・紹介予定派遣に応募する 転職先候補 登用実績のある求人を選び、応募・選考を進める 今の会社に登用制度がない、または運用実績が乏しい
④正社員求人に直接応募して転職する 転職先候補 職務経歴書・面接で契約社員期間を説明できる形に整理する 業界・職種そのものを変えたい、早めに正社員の立場で働きたい

どのルートも互いに排他的ではなく、並行して進めることができます。現職の登用制度を確認しつつ、正社員求人の情報収集も始める、という動き方も可能です。

「5年働けば正社員」は誤解になりやすい|有期・無期転換・正社員の違い

無期転換ルールは契約期間の定めがなくなる仕組みであり、無期転換したからといって自動的に正社員になるわけではありません。

区分 有期労働契約(契約社員) 無期転換後 正社員
契約期間 定めあり(更新が必要) 定めなし 定めなし
労働条件の扱い 契約時に定めた条件 労働協約・就業規則・個々の労働契約に別段の定めがある部分を除き、直前の有期労働契約と同一 会社の正社員就業規則に基づく
根拠 労働契約法・個々の労働契約 労働契約法第18条(無期転換ルール) 会社の正社員就業規則・労働契約

無期転換ルールには、次の3つの要件があります。

  1. 同一の使用者との有期労働契約が通算5年を超えること
  2. 労働者本人が無期転換を申し込むこと(自動的に切り替わるわけではない)
  3. 労働者から申込みがあった場合、使用者は断ることができないこと

(出典:厚生労働省「無期転換ルールについて」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21917.html /厚生労働省「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」 https://muki.mhlw.go.jp/ )

上の表の通り、無期転換後の労働条件は「労働協約、就業規則、個々の労働契約に別段の定めがある部分を除き、直前の有期労働契約と同一」とされています(出典:厚生労働省「無期転換ルール ハンドブック」 https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000518484.pdf )。契約期間の定めがなくなるだけで、給与や待遇が正社員と同じ内容に切り替わるわけではありません。

無期転換は、契約更新のたびに雇用継続を気にする状態から抜け出せるという点で雇用の安定という意味を持ちます。一方で、給与体系・賞与・昇進のルートが正社員と同じ扱いになるかは会社の制度設計によって異なるため、個別に確認しておく必要があります。

現職で正社員を目指すなら|法律の定めを踏まえて確認したい5つのこと

パートタイム・有期雇用労働法第13条は、事業主に通常の労働者(正社員)への転換を推進する措置を講じることを義務づけています。そのため、制度の有無や正社員募集の情報について確認すること自体は、不自然な行動ではありません。

事業主は、次の3つの措置のうち、いずれかを講じなければならないとされています。

  1. 正社員の募集を行う場合、業務内容・賃金・労働時間などの募集事項を短時間・有期雇用労働者に周知する
  2. 正社員の配置を新たに行う場合、その配置の希望を申し出る機会を与える
  3. 一定の資格を有する短時間・有期雇用労働者を対象とした正社員転換のための試験制度を設けるなど、転換を推進する措置を講じる

(出典:パートタイム・有期雇用労働法第13条/厚生労働省「パートタイム・有期雇用労働法の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000815524.pdf )

この根拠を踏まえて、次の5項目を確認しておくと、現職での正社員化を検討しやすくなります。

  1. 正社員登用制度そのものがあるか:就業規則・雇用契約書・社内イントラのどこに書かれているかを確認します。口頭の話だけでなく書面上の根拠を確認しておくと話が進めやすくなります。
  2. 過去に登用された実績があるか:人数や時期を含めて確認します。制度はあっても、実際にはほとんど運用されていない場合もあります。
  3. 登用の要件は何か:在籍年数・評価・資格・推薦の有無などを確認します。明文化されていない場合、誰に聞けば分かるのかも確認します。
  4. 選考の時期と方法は何か:年1回の定期選考か随時か、面接のみか筆記試験もあるかで準備の進め方が変わります。
  5. 誰が推薦・判断するのか:直属の上司か人事部門かを把握しておくと、意向を伝えるタイミングが分かりやすくなります。

上司や人事に聞く際は、次のような伝え方が角を立てにくい例として挙げられます。

例文1:「今の業務にやりがいを感じていて、中長期でもこの会社に貢献していきたいと考えています。そのために、正社員登用の仕組みと、必要になる要件を教えていただけますか。」

例文2:「今後のキャリアを考えるうえで、社内にどのような登用のルートがあるのか把握しておきたいと思っています。過去に登用された方がいらっしゃれば、経緯も伺えると参考になります。」

