「個人競技出身の学生と、団体競技出身の学生では、採用面接で見るポイントを変えるべきか」——体育会人材の採用を進める中で、こうした疑問を持つ採用担当者は少なくありません。感覚的には「団体競技の方が協調性が高そう」「個人競技の方が自己管理能力が高そう」といったイメージがありますが、これは研究で裏付けられているのでしょうか。この記事では、個人競技・団体競技出身者の性格特性に関する海外の研究を紹介したうえで、採用実務でどこまで参考にできるかを整理します。
結論:研究では傾向の違いが示唆されているが、個人差の方が大きく、競技種目だけで判断すべきではない
複数の研究で、個人競技出身者は自律性や誠実性が、団体競技出身者は協調性や対人関係志向がやや高い傾向にあることが報告されています。ただし、これらはあくまで集団としての平均的な傾向を示したものであり、研究者自身も個人差の大きさに言及しています。採用・配属の判断において、競技種目だけを基準にするのではなく、面接で確認した個人の行動特性を優先することが重要です。
個人競技/団体競技で性格特性に違いはあるのか——研究から見る傾向
個人競技と団体競技の出身者の性格特性を比較した研究はいくつか存在します。代表的なものを紹介します。
Nia & Besharatの研究(2010年)では、134名の競技者(個人競技42名、団体競技92名)を対象に性格検査を実施し、個人競技の競技者は誠実性(Conscientiousness)と自律性(Autonomy)が有意に高く、団体競技の競技者は協調性(Agreeableness)と社会志向性(Sociotropy、他者との関係を重視する傾向)が有意に高いという結果を報告しています。
Laborde, Guillén & Mosleyの研究(2016年)では、非競技者600名と競技者600名(個人競技280名、団体競技320名)を対象に、粘り強さ・前向きさ・レジリエンス・自尊心・自己効力感といった「ポジティブなパーソナリティ特性」を比較しました。競技者は非競技者よりもこれらの特性が総じて高く、さらに個人競技の競技者は団体競技の競技者よりもこれらの特性が高い傾向が示されています。
Kemarat, Theanthong, Yeemin & Suwankanの研究(2022年)では、タイの大学生アスリート237名(個人競技114名、団体競技123名)を対象にビッグファイブ性格特性と競技不安の関連を調べた研究で、性格特性そのものには個人競技・団体競技の間で明確な差は見られなかった一方、競技不安の水準には有意な差があったと報告しています。
これらの研究を並べると、「個人競技出身者は自律性・粘り強さがやや高く、団体競技出身者は協調性・対人関係志向がやや高い」という傾向が複数の研究で示唆される一方、研究によっては性格特性そのものに明確な差が出ていないケースもあり、結果は一貫していない部分もあります。相関関係を示す研究であり、競技種目が性格を「決定づける」という因果関係を証明したものではない点にも注意が必要です。
採用実務にどう活かすか
研究で示唆された傾向を踏まえつつ、採用実務では次のような整理で活用するのが現実的です。
| 競技タイプ | 研究で示唆される傾向 | 面接で確認したいこと |
|---|---|---|
| 個人競技 | 自律性・誠実性・粘り強さがやや高い傾向 | 自己管理をどう行ってきたか、孤独な練習期間をどう乗り越えたか |
| 団体競技 | 協調性・対人関係志向がやや高い傾向 | チーム内での役割、他者との関係構築の具体例 |
このテーブルはあくまで「集団としての平均的な傾向」であり、個々の候補者に当てはめる際は参考情報の一つにとどめるべきです。同じ個人競技の中でも自律性が低い選手もいれば、団体競技の中でも個人志向の強い選手もいます。
職種別に見る適性の傾向は「仮説」にとどめる
研究の傾向を踏まえると、「個人競技出身者は裁量の大きい専門職、団体競技出身者は協働が前提の職種に向くかもしれない」という仮説を立てることもできますが、これは研究結果からの推測であり、実証されたものではありません。実際の配属判断では、この仮説を出発点にしつつ、必ず面接で本人の志向を確認するプロセスを挟む必要があります。
面接で確認すべき質問例
- 個人競技出身者には「一人で取り組む練習期間、モチベーションをどう維持したか」「自分で決めた目標をどう管理してきたか」を聞く
- 団体競技出身者には「チーム内でどんな役割を担っていたか」「意見が対立したときにどう関わったか」を聞く
- どちらの競技出身者にも、競技種目のイメージに頼らず「具体的に何をしたか」を掘り下げて確認する
参考文献
- Nia, M. E., & Besharat, M. A. (2010). Comparison of Athletes' Personality Characteristics in Individual and Team Sports. Procedia - Social and Behavioral Sciences, 5, 808–812. https://doi.org/10.1016/j.sbspro.2010.07.189
- Laborde, S., Guillén, F., & Mosley, E. (2016). Positive Personality-Trait-Like Individual Differences in Athletes from Individual- and Team Sports and in Non-Athletes. Psychology of Sport and Exercise, 26, 9–13. https://doi.org/10.1016/j.psychsport.2016.05.009
- Kemarat, S., Theanthong, A., Yeemin, W., & Suwankan, S. (2022). Personality characteristics and competitive anxiety in individual and team athletes. PLOS ONE, 17(1), e0262486. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0262486
まとめ:競技種目は参考情報のひとつ、判断の主軸は個人の行動特性
個人競技・団体競技出身者の性格特性については、自律性や協調性の傾向に違いが見られるとする研究がある一方、明確な差が見られなかったとする研究もあり、結果は一枚岩ではありません。いずれの研究も「集団としての平均的な傾向」を示すものであり、個人差の方が大きいという点は共通しています。採用・配属では、競技種目のイメージに頼るのではなく、面接で確認した個人の行動特性を主軸に判断することが、ミスマッチの少ない採用につながります。
競技経験を踏まえた採用・配属の考え方について具体的にご相談したい場合は、採用のご相談からお気軽にお問い合わせください。競技出身別の見極め方は体育会出身者を中途採用するには、配属の考え方は営業組織に体育会出身者が多い理由もあわせてご覧ください。