「体育会採用でもSNSを使ったほうがよいと言われるが、何をどこまで発信すればよいのか分からない」「始めたものの、学生に届いているのか判断できない」——SNSは、こうした点で迷いやすい手法です。この記事では、体育会学生の採用でSNSを使う際の位置づけを、公開調査にみる学生側の利用実態、発信の目的の分け方、運用体制、法令・配慮の4つの観点で整理します。他の手法との位置づけは体育会採用の手法別比較表でも確認できます。

結論:SNSは「応募を集める手段」より、接点を持った学生が確認する補足情報と位置づけると設計しやすい

公開調査を見る限り、学生にとってSNSは就職活動の主要な情報源とは言い切れず、実名を伴う活用には慎重な見方も示されています。そのため、SNSだけで母集団を形成しようとするのではなく、説明会・スカウト・イベントなどで接点を持った学生が「どんな人が働いているのか」「どんな雰囲気か」を確認できる場として整える、という位置づけが現実的です。以下、その根拠となる調査と、運用の組み立て方を順に見ていきます。

学生の利用実態:公開調査から分かること・分からないこと

公開調査では、企業の公式SNSを「必ずチェックする情報源」に挙げた学生は1割に届かず、実名のSNSを就職活動で活用したくないという回答が半数を超えています。以下、マイナビが公表している2つの調査を確認します。調査ごとに対象と設問が異なるため、数値を単純に比べることはできません。

調査 対象・時期 結果(抜粋)
2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(10月) 2026年卒大学生 n=1,885 企業情報を調べる際に必ずチェックする情報源として、「就職情報サイト」80.3%、「企業の公式SNSアカウント」9.6%、「それ以外のSNSアカウント」2.6%
2027年卒 大学生のライフスタイル調査(将来像・就職活動) 2027年3月卒業予定の大学生・大学院生 n=2,151(2025年11〜12月実施) 就職活動で実名を伴ったSNSを「活用したくない」51.7%、「活用したい」48.3%(活用したくないが上回るのは20年卒以来7年ぶり)

2027年卒の調査では、活用したくない理由の上位は「プライベートなものなので見られたくないから」(66.3%)、「個人情報の管理に不安を感じるから」(45.5%)、「人事担当者に調べられたくないから」(44.2%)でした。一方、活用方法の上位は「企業ページを閲覧」(80.0%)、「企業の最新情報を手に入れる」(44.7%)です(出典:マイナビキャリアリサーチLab「2027年卒 大学生のライフスタイル調査」、同「2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査」関連記事)。

ここから言えるのは、次の2点です。

  • 「必ずチェックする情報源」という聞き方では、企業の公式SNSアカウントを挙げた割合は1割に届いていない。ただし、これは「必ず見る」ものの割合であり、「必要なときに補足として見る」割合を示すものではない
  • SNSを活用する学生は企業ページを閲覧する使い方が中心で、実名のSNSを就職活動で「活用したくない」とする回答が、「活用したい」とする回答を上回っている

一方で、これらは学生全体の調査です。体育会に所属する学生に限った利用実態の公開データは、編集部では確認できていません。体育会学生だけが違う傾向を示すと断定せず、自社の接点の中でSNSの閲覧状況を確認していく姿勢が必要です。

部活動・サークルの側がSNSを使っている例

学生は企業の発信を受け取るだけでなく、部活動やサークルの運営でSNSを使って発信している例があります。運営元メディアの取材記事には、次のような声がありました。

  • ローラーホッケー部の取材記事では、新歓チラシにQRコードを付けてInstagramへ誘導し、2025年度は12名が入部して11名が定着したと紹介されています(日本大学生物資源科学部ローラーホッケー部、2026-03-04取材。取材記事)
  • 旅行サークルの取材記事では、新歓で学内ではSNSとビラ配りを徹底し、他大学にはSNS中心で展開していると語られています(東京大学旅行研究会、2026-02-02取材。体育会ではなくサークルの事例です。取材記事)

これらは各団体の運営の一例であり、学生一般の傾向を示すものではありません。ただ、学生自身が「SNSで活動を知ってもらい、人柄や雰囲気を伝える」運営を日常的に行っているとすれば、企業側の発信も、同じ目線で「どんな人がいて、どんな日常なのか」を伝える使い方が受け止められやすい可能性があります(編集部の推測であり、検証されたものではありません)。反対に、求人票の転載だけのアカウントは、学生が既に就職情報サイトで見ている情報の繰り返しになりやすい点に注意が必要です。

発信の目的を3つに分けて設計する

「何のために発信するのか」が曖昧なままだと、投稿内容や見る指標が定まりにくく、運用を続けにくくなる場合があります。目的を分けると、投稿内容も測る指標も決めやすくなります。

目的 投稿内容の例 見る指標の例 注意点
知ってもらう(認知) 社員の日常、職場の様子、仕事の一場面 閲覧数、フォロー数の推移 数が伸びても応募に直結しない場合がある
理解してもらう(理解) 若手社員の1日、体育会出身社員の仕事の紹介、選考の流れ 保存・共有、説明会の申込時の流入元 社員の個人が特定される内容は本人の同意を取る
接点後に確認してもらう(補足) 説明会後の追加情報、先輩の声、日程のお知らせ 接点を持った学生からの質問内容 募集情報は正式な募集ページとの整合を取る

体育会学生向けの場合、競技日程によって学生が確認できる時期が変わります。部活動の最終大会や引退の時期は競技・部によって異なるため、引退前後に重なる時期は、過度に連投して反応を急がせない配慮も考えられます。競技別の大会日程と引退時期の目安は、体育会の引退時期 競技別一覧を参考にしてください。