確認の結果、制度がない、あるいは運用実績がほとんどないと分かった場合は、転職ルートに軸足を移すという判断もあります。どちらが正しいというものではなく、確認した事実に基づいて選ぶことが実践的です。

転職で正社員を目指すとき、体育会出身者がつまずきやすい2点

契約社員としての期間を「説明しにくい空白」として扱ってしまうことと、体力や継続力だけを前面に出してしまうことの2点は、書類や面接で持ち味が伝わりにくくなりやすいポイントです。

契約社員の期間を「書きづらいもの」として薄く書いてしまう

「契約社員だったので大したことはしていません」という前提で職務経歴書を薄く書いてしまうケースがあります。しかし実際には、担当業務・任されていた範囲・工夫した点は、正社員と同じような粒度で書くことができます。雇用形態と、その期間に何を担当していたかは別の情報であり、後者を具体的に書くことが評価につながりやすくなります。

人材・コーチングを手がける株式会社兆人は、採用にあたって学歴・職歴でなく習慣化の達成率や継続力を数値化し、やり抜く力を可視化して活用していると語っています(人事の声、2026年1月31日取材)。採用全般についての発言で、契約社員経験者の中途採用に限った話ではありませんが、雇用形態より行動の中身を見ようとする企業もあるということです。

体力・継続力だけを前面に出してしまう

「体力には自信があります」「最後までやり抜く継続力があります」という言葉だけで押し切ろうとすると、業務にどう活かせるのかが伝わりにくくなります。体力や継続力は入口の説明であり、実際の業務のどの場面で役立つのかまで言語化しておくと、読み手が仕事の場面を想像しやすくなります。

契約社員としての実務経験と体育会での経験は、次のように同じ行動として束ねて説明できる場合があります。

体育会での経験 契約社員の業務で対応する場面 面接・書類での言い方の方向
毎日の練習を長期間続けた 定型業務を欠かさず回し、品質を安定させた 「決まった基準を長期間維持する仕事の進め方」
下級生の指導・新人の受け入れ 後任や新任スタッフへの引き継ぎ・OJT 「自分の手順を言語化して他人に渡せる」
部内の役割分担や日程調整 関係部署との段取り・進捗共有 「複数の相手の都合を踏まえて段取りを組める」

この対応づけは一例で、競技や役割によって当てはまる場面は変わります。自分が実際にやっていた行動から出発して言い換えると、事実から離れずに説明できます。

IT分野でSES事業を手がける株式会社GROWは、採用では学歴・職歴でなく人柄を重視し、「わからない」と素直に言える人を評価していると話しています(人事の声、2025年12月3日取材)。これも採用全般についての発言ですが、職歴の形式より姿勢を見ていると語る企業がある一例です。

職務経歴書で契約社員経験を書くときの型【テンプレ】

雇用形態を正確に書いたうえで、担当業務の範囲・工夫・結果を正社員と同じ粒度で書くと、契約社員期間も職務経験として読まれやすくなります。

  1. 雇用形態は隠さず正確に書く:「契約社員」であることを曖昧にしたり、正社員と誤解されるような書き方は避けます。
  2. 任された業務範囲を具体的に書く:担当業務の範囲、関わった人数や規模、日々の判断内容を書きます。「範囲は限られていた」と決めつけず、実際に何をしていたかの棚卸しが出発点です。
  3. 次の職場でも再現できる形にする:作業の羅列ではなく、「その経験を次の職場でどう活かせるか」を一文添えると評価しやすい情報になります。

例1(営業事務・契約社員) 雇用形態:契約社員(契約期間:〇年〇月〜〇年〇月)。担当業務:受発注管理、請求書作成、営業チームへの資料共有(担当顧客数:〇社)。工夫:手作業だった進捗管理をExcelで一覧化し、確認漏れを〇件から〇件に削減。次に活かせる点:業務フローの整理と関係者への共有を、他部署でも再現できる形で行ってきました。

例2(店舗スタッフ・契約社員) 雇用形態:契約社員(契約期間:〇年〇月〜〇年〇月)。担当業務:接客、レジ業務、在庫管理、新人スタッフのOJT(〇名担当)。工夫:繁忙期のシフト調整を提案し、欠員によるクレーム件数を〇%改善。次に活かせる点:限られた人員の中で役割分担を調整する動き方は、他の現場でも応用できると考えています。