人事の声にみる、SNSと他の接点の組み合わせ方

取材した企業の声では、SNSを単独で使うのではなく、自社サイト・紹介・勉強会や説明会といった他の接点と組み合わせている例が見られます。運営元メディアの「人事の声」から、SNSそのものの運用ノウハウではないものの、組み合わせ方の参考になる声を紹介します。

  • 旅行・ITの企業では、若手社員の提案で自社サイト起点のオーガニック(広告に頼らない)採用導線をゼロから構築し、採用単価を改善したと語られています(株式会社エアトリ、2026-06-08取材。改善幅の数値は記載されていません。取材記事)
  • SNS運用代行を行う企業でも、メンバーを全員紹介(リファラル)で集め、信頼できるかとルールを守れるかを最優先していると語られています(NOWAY株式会社、2026-03-10取材。取材記事)
  • 体育会学生向けに、夏は勉強会、冬に説明会という2段階のアプローチで関係を深めている企業もあります(株式会社TOKIUM、2025-12-18取材。取材記事)

いずれも各社の方針の紹介であり、SNSの効果を裏づけるものではありません。ただ、SNSが単独で機能するのではなく、自社サイト、紹介、勉強会・説明会といった他の接点と組み合わせて設計されている点は共通しています。接点の作り方は体育会学生へのスカウト方法や採用イベントの企画設計と併せて検討すると、SNSの役割も整理しやすくなります。

運用の進め方:担当・頻度・ルールを先に決める

SNS運用は、始めたあとに続けることに負担がかかる場合があります。立ち上げ前に、少なくとも次の点を決めておくと運用の停止を避けやすくなります。

  1. 担当者と交代要員:1人の担当に依存すると、異動や繁忙期に止まりやすい。投稿の承認者も決める
  2. 更新頻度の下限:「週1回」など、無理なく守れる頻度を設定する。頻度を増やすのは運用が安定してから
  3. 投稿のルール:社員の顔写真・氏名の掲載可否、社内情報の扱い、学生コメントへの返信方針を文書にする
  4. 成果の測り方:説明会や選考エントリー時に「何を見て知ったか」を任意で聞く項目を作り、SNS経由の流入を確認する
  5. やめる基準:一定期間運用して、見る指標に変化がないときの見直しの基準を事前に決めておく

外部の運用代行を使う場合は、どこまで任せられるかを事前に整理しておく必要があります。業務範囲の考え方は体育会採用の代行はどこまで任せられるかで整理しています。

運用前に確認したい法令・配慮:募集情報の表示と学生の私的アカウント

運用を始める前に、募集情報を投稿する場合の表示事項と、学生の私的アカウントを選考に使うかどうかの2点を、社内の方針として決めておくことをおすすめします。

募集情報を投稿する場合の的確表示

職業安定法第5条の4は、インターネットやX等のSNSを含む広告等で労働者の募集に関する情報を提供するときに、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないと定めています。厚生労働省の案内によると、広告等には募集主の氏名(名称)、住所、連絡先、業務内容、就業場所、賃金を表示する必要があるとされ、連絡先は電話番号やメールアドレス、自社の問い合わせフォームなどで示す形が想定されています(出典:厚生労働省「職業安定法に関する案内」)。

SNS上の短い投稿は情報が省略されやすい点に注意が必要です。同じ案内では、募集要項ページへのリンクを示すだけでは足りず、募集情報を提供する広告等そのものに上記の事項を記載する必要があるとされています。どの投稿が対象になるか、字数が限られる場合にどう表示するかなど、個別の表示義務の範囲は労働局や専門家に確認してください。

学生の私的アカウントを選考に使うか

2027年卒の調査では、実名のSNSを就職活動で活用したくない理由に「人事担当者に調べられたくないから」が44.2%挙げられていました。学生の側に、私的な発信を見られることへの警戒感がある場合があります。また、厚生労働省「公正な採用選考の基本」は、職務遂行に必要な適性・能力を評価する観点から、適性と能力に関係のない事項を選考に持ち込まないことを求めています。

学生の個人アカウントを閲覧して選考の参考にするかどうかは、採用担当者や面接官の個人判断に任せず、社内で方針を明文化することが前提となります。方針を決める際は、評価の基準と記録の残し方も合わせて整理してください。面接評価の基準づくりは面接官の評価ばらつき防止チェックリストが参考になります。

つまずきやすい点と対処

つまずきやすいのは、投稿内容・成果の見方・返信対応・担当者の負荷の4点で、いずれも運用前にルールを決めておくと対処しやすくなります。

  • 投稿が求人票の転載になる:就職情報サイトで同じ情報が見られることが多い。社員の仕事の場面や、選考の流れの補足など、他の媒体にない情報に絞る
  • フォロワー数を成果とする:数の増加が応募や接点の増加に結びつくとは限らない。接点後の流入元の確認とセットで見る
  • 学生の反応への対応が遅れる:DMやコメントに返信する担当者と目安の時間を決めておく
  • 1人の担当者に負荷が集中する:頻度を無理のない水準に設定し、運用の見直し日を決める

まとめ:SNSは他の接点を支える位置づけで、目的・体制・ルールを先に決める

体育会採用でのSNS活用は、学生にとって主要な情報源とは言い切れない現状を踏まえ、他の接点で出会った学生が補足的に確認できる場として設計すると組み立てやすくなります。目的を「知ってもらう」「理解してもらう」「接点後に確認してもらう」に分け、担当者・頻度・投稿ルールを先に決め、募集情報の表示や学生の私的アカウントの扱いは社内方針として明文化しておくことが、運用の前提です。

体育会学生への採用アプローチの組み立てやSNSの位置づけについてご相談がある場合は、採用のご相談からお気軽にお問い合わせください。

参考文献・出典