数値は「〇件」「〇%」のようにプレースホルダとして扱い、手元にある自分の実数を当てはめて使ってください。数値実績がない場合は、職務経歴書、数字の実績がない体育会出身者の書き方【言い換え例つき】で言い換え方を確認できます。

面接で「なぜ契約社員だったのか」と聞かれたときの答え方の型

この質問は、入社の経緯と今後の意思を確認する意図で聞かれる場合があります。事実→そこで得たもの→正社員として何をしたいか、の3ステップで整理しておくと答えやすくなります。

まず契約社員として働くことになった事実を簡潔に伝え、次にその期間に担当した業務と身につけたことを具体的に伝え、最後に正社員としてどう貢献したいかで締めくくります。他責や前職批判にならない言い方を意識しておくと、経緯の説明が言い訳として受け取られにくくなります。

回答例1:「新卒で入った会社を早期に離れた後、まず現場での経験を積むために契約社員として今の会社に入社しました。担当業務では〇〇を任され、〇〇という工夫をしてきました。その経験を踏まえて、次は正社員として、より継続的に責任のある業務に関わっていきたいと考えています。」

回答例2:「当時希望していた職種では有期の募集しか出ていなかったため、まずその形で入社しました。実際の業務内容は正社員の方と変わらず、〇〇を担当してきました。今回は、長期的な視点でキャリアを積める環境を求めて応募しました。」

この質問は「なぜ契約社員だったのか」という入社経緯の質問であり、「なぜ辞めるのか」という退職理由の質問とは別のものです。両者を混同して答えてしまうと話がかみ合わなくなることがあるため、退職理由については転職面接で退職理由を聞かれたら|体育会出身者の答え方と例文も合わせて確認しておくとよいでしょう。

動き出す前の準備チェックリスト

準備は「現職の制度確認」「経歴の棚卸し」「求人の見極め」「相談先の確保」の4段階に分けると進めやすくなります。

現職の制度確認

  • 正社員登用制度の有無を就業規則・雇用契約書で確認したか
  • 過去の登用実績(人数・時期)を確認したか
  • 登用の要件・選考時期・推薦者を確認したか

経歴の棚卸し

  • 契約社員期間に担当した業務範囲を具体的に書き出したか
  • 工夫した点・結果を、数字を含めて整理できているか(数字がない場合は行動のプロセスを整理したか)
  • 体育会での経験を、業務のどの場面に対応するかまで言語化したか

求人の見極め

  • 「正社員登用制度あり」と書かれた求人について、登用実績の有無を応募前に確認する視点を持っているか
  • 登用の要件・時期が求人票または面接で確認できるか

相談先の確保

  • 一人で判断せず、相談できる相手や窓口を用意しているか
  • 契約更新の時期など、動くタイミングの目安を決めているか

求人票に「正社員登用制度あり」とあっても、登用の実績や要件、選考の時期までは書かれていない場合があります。応募前の質問や面接の逆質問で確認しておくと、入社後のギャップを減らしやすくなります。相談先の選び方は転職の相談を無料でしたい20代へ|体育会出身者の相談先6種と選び方も参考になります。

まとめ:ルートを切り分け、確認してよいことを確認するところから

契約社員から正社員になる道は、現職での登用、無期転換、正社員登用前提の求人、正社員への直接転職という4つに分かれます。どれか一つに決め打ちする必要はなく、現職路線か転職路線かを切り分けたうえで、並行して情報収集を進めることもできます。

「5年働けば正社員になれる」という話は、無期転換ルールを指している場合が多くあります。これは契約期間の定めがなくなる仕組みであって、正社員になることを保証するものではありません。この違いを押さえておくと、現職で確認すべきことと転職で準備すべきことを混同せずに整理できます。

現職での確認は、パートタイム・有期雇用労働法第13条の定めを踏まえれば不自然な行動ではありません。制度・実績・要件を確認したうえで軸足を判断していくとよいでしょう。転職を選ぶ場合は、契約社員期間を職務経歴書でどう書き、面接でどう説明するかの型を押さえておくと、雇用形態そのものよりも中身が伝わりやすくなります。動き出す時期の考え方は第二新卒×体育会系の転職完全ガイド|いつ動く?何から始める?も参考になります。

現職の制度確認や経歴の棚卸しを進めたい場合は、転職準備チェックリスト&職務経歴書テンプレ(無料PDF)をダウンロードのうえご登録ください。なお、ツナカレキャリアを運営する株式会社PieceTimesは有料職業紹介事業の許可を申請中のため、現時点では求人のご紹介・斡旋は行っておらず、キャリアに関する情報提供・ご相談のみを承っています。